不死の魔法使いは鍵をにぎる

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呪いについての共有

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使用人に飲み物と菓子を持ってくるようにシュワーゼは伝え、場所を移動した。


生を得てまだ4年の子供の部屋とは思えない広さの自室。
大の大人でも広々と寝れる寝具に、数人でお茶ができるテーブルに椅子、執務机に棚も揃っている。

大人仕様の部屋だな。



「ガキの自室にしては大層な部屋だな。親と寝たいお年頃なんじゃないのか」


「ガキってやめてよ。本来の年頃はそうだろうけどさ。中身は大人だよ。むしろ老人。

この家では世話係と相室になるのが通例だけどやめてもらった。自由に動き回りたいし。そもそも必要ないからね。“子供”じゃなくて“大人”として扱ってもらえるように孤軍奮闘したんだよ」





頼まれた茶と菓子を速やかに持ってきた使用人は、テーブルに準備を整える。

ティーポットから注がれて、蒸気とともに気品ある香りを届ける紅茶。
複数色があり味が違うと思われるスコーンに、付け合わせのクリームや蜜。


準備を終えて出ていく使用人にシュワーゼは礼を言い、椅子によじ登る。
私は反対側の席に座り、シュワーゼと向き合う形になった。



「じゃあ始めようか。お茶飲みながらでも。扉を閉めてれば声はまず聞こえない。安心してね。まずはぼくの話をしていいか?」

「ああ」



遠慮なく菓子に手を伸ばして返事をする。

上質なバターを使ってある香しい匂いがする。
さすが金持ち。



シュワーゼは紅茶を一口飲み、頭の中を整理するように一呼吸おいてから言葉を紡いだ。










「ぼくの最初の、本当の名前はルター。

王族の護衛をしてた。魔王を倒したのは40半ばだったかな。数年後に死んで、生まれ変わって…。


始めは普通に過ごしてたんだよね。出所のわからない記憶が頭の中にあったけど。夢物語だと思ってた。

呪いに気づいたのは…、自分の孫に会ったから。


驚いたな。夢物語じゃなく現実だって。自分の経験だったんだって。そこから呪いについて調べるようにもなった。

今までで知識はだいぶついたけど、魔王の呪いについては全然だな。死んでは生まれ変わって、を繰り返して今に至るよ」





「生まれ変わる期間は決まってるのか」

「いいや、規則性はないね。10年ぽっちのときもあるし、100年くらいかかったこともあった」



スコーンにたっぷりのクリームと少しの蜜をつけて、そのまま飲み込むかのように胃に素早く送るシュワーゼ。

こいつちゃんと噛んでいるんだろうか。
まだ1つ目のスコーンの半分も消化していない私は新たに蜜をつける。



「ゲルハルトの話も聞いていいか?」

「…ああ、そうだな」



紅茶で口を湿らせる。


軽く1000年は越える私の年齢。
それだけ生きてきても、呪いについて他者に話すのは初めてだ。
柄にもなく緊張しているらしい。


再び紅茶に口をつけた。









「私が…、私は、お前の1つ前の代の魔王を倒した。そのときに不死の呪いがかけられた。ゆっくりとだが、一応老いていっている。…が、普通の人間からしたら変わらなく見える。不振に思われるから根城にこもってずっと過ごしていた」



「ずっと?何百年もあそこでずっと?」

「そう。ずっとだ」







代り映えのない毎日。
気が遠くなるような時間。

止まっているのか、進んでいるのか、それすらもわからなくなるような。








「そっか。それは…、想像もつかないな。…不死っていうのは、どう分かったんだ?老いるのが遅いだけっていう可能性もあるでしょう?」

「助かる見込みのない致命傷を負ったことがある。それでも生きていた」





死にたくなるほどの痛みと、それでも死ねない絶望。
死体としか言えない状況になってもなお、変わらず動く心臓。
自身ですらおぞましく気持ち悪いと思う、あの有り様。







「なるほどね。あの伝説はどこまでが本当なんだ?ハンナって女の人が言ってたこと」

「話半分に聞いてたから詳しく覚えてないが…、大筋としては合ってる気もしたな。脚色はすごかったが」



「単独で魔王を倒した?」

「途中何度か共闘したが、最後は一人だったな」

「輝く魔法陣と魔法技術は納得できるな。突如消息不明になったっていうのは?」

「さあな。それは知らない。討伐後デルアンファに戻って数年暮らした。住民からの煙たそうな視線と態度で、むしろ追い出されたと言っていい」

「ふうん。それはだいぶ印象が違うな。腕の魔法陣は?自分で彫ったのか?」

「いいや。師匠に彫ってもらった。これのおかげで私は魔法を制御できるようになったんだ」

「へえ。魔法制御のためなんだ。その時代って魔法陣はぜんぜん世に出てなかったよね。どうやって術を身に着けたのかな。そのお師匠さんは。何もないところから開発した?うーん。…お師匠さんの出身地は?どのあたり?」

「どこだったかな…。一般区の、王都から遠い地区だと言っていた気がする」



「王都から遠い、ね」




何か含みのある言い方。


「何かあるのか」





飲み干したカップに新たに紅茶を注ぎながら、子供らしからぬ笑みを浮かべる。








「数十年前までは全然だったんだよね。王都での魔具研究。今は王都でも研究盛んだけど。でもそれも、魔具が出てきてだいぶ経ってからだ。国や王族の威厳を考えると、早々に積極的に研究してていいと思うんだよね。…なにかありそうじゃない?」








魔具研究へ乗り出すのが遅れた王都。
制御の魔法陣を作り出した師匠は王都から離れた一般区出身。
これらは関係があるのか、否か。



「まあ調べるとしても後々かな。今は王城に入れないし。現状、ぼくはほぼ特区しか動けない。特区中心に調べていくよ。ゲルハルトには外部の情報収集を頼みたい。それで随時、情報共有していこう」



異論はなかったのでうなずく。
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