不死の魔法使いは鍵をにぎる

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孤児の受け入れ

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「他の孤児か。うーん。そうだね。どうしようか」



ワイセの話を聞いて、マーツェは腕を組む。


確かに余裕はない。
現在の状態に子供が6人も加わったら、満足な食事はとれなくなるだろう。

ワイセの判断は間違っていない。


だがダモンを“普通”だと考える人間を増やすには、その孤児たちも取り入れたいところだ。

マーツェ自身、できるなら見捨てたくない気持ちもあるだろう。







食堂に治癒と修理を希望する人が集まってきたため、一旦話は保留にして対応に当たった。


孤児たちを受け入れるのならば、もっと別の方法を考える必要がある。

大人数で宿に滞在はできない。
恐らく食事も足りなくなる。

金がかからず、大人数が長期間滞在できる場所。
食材を各自である程度の量、調達する方法。


それらがあれば、受け入れ可能かもしれない。









治癒と修理の対応が終わり、食事を取りながら話し合う。



「受け入れたいよね。できることなら」

「だが今の状態じゃ食べさせられないぞ。宿にも滞在できない」

「うん。問題はそれだよね。何かないかな。解決策」



受け入れる方向で話し始めたことにワイセは目を丸くしていた。



「でも食事はなんとかなる気がしない?修理の代価に募ればいいよ。食べ物を。調理は自分たちでさせてさ。足りなかったら果物かな。森から収集させる」

「ヘフテも頑張る!食べ物集める!」



意気揚々とヘフテが発言し、同意するようにダモンも手を上げる。



「うん。お願いね。まあ飢え死にすることはないでしょ。食事は大丈夫だと考えよう。問題は居場所だ」



雨風にさらされることなく、安全に眠れる場所。
約10人の子供が滞在できる場所。



「宿に滞在できなきゃ町の中にはいられないだろう」



外部の者が町に滞在するには宿を取るしかない。

しかし大人数で長期間の宿滞在は難しい。
食堂の売り上げが増えたところで、大人数・長期間の宿滞在は店主が許すまい。



「じゃあ町の外?それじゃあ野宿になっちゃう。野宿は駄目だよ」



大人ならまだしも、体調を崩しやすい子供に野宿は避けたい。

まして栄養が足りていない状態の子供だ。
風邪をこじらせて命を落とす、という可能性だってある。










居場所をどうするか話し合っていたらワイセが口を挟んできた。



「他の孤児も助ける気なのか?」

「うん。そうしたい」

「本気か?孤児を助けてお前らにいいことがあんのか?」

「あるよ。利はある。でもそれ以上に助けたい。ただ助けたいだけだよ。できるだけ放っておきたくないからね。苦しんでる人を」

「それ似たようなことを私もこの間言ったねえ」

「うん。同じ。私も同じ気持ちだよ」



マーツェとジーグが顔を見合わせて朗らかに笑う。








ワイセにはマーツェの考えが理解できないようだった。
眉間にしわを寄せて怪訝な表情だ。



利害ではなく、ただ助けたいという行動。

恵まれて生きてきた人間の行動だな、とは思う。
そんな奉仕精神、私にはない。









「おうち、作れないの?」



軽く脱線していた話をヘフテが戻した。


居場所がないなら、作ってしまえばいい。
それはわかるが、誰がどこに作るというのか。

呆れた目で見る私とは違い、マーツェは目を輝かせた。








「そうだよ。作ればいい。というかある。既にあったよ。ゲルハルトの家が!」







森の奥深くに結界で隠した、私の根城。



「あそこなら気兼ねなく使える。お金もかからない。人目も気にならない。調理器具もある。あの家を使おうよ」





心情としては他人をほいほい入れたくはない。
が、そんなこと言っていられないか。


溜息をついた。



「寝具が足りないぞ。しばらく使ってないから埃もたまってるだろう」

「掃除させればいい。そんなの問題にならないよ。寝具も揃えればいい。簡単なものでいいもんね。今は寒い季節じゃないし。距離も障害にならない。ゲルハルトがいれば一瞬で行ける」

「…わかった」



仕方なく了承した。
難癖は幾らでも付けられるが、自分で反論が浮かぶくらいには小さいことだった。


よし、と勢い込んでマーツェが立ち上がる。



「善は急げだよ。ゲルハルト。早速行こう。子供たちを迎えに。とにかく食べさせなきゃ。だいぶ弱ってるみたいだし。今日は床で雑魚寝かな。1日くらいいいよね。外で寝るよりずっとましなはずだ」



他の孤児を助けることに決まったらしいと気づいて、アンテルは表情を明るくさせる。

ヘフテとダモンは椅子から飛び降りた。
マーツェ・ヘフテ・ダモンの早く行こうという視線が突き刺さる。

息を吐きながら私も立ち上がった。



「孤児は6人だったな。帰りが疲れるからワイセたちは待っていろ」





道案内と交渉役。
それを任せる3人以外は置いていく。

付いて行けないことにシュグリが叫んだ。



「一緒に行きたいねえ。でもすぐ戻ってくるからここで待ってようねえ」



ジーグがなだめている間にさっさと食堂を出る。
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