不死の魔法使いは鍵をにぎる

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死なせない呪い

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「何か他の目的もあったのでしょうか。苦しめる以外にも。同じでもいいわけですよね。同じ呪いでも。苦しめるだけが目的なら」

「さあてね!魔王様の考えることはわたしらにはわからないよ!」

「詳しくはわかりませんね。でも魔王様が使える呪いの相性もあるのではないでしょうか。得手不得手はあるものでしょう。あ、でも一つだけ気を付けることはあるそうですよ」





思い出したようにダモンの父親が付け加える。





「勇者を死なせない呪いだけはかけないようにしようと。

たしか、混ざり者から初めて魔王になった方が、死んでも記憶を引き継ぎ、永遠に苦しめられるような呪いを掛けています。

人間は排他的で、異物を排除するのがうまいですからね。うまくいけば死ぬよりも苦しい時間が延々と続きます。しかし弊害として知識も引き継がれてしまいます。それは厄介ですからね」








混ざり者からの初めての魔王。


かつてマーツェは言っていた。
始めのルターだったとき、人間の部位と魔物の部位を持った姿の魔王を自分は倒したと。

その言を疑っていたわけではないが、事実だったのだと理解する。



それとともに、なんて生ぬるいことを言ってくれるのかと、面を被っているのをいいことに顔をしかめる。


死ぬよりも苦しい時間、だと。


自ら死を選びたくとも死ねない体。
移り変わる周りの顔ぶれに何も変わらない自分。
終わりの見えない、延々と続く地獄。

空虚、孤独、絶望。


そんな簡単な言葉で済まされてたまるか。








「…そうですね。知識は力です。引き継がれては困りますね」



マーツェは外面のいい笑みを貼り付けたまま会話を続ける。
さすがである。



「しかし死ねない呪いですか。やはり魔王様以外には不可能なのでしょうね。その呪いを解くとしたら」

「それはもちろん。呪いを解くのに魔力が圧倒的に足りません」

「他の魔王でもできるのですか?呪いを掛けた本人じゃなくても?」

「それはそうでしょう。通常の呪いでもそうですからね。他者が解呪することはできますよ。魔力と知識さえあれば」




おかしなことを聞くもんだ、と首を傾げつつダモンの父親は答えた。





歌が作られるに至った過程、歌の意味、魔王の呪いの解き方。

聞きたいことは粗方聞けた。
あとは怪しまれずに村を出ることが出来れば上々である。




ダモンの父親が作った料理を食べながら、ダモンの旅路について話し、家に泊まってはどうかと言われたが村を出た。

一緒に行きたい場所が他にあると言い、もちろんダモンも同行している。



ダモンと手を繋いで歩いていたヘフテは、村を離れたところで盛大に溜息をついた。

敵と教育されていた相手との会話の場。
悪気なく挟まれる侮蔑の言葉。

ただ黙って話を聞いているだけでも気力を消耗するだろう。


大人でも疲れるのだ。
幼い子供に酷なことをした。


ヘフテの頭に手を置くように、軽く叩く。




「付き合わせて悪かったな」

「ありがとうね。おかげで成果があった。良い情報が手に入った。ヘフテとダモンのおかげだよ」




胸糞悪い場に居たことよりも、情報が手に入った高揚感の方が強いらしい。

少し乱暴にヘフテとダモンの頭を撫で繰り回すマーツェ。
ヘフテはそれを振り払って、ヘフテの腹を軽く殴る。





「マーツェ、酷いことたくさん言ってた」

「ごめんごめん。話合わせないとさ。疑われるし。聞きたいことも聞けなくなるし。仕方なくだよ。必要なことだったんだよ」





ダモンの両親の話に合わせて、マーツェは人間やヘフテの村を貶す発言もしていた。
あの村の住民なら当然の発言であり、同意しなければ怪しまれることは間違いない。


痛みを感じないヘフテの拳を受け止めつつ、マーツェはダモンに話しかける。





「ダモンは思わないの?人間は嫌いだとか。ヘフテの村は敵だとか。よく友達になれたね?ヘフテとダモン」

「みんな、ちがう。お父さんとお母さんも、よくケンカする。だから、ねえ、お話すればいいよ」





話してみなければ、その人の考えはわからないということか。
随分としっかりした考えを持っている。



「…そうだね。ダモンは偉いね」
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