不死の魔法使いは鍵をにぎる

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西地域の地図

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あるとき、西の方へ足を延ばしていたら知らない村が記されている地図を見つけた。

地図はたびたび更新されているが、進歩が遅い。
魔物によって調査が進まなかったり、魔物被害が原因で村の増減が頻繁に起こるからだ。


しかし西地域の新しい地図とは、珍しい。







魔王城は南西に位置する。

当然周囲には魔物が多く生息し、魔王の存在を問わず、その地域に足を踏み入れるのは自殺に等しい地域だ。
この危険地帯は、魔王城のある南西から西にかけてだと言われている。

よってその地域の地図は作成されにくい。










「この地図はどこから手に入れたんだ」



西地域の地図の他、魔石や魔具、珍しい果物や香辛料などを並べている目の前の商人に尋ねる。



「知らねっすねー。商人仲間がおっ死んじまって、残ってる品をもらったんすわ。出所不明っす」



長い髪を指に巻き付けながら、あっけらかんと言う。


危険地域に足を踏み入れて地図を作れるということは、相応に腕が立つということだ。
様々な地域を渡り歩いている可能性もある。

何か情報を聞けたらと思ったんだが…、残念だ。











地図は購入し、中身を確かめるように歩いてみる。
訪れたことのある西端の村から丘を越え河を渡り、木々が生い茂る中をひたすら歩いて、ようやくそれらしきものが見える。

身体強化で移動速度を短縮させて、数時間。
地道に徒歩移動したなら2,3日かかるだろうか。




小さくまとまった村だ。




村を囲う申し訳程度の柵で、動物や魔物を拒む。
魔王が倒されてから作られた新しい村なのかもしれない。

宿屋や商店が見当たらないため、細々と住民同士で協力して暮らしているのだろう。


適当に村を一周してみて、村人のほとんどが褐色肌なことに気づく。
確かに西地域に褐色肌の人間は多いが、9割がた褐色肌の村は初めてだ。










足を止めて考えていると、足に何かがぶつかってきた。
両足に抱き着いて私を見上げるガキんちょが2人。

盛大に顔をしかめたが、面をつけているためガキには私の不快感が伝わっていない模様。



「兄ちゃん外の人?」

「そのお面なーにー?」



けらけらと笑いながら、私の周りを駆け回る。
耳に障る子供特有の甲高い笑い声。

耳障りだ。



「んぶっ」

「ぶわっ」



魔法で急成長させた草の壁を作り、強制的に動きを止めた。



「急に草が伸びた!」

「草にぶつかった!」



動きは止められたものの、笑い声は止まらず。
何が面白いのか理解できない。


突然現れたのは、見た目のよく似た、恐らく双子であろう2人。
ここの村人の例に漏れず褐色の肌。
性別の異なる双子のようだが、髪型も似ているため一見するとどちらも男に見える。



「暇なら遊ぼーよ!」

「兄ちゃんあそぼ!」



観察していたら、両手をそれぞれに捕まれた。
ガキにしては力が強いな。

捕まれた手に視線を落として、少しの違和感。



「お前ら、手が大きくないか?」

「そう?普通だよ?」

「みんなと同じだよ?」



何がおかしいのかわからないと首を傾げられた。
思い違いだろうか。

ガキの手を見慣れているわけではないから、おかしくないと断言されればそういうものかと思ってしまう。







納得はしきれないまま、双子に引っ張られる。
花がきれいだの、ウサギを捕まえようだの、忙しなく動く双子。

村近くの木立を遊び場にしているようだ。



「いつもこの辺りで遊んでいるのか」

「うん!お気に入りなの!」

「外の人も来るから楽しいよ!」







外の人。
この村の住民ではない人間。





地図に載っていた近くの村からは、おそらく徒歩で2,3日の距離だ。
魔物が多く出ると言われる危険地帯である西方面に、わざわざ出向く人間などいないだろう。



地図に載っていない村が、近くに存在するということだろうか。
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