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結界張に関する記録
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屋敷について、レフラと別れ、シュワーゼの部屋に入って息をつく。
ああ、疲れた。
突拍子無く話は飛び、そのくせブルデと関連付けられた内容ばかり。
シュワーゼは王城からすでに帰宅していた。
私の様子を不思議そうに見つめる。
「いらっしゃい。ゲルハルト。なんだかお疲れだね?」
「来る途中でレフラに会った…。あいつお喋りな奴だったんだな。疲れた」
「それはお疲れ様。夕飯にしようか。美味しいもの食べれば元気になるよ。すぐに準備させる」
紅茶を飲んで一息ついている間に、夕飯は速やかに準備される。
使用人が部屋を出て、扉が閉まったのを確認してから、お互いの報告を始めた。
「とくに大きな進展はないかな。ぼくの方は。書庫には入れてないし。真面目に仕事してきたよ。結界張の一人が問題起こしたって聞いたくらいかな」
結界張。
王都近辺の町で魔物被害が起きないよう、結界で防衛する任に就く者。
師匠も短期間だが就いていたな。
「そいつは何をしたんだ?」
「仕事に遅れたんだよ。酔いつぶれてたせいで。しかも運悪く交代前の人が体調不良。魔力の持ちが悪くて結界が切れちゃったんだって。
短い間だったらしいけど。最悪だよね。魔王を倒した後でよかったよ。しばらく減給かな。その人。解雇まではできないからね。結界張は希少だし。
きっとブルデとかが対処に当たってるよ。過去の記録あさってどう対処するか考えてるんじゃないかな」
「結界張についての記録があるのか?」
「うん。記録されてるよ。誰をどこに、とか。この実力だからこの範囲、とか。詳しく残ってるはず」
師匠が結界張をやっていたのは短期間のはずだが、何か手がかりになる情報は残ってるだろうか。
業務に必要な情報を残しているようだから、調べたところで意味はないか?
いや、でも何が繋がっていくかわからない。
裾野を広く、視野を広く、だ。
「シュワーゼ、その結界張についての記録は調べられるか?」
「ぼくじゃ難しいかな。兄さんなら簡単に見れるはず。どうして?」
「師匠が結界張についていたことがあるんだ。短期間だったけど、何か記録されているかもしれない」
そう言った途端、シュワーゼはかっと目を見開いた。
「結界張に?すごい!相当すごい魔法使いじゃないか!」
勢いあまって食事が喉に詰まったようで、シュワーゼは紅茶を飲んで一呼吸おく。
「ゲルハルトの腕の陣を掘った人だったよね?お師匠さんは。ぜひするべきだ。調べるべきだと思うよ。その人について調べてあるはずだから。思想とか、犯罪歴とかある程度はね。ブルデに話を通して…」
早口に述べていたが、ふと口が止まる。
「1000年前の情報か…」
問題はそこだ。
何やら好意的に思われているようだし、私からブルデに話せば優遇してくれる可能性は充分ある。
しかし何故1000年前の人物を調べているのか問われると、答えを返せない。
「やはりそこは引っかかるだろうな。何か理由が必要だ」
「そうだね。何かいい理由あるかな」
互いに何か理由はないか考えようとして、シュワーゼに報告しておくべきことがあったと思い出す。
「そうだ。レフラに言われたんだが、シュワーゼのところにこのまま通い続けるのは危険かもしれない」
「レフラに?何を言われたんだ?」
シュワーゼの片眉がぴくりと上がる。
変わらずレフラのことは好かないらしい。
「顔が老けないと言われただけだ。何も考えず発言したようだったが、他にもそう思ってる奴がいるかもしれない。そのうち、化け物のように気味悪がられる」
1人、2人がそう思いだしたら忌避されるのはすぐだ。
事実、私の顔はほぼ変わっていない。
化け物扱いは周囲にすぐ伝播するだろう。
「そうか。他人から見たらそうだよね。どうしよう。屋敷で会うのはもう止めたほうがいいかな。ぼくがゲルハルトのところまで行く?でもぼく転移できないからな。…ゲルハルト容姿は変えられないのか?変異の魔法使ってさ。少しずつ老けさせて変異していくとか」
「結界内で魔法は使えないだろう」
変異魔法は得意ではないが一応使える。
しかし、効果を阻害される結界内で効力を持続できるとは思えない。
「それもそうか。どうするかな」
考えてはみるが、1000年前の結界張を調べる理由も、シュワーゼと今後どこで情報共有していくかも、いい案は見つからなかった。
残りの報告を簡単に済ませ、継続して考えていこうという何の解決にもならない結論を出して、とりあえずこの日は解散した。
レフラに言及はされたが、他の者から容姿を怪しまれている視線はまだ感じない。
もう数年、猶予はあるだろう。
ああ、疲れた。
突拍子無く話は飛び、そのくせブルデと関連付けられた内容ばかり。
シュワーゼは王城からすでに帰宅していた。
私の様子を不思議そうに見つめる。
「いらっしゃい。ゲルハルト。なんだかお疲れだね?」
「来る途中でレフラに会った…。あいつお喋りな奴だったんだな。疲れた」
「それはお疲れ様。夕飯にしようか。美味しいもの食べれば元気になるよ。すぐに準備させる」
紅茶を飲んで一息ついている間に、夕飯は速やかに準備される。
使用人が部屋を出て、扉が閉まったのを確認してから、お互いの報告を始めた。
「とくに大きな進展はないかな。ぼくの方は。書庫には入れてないし。真面目に仕事してきたよ。結界張の一人が問題起こしたって聞いたくらいかな」
結界張。
王都近辺の町で魔物被害が起きないよう、結界で防衛する任に就く者。
師匠も短期間だが就いていたな。
「そいつは何をしたんだ?」
「仕事に遅れたんだよ。酔いつぶれてたせいで。しかも運悪く交代前の人が体調不良。魔力の持ちが悪くて結界が切れちゃったんだって。
短い間だったらしいけど。最悪だよね。魔王を倒した後でよかったよ。しばらく減給かな。その人。解雇まではできないからね。結界張は希少だし。
きっとブルデとかが対処に当たってるよ。過去の記録あさってどう対処するか考えてるんじゃないかな」
「結界張についての記録があるのか?」
「うん。記録されてるよ。誰をどこに、とか。この実力だからこの範囲、とか。詳しく残ってるはず」
師匠が結界張をやっていたのは短期間のはずだが、何か手がかりになる情報は残ってるだろうか。
業務に必要な情報を残しているようだから、調べたところで意味はないか?
いや、でも何が繋がっていくかわからない。
裾野を広く、視野を広く、だ。
「シュワーゼ、その結界張についての記録は調べられるか?」
「ぼくじゃ難しいかな。兄さんなら簡単に見れるはず。どうして?」
「師匠が結界張についていたことがあるんだ。短期間だったけど、何か記録されているかもしれない」
そう言った途端、シュワーゼはかっと目を見開いた。
「結界張に?すごい!相当すごい魔法使いじゃないか!」
勢いあまって食事が喉に詰まったようで、シュワーゼは紅茶を飲んで一呼吸おく。
「ゲルハルトの腕の陣を掘った人だったよね?お師匠さんは。ぜひするべきだ。調べるべきだと思うよ。その人について調べてあるはずだから。思想とか、犯罪歴とかある程度はね。ブルデに話を通して…」
早口に述べていたが、ふと口が止まる。
「1000年前の情報か…」
問題はそこだ。
何やら好意的に思われているようだし、私からブルデに話せば優遇してくれる可能性は充分ある。
しかし何故1000年前の人物を調べているのか問われると、答えを返せない。
「やはりそこは引っかかるだろうな。何か理由が必要だ」
「そうだね。何かいい理由あるかな」
互いに何か理由はないか考えようとして、シュワーゼに報告しておくべきことがあったと思い出す。
「そうだ。レフラに言われたんだが、シュワーゼのところにこのまま通い続けるのは危険かもしれない」
「レフラに?何を言われたんだ?」
シュワーゼの片眉がぴくりと上がる。
変わらずレフラのことは好かないらしい。
「顔が老けないと言われただけだ。何も考えず発言したようだったが、他にもそう思ってる奴がいるかもしれない。そのうち、化け物のように気味悪がられる」
1人、2人がそう思いだしたら忌避されるのはすぐだ。
事実、私の顔はほぼ変わっていない。
化け物扱いは周囲にすぐ伝播するだろう。
「そうか。他人から見たらそうだよね。どうしよう。屋敷で会うのはもう止めたほうがいいかな。ぼくがゲルハルトのところまで行く?でもぼく転移できないからな。…ゲルハルト容姿は変えられないのか?変異の魔法使ってさ。少しずつ老けさせて変異していくとか」
「結界内で魔法は使えないだろう」
変異魔法は得意ではないが一応使える。
しかし、効果を阻害される結界内で効力を持続できるとは思えない。
「それもそうか。どうするかな」
考えてはみるが、1000年前の結界張を調べる理由も、シュワーゼと今後どこで情報共有していくかも、いい案は見つからなかった。
残りの報告を簡単に済ませ、継続して考えていこうという何の解決にもならない結論を出して、とりあえずこの日は解散した。
レフラに言及はされたが、他の者から容姿を怪しまれている視線はまだ感じない。
もう数年、猶予はあるだろう。
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