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確かめたいこと
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根城に戻ってからマーツェにかけていた結界を解くと、何とも言い難い表情をしていた。
夕食を何も準備していないため、畑から野菜を引っこ抜いて調理していると、横で手伝いをしながらマーツェが口を開く。
「…私には、魔物にしか見えなかった。あの人たちは魔物の部位を持ってると思った」
ぽつりと言う。
村に連れていく前の、嫌悪感むき出しだったあの態度と比べると随分大人しい。
野菜を食べやすい大きさに切って、焼き目を付ける。
マーツェは違う野菜の皮をむきながら言葉を続けた。
「でも人間と同じだった。人の営みをしてた。言葉を介して。知識を蓄えて。日々を改善していく。人の死に悲しみだってするし。感謝もする」
「ああ、そうだ」
「でも、だからこそわからない。人間から産まれることある?あんな歪な姿で。異常な姿で。あり得ないことだよ。人間ではあり得ない部位だった」
呪いではなく、生まれつきの変えようのない姿。
本人たちも原因はわからず、ただただ人目を避けて暮らしている一族。
「私には魔物としか思えないんだ。あの姿は。魔王も同じような姿だった。人間の部位と魔物の部位を持った姿で。あの人たちは、私が、ルターが倒した魔王に似てる」
その話は初耳だ。
勇者の資料には倒した魔王に関する情報も載っているはずだが、読んだ覚えがない。
「そんな情報、見たことも聞いたこともないぞ」
「そりゃそうさ。気持ち悪いでしょ。耐えられないよ。人類の永遠の敵、魔王が人の姿をしてたなんてさ。
人の姿に化けてたわけじゃない。切り落とした腕。剣を突き立てた目玉。あれは人と同じだった。
ちゃんと報告したよ。王に報告した。でももみ消されたんだろうね」
頭が混乱してくる。
あの村の者たちが、かつての魔王と似た姿だった。
魔王と繋がりがあるのか?
仮に繋がりがあったとして、そんな者たちが、人間と衝突を起こさずにただただ平穏に暮らそうと籠った生活をするだろうか。
「だから一つ確かめてほしいんだけど」
むき終えた野菜を、焼き目を付けている浅い鍋の中に投入して、マーツェは言う。
「魔力の質を確かめてほしい」
「魔力の質を?」
「うん。ゲルハルト言ってたじゃないか。魔力の質感が全然違うって。人間と魔物じゃ。
あの人たちが嘘ついてるかもしれない。本当は魔物なのかもしれない。その可能性もあるでしょ?
魔力を見ればはっきりするよ。隠しようがないからね」
確かに、話を偽ることはできても、魔力を偽ることは不可能だ。
根っからの人間であるのに、何の因果か異形の姿を持って生まれる一族なのか。
魔物の血を引いていることを偽っている、もしくは本人たちも知らずして先祖が魔物であるのか。
魔力を見れば、どちらかの可能性は消える。
…いや、おかしい。
褐色肌の双子、ズィレンデとズィリンダのことを思い出して腑に落ちない点に気づく。
「褐色肌の者も同じ一族だぞ。マーツェも褐色肌たちの村を見ただろう。彼らはどう見ても人間だ。異形の部位は持っていない」
同じ一族の中で、人間と変わりのない褐色肌と、異形の部位を持つ者が産まれる。
純然たる人間だとしても、魔物の血を引いているのだとしても、矛盾が生じないか。
「私に言われてもわからないよ。現状わからないことだらけでしょう。でも魔力の質を見れば情報が増える。わかることが一つ増える。少なくともね。とりあえず調べるべきだ」
明日もう一度村へ行くということで話がついた。
村で実技の魔法教育をしているとき、魔力を練るという基礎の基礎から教えていたが、一人ひとりの魔力に触れることまではしなかった。
我流ではあったものの、みな魔力は練れていたのでその必要がなかったのだ。
今までに私が魔力の質まで触れたことがある人物は少ない。
師匠、ユーゲン、シュワーゼ、それと呪いをかけてきた魔物たち。
数少ない例と比較して、どれだけのことがわかるだろうか。
夕食を何も準備していないため、畑から野菜を引っこ抜いて調理していると、横で手伝いをしながらマーツェが口を開く。
「…私には、魔物にしか見えなかった。あの人たちは魔物の部位を持ってると思った」
ぽつりと言う。
村に連れていく前の、嫌悪感むき出しだったあの態度と比べると随分大人しい。
野菜を食べやすい大きさに切って、焼き目を付ける。
マーツェは違う野菜の皮をむきながら言葉を続けた。
「でも人間と同じだった。人の営みをしてた。言葉を介して。知識を蓄えて。日々を改善していく。人の死に悲しみだってするし。感謝もする」
「ああ、そうだ」
「でも、だからこそわからない。人間から産まれることある?あんな歪な姿で。異常な姿で。あり得ないことだよ。人間ではあり得ない部位だった」
呪いではなく、生まれつきの変えようのない姿。
本人たちも原因はわからず、ただただ人目を避けて暮らしている一族。
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その話は初耳だ。
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「そりゃそうさ。気持ち悪いでしょ。耐えられないよ。人類の永遠の敵、魔王が人の姿をしてたなんてさ。
人の姿に化けてたわけじゃない。切り落とした腕。剣を突き立てた目玉。あれは人と同じだった。
ちゃんと報告したよ。王に報告した。でももみ消されたんだろうね」
頭が混乱してくる。
あの村の者たちが、かつての魔王と似た姿だった。
魔王と繋がりがあるのか?
仮に繋がりがあったとして、そんな者たちが、人間と衝突を起こさずにただただ平穏に暮らそうと籠った生活をするだろうか。
「だから一つ確かめてほしいんだけど」
むき終えた野菜を、焼き目を付けている浅い鍋の中に投入して、マーツェは言う。
「魔力の質を確かめてほしい」
「魔力の質を?」
「うん。ゲルハルト言ってたじゃないか。魔力の質感が全然違うって。人間と魔物じゃ。
あの人たちが嘘ついてるかもしれない。本当は魔物なのかもしれない。その可能性もあるでしょ?
魔力を見ればはっきりするよ。隠しようがないからね」
確かに、話を偽ることはできても、魔力を偽ることは不可能だ。
根っからの人間であるのに、何の因果か異形の姿を持って生まれる一族なのか。
魔物の血を引いていることを偽っている、もしくは本人たちも知らずして先祖が魔物であるのか。
魔力を見れば、どちらかの可能性は消える。
…いや、おかしい。
褐色肌の双子、ズィレンデとズィリンダのことを思い出して腑に落ちない点に気づく。
「褐色肌の者も同じ一族だぞ。マーツェも褐色肌たちの村を見ただろう。彼らはどう見ても人間だ。異形の部位は持っていない」
同じ一族の中で、人間と変わりのない褐色肌と、異形の部位を持つ者が産まれる。
純然たる人間だとしても、魔物の血を引いているのだとしても、矛盾が生じないか。
「私に言われてもわからないよ。現状わからないことだらけでしょう。でも魔力の質を見れば情報が増える。わかることが一つ増える。少なくともね。とりあえず調べるべきだ」
明日もう一度村へ行くということで話がついた。
村で実技の魔法教育をしているとき、魔力を練るという基礎の基礎から教えていたが、一人ひとりの魔力に触れることまではしなかった。
我流ではあったものの、みな魔力は練れていたのでその必要がなかったのだ。
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