不死の魔法使いは鍵をにぎる

:-)

文字の大きさ
175 / 201

勇者ゲルハルトとしての話

しおりを挟む
「では、過去には死亡を確認できていない勇者がいます。それについてはいかがですか。何故だと思われますか」

「古い記録の話です。手違いで資料を紛失し、情報が途絶えてしまったのでしょう。先ほどの私の質問に答えてください」






魔王にしか解けない呪いとは、何か。




はぐらかされているように感じたのだろう。
王が答えを催促したが、マーツェは直接答えを返さない。



「ゲルハルトという名前に、聞き覚えはありませんか」

「かつての勇者と同じ名前ですね」



間を開けることもなく答えが返ってくる。



「勇者ゲルハルトも死を確認されていません。死んでいないからです」

「生きているというのですか」

「はい。右にいるゲルハルトがそうです。1200年前の勇者ゲルハルトです」

「有り得ません」

「いいえ、事実です。過去の魔王に呪われ、1200年もの間苦しんできました」

「魔王は倒されています。術者が亡くなれば呪いも解けるはずです」

「人が使える呪いとは別物なのです。魔王が倒れても、呪いは消えませんでした。魔王の呪いは、魔王にしか解くことができません。そのために魔王と交渉しました」





表面上は淡々と言葉が交わされていく。

しかし、冷静を装うマーツェ。
戸惑いを隠す王。

淡々とは程遠い感情が渦巻いているだろう。




かくいう私も、昂る神経を静めながら静観していた。


今日、この場で、王との交渉をうまく運ぶ必要がある。
王に呼び出される機会も、他人に邪魔されずに話せる機会も、もう持てまい。
この一度きりの機会で、決着をつける。


呪いを解けるか否かが決定するのである。








「先ほど、兵士たちがざわついていましたね。あれは、ゲルハルトの腕の陣に反応していたのではないですか。勇者ゲルハルトと同じ、人体に彫られた魔法陣です。過去確認できたのは勇者ゲルハルトにだけ。現在も、人体に魔法陣を掘っている人物の情報はないはずです。過去にも現在にも、ゲルハルト以外に陣の彫られた人物はいません」

「確かに人体に魔法陣のある人物は他にいません。しかしそれだけでは勇者ゲルハルト本人だとは証明できません」

「では本人しか知り得ない情報を話してもらいます」




視線が私に向かう。


根城に籠っていた期間が長いため、話せるのは本当に昔の話題になってしまう。

師匠が生きていた時代に見聞きしたこと。
師匠が亡くなり、根城に籠るまでの間に耳にしたこと。

軽く息を吸い、言葉をつむぐ。



「王は、歴代の王や結界張の統括者について、どれだけのことを知っていますか」

「一通り知っています」

「では、私が魔王を倒した頃についてです。その頃の王は、統括者と蜜月でした。政策の決定も、2人で話し合っていたといいます。しかし統括者は王に殺されてしまいました。他者との密通を王に疑われた、嫉妬によるものです。王は統括者を殺害したことに加え、政治を荒らした罪で王の座を下ろされています」

「それくらいなら、書物にも書かれていることでしょう。調べれば本人ではなくとも知れます」

「王に殺された統括者でしたが、非常に高い魔法技術を持っていました。王と結びついていたこともあって、恐怖政治だと揶揄される程に。玉座の、背もたれの左側にだけ魔石が就いているのを知っていますか」





私の言葉に、王が後ろに体をひねる。

高さのある背もたれ。
横に控えた者の丁度手が当たる高さに、魔石が付いている。





「いつ頃からあるのかは知りませんが、件の統括者の時代には間違いなくついていました。王を守るための魔石です。

王城は結界内とは言え、その中でも魔法を使える者はいます。魔法が使えなくとも、物理攻撃は可能です。不測の事態から王を守るため、より強固な結界を張るための魔石が付けられていました。統括者は王のすぐ傍に控え、魔法攻撃からも物理攻撃からも守る結界を張っていたのです。

けれど王と統括者の親密さに危機感を覚えた官吏たちは、次代からは距離を離しました。他の兵士たちと同じように、下段に控える形にしたのです。そのうちに、その魔石は使われなくなり、存在も知られなくなったのでしょう」





魔石の存在は師匠から聞いていた。


王と謁見する際には必ず統括者が傍に控え、椅子に手を伸ばしている。
一度、王に襲い掛かろうとして失敗した輩の姿も見ている。

あそこには恐らく魔石がある。
結界内だというのに、あれだけ強固な結界が張れる仕組み。

それだけ質の高い魔石を使っているのか。
魔石に仕込んだ魔法陣が良いのか。

調べてみたいものだと師匠は言っていた。


私が魔王討伐の報告に来た時ももちろん、統括者が王の傍に控えていた。
しかし今は違う。



魔石の存在自体が忘れられているのではと思ったが、当たりだったようだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/  香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。  ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……  その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。  香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。  彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。  テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。  後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。  シリアス成分が少し多めとなっています。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

救国の代償で白髪になった聖女、一度のミスを理由に「無能の戦犯」として追放される ~隣国の覇王に拾われ、愛され、奇跡の力を見せつける~

スカッと文庫
ファンタジー
聖女アリシアは、百年に一度の大氾濫から国を守るため、禁忌の魔力全解放を行い、単身で数万の魔物を殲滅した。その代償として、彼女の美しい金髪は真っ白な「白雪色」に染まり、魔力は一時的に枯渇してしまう。 しかし、その功績はすべて現場にいなかった「偽聖女セシリア」に奪われ、アリシアは「結界を一部損壊させた戦犯」「魔力を失った役立たず」として、婚約者の王太子ギルバートから国外追放を言い渡される。 「失敗したゴミに、この国の空気は吸わせない」 泥の中に捨てられたアリシア。しかし、彼女を拾ったのは、敵対国として恐れられていた帝国の「武徳皇帝」ラグナールだった。彼はアリシアの白髪が「高純度の神聖魔力による変質」であることを瞬時に見抜き、彼女を帝国の宝として迎える。 数ヶ月後。アリシアが帝国の守護聖女として輝きを取り戻した頃、王国では「一度きりの奇跡」だったセシリアの魔力が尽き、本当の滅亡が始まっていた。 「今さら結界が解けたと泣きつかれても、もう私の魔力は一滴も残っていません」

私は私で幸せになりますので

あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。 ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。 それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。 最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

処理中です...