不死の魔法使いは鍵をにぎる

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師匠に関する調査資料

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調査資料によると、フォルスツングという町で、魔法研究者の父親と農作業に従事する母親の元に師匠は産まれた。




裕福もなく貧しくもないありふれた家庭。

その町からは遠方になる魔法学校に入学し、そこそこ上位の成績で卒業。
父親の研究や母親の農作業を手伝いながら、独自に魔法陣の研究をしていた模様。


町民からも禁忌の術に手を出す変わり者だという証言は複数取れているが、物証がないため処罰はできず見逃される。

また、殺害容疑がかかる事件も起こるが、これも証拠不十分のため保留に。








「待て。殺害容疑ってなんだ」


「死体の前に血だらけで立つ姿を発見されてるんだって。詳しい状況はわからないけど。

体内から爆発したような死体。そうなった原因もわからず。

ただ、間違いなくお師匠さんは死の間際にそばに居た。返り血の量が尋常じゃなかったらしいよ」











師匠が、人を、殺した。

あの、師匠が。







いたずらっ子のように笑う、しわくちゃの顔。
頭をなでてくれた、枯れたようなかさついた手。

見ず知らずの私に、魔法も生活知識も学問も愛情も、何もかもを教えてくれた、あの。








衝撃を受ける私を見てシュワーゼが慌てる。



「容疑がかかっただけだから。状況証拠でそうなっただけだから。ゲルハルトの大事な人なんだね?事故かなんかだよ。殺してないよ。きっと」





殴られでもしたように頭がぐらつく。


もう、今更調べようのないことだ。
とりあえず報告を最後まで聞かなければ。




頭を押さえて努めて冷静に言う。





「…すまない。続けてくれ」

「…わかった。続けるね。えっと。その事件からさらに禁忌の術にのめりこんだみたい」






事件以降、親の手伝いはしなくなり、自分の研究にのめりこむ。


特区や金持ちの家で魔法教師をして生活費を稼ぎつつ、数年ごとに土地を移動。
魔法学校に通う子供に声をかける姿がよく見られるようになる。

小さな衝突はあったようだが、大きな問題は起こさずに数年。
この時期に習得したらしき転移魔法で、さらに各地を転々とし始める。

怪しげな研究は鳴りを潜めるが、子供に声をかける姿は続く。
魔法を教えたり、子供の暇つぶしに付き合ったりと、徐々に周囲の大人から好意的に受け止められるようになっていったようだ。



あるとき転移魔法で城下町付近に現れたところを目撃し、技術の高さから結界張に就かせる。








「っていうのが記録されてた内容。お師匠さんの半生、だよね」





うつむく私を覗き込むシュワーゼ。


大まかに師匠本人から聞いていた話と集めた情報、大きな相違はない。
だからこそ余計に混乱する。





師匠への殺害容疑。
血まみれ死体の傍にいた師匠。
尋常じゃない量の返り血。




何があったのか。

何をしたのか。





聞きたい相手はもういない。
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