不死の魔法使いは鍵をにぎる

:-)

文字の大きさ
47 / 201

破天荒な結界張

しおりを挟む
師匠について情報を集めていたら、結界張の研究をしているという者に出会った。

魔法技術をそこまで高められる者とそうでない者の違いは何か、魔物や魔法使用を妨げる結界はどう張るのか、などを調べているようだ。



その人物によると、結界魔法を使える者に技術の優劣があるように、結界張の中でも実力差があるという。
歴代の結界張の中でも間違いなく実力があったとされるのは数人。


数千人が暮らす集落に、誰と交代することもなく1人で結界を張り続けた者。
魔法効果を阻害するどころか、発現できないほどの強い結界を張った者。
結界を張りながら、さらに治癒魔法を使って人々の治療を行った者。



興味深く話を聞いていたら、歴代最強と言われた魔法統括者を欺き逃げ出した結界張の話が出てきた。





結界張の脱走者はめったにいない。
そもそも逃げ出そうと考える者がいない。
高給の身分から逃れようと考える者は少ないのだ。

結界張から脱走し、かつ歴代最強といわれる魔法統括者を撒いた者。
ほぼ確実に師匠の話だ。



「この人はすっげえ破天荒な人だったみてえだな。結界張からの脱走以外にも滅茶苦茶な話が残ってるわ。本当に実在してたのか?って俺は思っちまう」



実在してたよ。
残ってる話に違わぬ破天荒さだったよ。

そんなことは口が裂けてもこいつには言えない。心の中で留めておく。


少し懐かしさに浸りつつ、しかし脚色されて伝わってるらしき話を面白く聞かせてもらった。







その結界張は、ある日突然連れてこられた。

片足を引きずるようにして歩く、長髪を一つに束ねた男。
転移妨害のため捕まれた腕を振り払おうと暴れていたが、統括者の前に連れてこられるとピタリと動きを止めたという。
瞬時に実力差を悟り、逃避を試みたところで無駄だと理解したからだ。


その男は結界を張る中でも特に重要な区域、王都区の結界張りを任された。
恐怖政治をしいていた統括者を恐れたのか、当初逃げようと暴れていたのに反して勤務態度は至極真面目。

任に就かせるにあたっての調査では、「子供を殺した」だの「禁忌の術に魅入られた狂人」だの碌な情報を得られなかったが、真っ当な人間に見えた。

禁忌の術についての研究は処罰に値すべき事由だが、証拠がなかったため見逃された。



それまでは2人がかりで結界が張られていた王都の防衛が強化でき安心したのも束の間、その男は勤務時間外でたびたび問題を起こした。


王都への魔物持ち込み。
結界内での魔法使用。
特区への忍び込み。


そのたびに厳重注意するものの、男ほどの結界技術を持った者は少ない。
結界張の役割自体は果たしているため、対処に困る結果となった。




結界張の任は果たしつつ、たびたび役人とは衝突しつつしばらく、あるとき王と統括者が反発する。
王と統括者は蜜月だと噂されるほどの仲で、王城に勤めているものからすると晴天の霹靂だった。


口論が勃発して会議に遅刻。
意見が反発して業務の滞り。


周囲の者は酷く狼狽え、結界張の管理などに目が行き渡らなくなる。



男はその機を逃さず、休暇日に行方をくらました。
用意周到なことに、発覚が遅れるよう自分の代わりも準備して。

役人の振りをして代役の結界張を任命。
男と見られる者の出門が確認されなかったため、変異して出て行ったと思われる。


脱走発覚後、必死の捜索が行われたが見つからず、結局その男は任から外されることとなった。
一度認知した魔法使いを見失うことはないと言われた最強の統括者からも逃げ切り、悪い意味で伝説となっている。







「すっげえだろ?子供殺したようなやつが結界張やってるなんて信じらんねえだろ。嘘じゃねえかな。でも実際に脱走記録は残ってんだよな」




私はその子供を殺したという記録が間違っていると思う。

師匠がそんなことをするはずがない。
私を育んでくれた、愛ある優しい爺ちゃんだ。




しかしこの男からだけでなく、ほかの人間からも子供殺しを耳にしている。

何か事実が捻じ曲げられて“殺した”となったのか。
他者の話が交じって師匠のものとして残されているのか。
何かしらはあったということなのだろう。

官吏が調べた記録なら事実に近しい情報だろうか。



変わらない容姿が怪しまれるまでの時間制限もある。
なるべく早めにブルデに話を通したいところだな。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

救国の代償で白髪になった聖女、一度のミスを理由に「無能の戦犯」として追放される ~隣国の覇王に拾われ、愛され、奇跡の力を見せつける~

スカッと文庫
ファンタジー
聖女アリシアは、百年に一度の大氾濫から国を守るため、禁忌の魔力全解放を行い、単身で数万の魔物を殲滅した。その代償として、彼女の美しい金髪は真っ白な「白雪色」に染まり、魔力は一時的に枯渇してしまう。 しかし、その功績はすべて現場にいなかった「偽聖女セシリア」に奪われ、アリシアは「結界を一部損壊させた戦犯」「魔力を失った役立たず」として、婚約者の王太子ギルバートから国外追放を言い渡される。 「失敗したゴミに、この国の空気は吸わせない」 泥の中に捨てられたアリシア。しかし、彼女を拾ったのは、敵対国として恐れられていた帝国の「武徳皇帝」ラグナールだった。彼はアリシアの白髪が「高純度の神聖魔力による変質」であることを瞬時に見抜き、彼女を帝国の宝として迎える。 数ヶ月後。アリシアが帝国の守護聖女として輝きを取り戻した頃、王国では「一度きりの奇跡」だったセシリアの魔力が尽き、本当の滅亡が始まっていた。 「今さら結界が解けたと泣きつかれても、もう私の魔力は一滴も残っていません」

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

私は私で幸せになりますので

あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。 ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。 それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。 最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

処理中です...