不死の魔法使いは鍵をにぎる

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異形の村との別れ

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「ゲルハルト」


私に気づいて教育が中断となる。




「教育は大丈夫そうだな。その調子で今後もやっていくといい」

「うん。何もわからなかった頃には戻さないよ。しっかり頑張るよ」



知識を教える教師役に任命した者は、私が魔法教育を行う時間以外にも個人的に勉強をしていた者だ。
新たな知識を得ることが好きらしく、説明も比較的わかりやすい。



「バリエレやベスツァフ達が結界小屋でいま話し合ってるんだ。そっちにも顔出してってくれよ」

「わかった」









結界小屋。
初めて村に入ったときに、バリエレが椅子に座って魔力放出に縛り付けられていた小屋だ。

扉を開けたまま話し合っている。
バリエレと、ベスツァフと、もう2人が小屋に居るようだ。



「ゲルハルト、もう旅へ出発するのか?」

「明日の早朝だな。最後に話をしに来た」

「そっか。寂しくなるな?」



持ってきていた荷物から、結晶の欠片を詰め込んだ袋を取り出す。



「結界用の結晶の欠片だ。10年くらいは持つんじゃないかと思う。結晶の欠片は通常不用品とされる物だ。魔具を作っている者などに声をかければ譲ってもらえるだろう。協力者に集めるのを手伝ってもらえばいい」



結晶の欠片を新たに撒いて結界の効力を保つため、定期的に結晶の欠片をバリエレに渡していたが、この先は自分たちで用意してもらわなければならない。

結晶の欠片の作り方を書いた覚書も渡す。



「作れる者がいれば自分たちで作ることもできる。魔物を倒すことからだが、魔力の強い者に試させてみるといい」

「ああ。ありがとうな?長い間世話になったな?」

「先のことまで考えてくれてありがとう。本当に感謝してる」










村の結界をバリエレ1人に任せるのではなく、何人かで分担させようとこの4人は話し合っていたらしい。

結界の魔法陣があるため、技術力が足りなくても魔力量で補うことができる。
村で魔力量の多い者を結界役として育てるようだ。


ベスツァフの魔力量はさして多くはないと思うが、一度魔法陣を使って結界を張ったことがある。
助言役としてこの場に居るのだろうか。







「そうだ。先ほどバウムが動かなくなった」







なるべく結界内で隠れるように暮らしているベスツァフ達。
毎日バウムに会うわけではない。

私がバウムについてそう言うと、ある程度別れが近いことはわかっていたようだ。
驚きは少なく、静かに空気が沈む。





「バウム様、逝っちまったんだな?」

「ゲルハルトがそう言うってことはバウム様は最期に話ができたんだよね」

「ああ。私も最期にバウムと話ができてよかった」












マーツェと再会するまでの間、バウムの存在にはひどく救われていた。

恨みつらみを忘れることはできないが、師匠が亡くなってからずっと燻っていた憤りを、バウムと話すことで幾分か消化できた。
魔王の呪いがかかっている同じ境遇であり、ほぼ変化の無い姿でも気にせずに関われる相手。


かけがえのない相手との別れ。

それはこの村にとってもそうだ。








「物資調達のとき、周囲に他者がいないかバウムに確認を取っていただろう。今後はそれを身体強化ですればいい。バウムほどの広範囲は無理だろうが、得意な者にやらせればそれなりに安全を得られるはずだ」

「うん。バウム様にずっと頼ってたから気を付けるよ」





物資調達を担っているベスツァフ。
自分のためにも、村のためにも、なるべく危険は抑えなければいけない。
普段と変わらない態度ながら、声に真剣さが滲む。



一通り話をして、別れを告げて村を出た。
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