不死の魔法使いは鍵をにぎる

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鍵のかかった書庫

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シュワーゼが王城で見習い扱いを卒業してから10日ほど。
シュワーゼの自室に入ったときからとても興奮していた。





「あ!ゲルハルト!いらっしゃい!」



うろうろと忙しなく部屋の中を歩き回っていたシュワーゼは足を止めた。



「どうしたんだ」

「見つけちゃったんだ。いかにも情報を秘匿してます!って感じの部屋。ああ、中が気になるな。いま考えてたんだよ。どうやって入ろうかってね」



数秒考えこんでから、とりあえず使用人に用意する食事の追加を頼んで椅子に腰を下ろした。



「絶対何か隠されてるよ。あそこには。鍵が幾つも必要なんだ。扉の鍵。保管箱の鍵。書物をくくる鎖の鍵。最低3つ。さらに必要そうなものもあった。保管が厳重すぎる」



確かに管理が厳重だ。


書物自体が貴重であった何百年か前なら不思議はないが、図書館も作られ、書物が広く流通している現在である。
怪しさ満点だ。

よほど見られたくないものが隠されているのだろうか。







「鍵の管理はどう行っているんだ?」

「鍵自体は分散されてないみたい。1つの箱に納まってる。でも鍵のかかる箱だ。しかも王の執務室に近い部屋。人の目が多そうなんだよね」



シュワーゼから話を聞いていると、王の執務室には結構な人間が出入りするらしい。
王の側近たち、大臣、魔法使いの統括者。

書類の提出や、会議の出席などで王の執務室へ訪れ、必然的に鍵がしまわれている部屋前も、断続的に人が行き来する。

決まった時間に人が出入りするのならば、隙をぬってどうにかすることもできるだろう。
しかし不規則に、大きな時間を空けずに人が通るため、計画を立てづらい。






「その鍵がしまってある部屋の鍵はどこにあるんだ」

「町の治安管理を任されてる部署だね。常に誰か部屋にいる。人目を盗んで鍵を取り出すのは無理だろうな」



治癒師として認定された者や、結界張を派遣する地域を決めるのが町の治安管理をする部署だ。
ときには足りない人材を探しに各地をさまようこともある。




鍵を盗む方向でしかシュワーゼは考えていなさそうだが、その部署ならばちょうどいいやつがいるじゃないか。



「その部署、ブルデが配属されてなかったか?」







たびたび私に勝負を挑んでいたシュワーゼの兄ブルデと、その魔法教師レフラ。


始めはレフラとの勝負だったのが、ブルデとレフラの二人になり、そのうちにブルデとの勝負へと変わっていった。

勝負を重ねるたびにブルデは魔法の腕を上げていき、学校は好成績で卒業。
王城では魔法を扱う方面の仕事を志望していた。

そして希望通りの配属になり、今は治安管理の部署だと言っていたはずだ。


数日前にレフラと婚約することになったと何故か報告をされ、そのときに今どんな仕事をしているのかを話した気がする。






「本当に?兄さんが?」


驚きの表情でこちらを見るシュワーゼ。



「知らなかったのか?」

「あまり話さないんだ。兄さんとは。兄さんはぼくのこと嫌いなんだよ。昔から何かと突っかかってくるし。ぼくはレフラのことを悪く言ってたからね。レフラを好きな兄さんからは心証に悪いでしょ」



納得しつつ、使える手は使えばいいと思う。



「ブルデに協力は頼めないのか」

「協力か。そうだよね。気が進まないけど考えようかな。ただきちんと理由を作らないと難しいだろうな。あれで兄さん真面目だから」





嫌そうではあったが、ブルデから鍵を借りる方向で話はまとまった。
正直に話して借りるわけにはいかないので、うまい理由を見つけなければならない。


運ばれてきた夕食に手を付けながら話し合うが、いい案は出てこなかった。
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