不死の魔法使いは鍵をにぎる

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じゃれつく双子

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バウムと森で話していると、ごくまれに人間を見掛ける。
私と同じように面を付けていたり、フードを被っていたりと、外見を隠している者。

話を聞きに行こうとしたら、バウムに止められた。



そっとしておいてやってほしい、と。



面やフードの者が“外”の者なのかもしれない。
だとすれば、同じように面を被っている私をあの双子が“外”の者だと認識したのも頷ける。

私は老けない顔を面で隠しているわけだが、“外”の者たちは何を隠しているのか。

気にはなるものの、バウムが首を突っ込むのを嫌がっている。
バウムの意思を尊重して、足を踏み入れない聖域と化していた。









そんなある日、バウムと話していたら子供が2人近づいてきた。

顔立ちのよく似た双子。
手をつないで、警戒心と好奇心の入り混じった顔。




「兄ちゃん“外”じゃない人でしょ?」

「なのに木の人と仲いいの?」




距離を取った状態で話しかけてくる。

こいつら、前に会った褐色肌だらけの村の子供か?
あの時よりも成長して、少年少女になっている。



「兄ちゃんいい人?」

「悪くない人?」



警戒態勢を取りつつも、じりじりと近づいてくる双子。

こいつらの指す“良い悪い”がわからない。
バウムと仲が良ければ“良い”になるのだろうか。










「ゲルハルトだから言うが、隠れた村には、私と同じような、異形の者が多いんだ。大抵の者は、異形を嫌うだろう。

彼らの基準は、“外”、つまり、隠れた村の住民と、衝突しない人間かどうか、だ。

私と話している姿を、たびたび、見掛けたのだろう。彼らにとってゲルハルトは、交流するに値する、人間だということだ」





バウムの言葉を聞いて納得する。
人知れず審査されていたらしい。

今までは顔を見るや否や双子には逃げられていたが、話をしてもいいと認められたということか。
村の大人たちも壁が厚く、余計なことは話そうとしなかった。

これからは褐色肌の村の者から話が聞けるだろうか。







それにしても、バウムと同様に異形だというのはどういうことだろう。



情報収集のために地図に載っている村や町は全て訪れたが、異形の者を見掛けたことはなかった。
呪われた者が集まった村なのだろうか。
それとも、知らなかっただけで人間の姿をしていない人間というのは存在するのだろうか。


外見で差別され追い出された結果、異形の者の村ができたとしてもおかしくはない。








「大丈夫だ。ゲルハルトは、理解がある」



考えている間に、バウムの後押しによって双子が飛び跳ねた。



「やったあ!兄ちゃん良い人!」

「わあい!話していい人!」



2人で繋いでいた手を離して、私に飛びついてくる。
思わず舌打ちをしそうになった。

なんなんだ。
褐色肌の奴はなれなれしいのが標準なのか。


腕にしがみつく奴と、首元にぶら下がる奴。
振り払おうとする前に面を奪い取られた。



「あれ?普通だ」

「あや?何もないね」

「おい」



やけに俊敏な動きで止めることができなかった。
面を取った私の顔を見て、期待外れだとでも言うようにとぼけた声を出す。



「どうして隠してるの?」

「恥ずかしがりやなの?」

「お前らに関係ないだろう」



面を奪い返してそう答えると、双子はわかりやすく口を尖らせた。



「仲間だと思ったのにい」

「同じだと思ったのにい」



バウムや“外”の者と同じく異形仲間だと思ったようだ。


しかし自分らも異形だと言うような双子の口ぶり。
一見すると双子は普通の人間にしか見えないが、何か異なっているのだろうか。






「お前らも普通の人間ではないのか?」



双子はガキらしく悪戯っ子な笑みを浮かべる。



「遊んでいいけど内緒!」

「話すのはダメー!」



けらけらと笑いながら駆け回る。
悪態をつきそうになったが、バウムが横で口を開いた。



「この辺りでは、交友関係がひどく限られる。村の者でも、“外”の者でもない、ゲルハルトと関われるというだけで、嬉しいのだろう」



慈愛に満ちた表情のバウムを見ると、口をつむぐしかなかった。








それ以来、バウムに会いにくれば必ずと言っていいほど双子が現れた。


双子に面を奪われてそれを取り返したり、突然腕に掴まり首にしがみつく双子を振り払ったりと、勝手に遊ばれている。

双子の動きはやけに俊敏、かつ剛腕であり、身体強化で備えていれば対応できるものの不意打ちには敵わない。
ガキの相手をする気などさらさらないのに、強制的に相手をさせられていて不服である。
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