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王の声明
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声明の当日。
普段と変わらないようでいて、どこか落ち着かない空気が漂っている。
まだ魔王は倒されていない。
吉報ではないだろう。
ならばなんだ、誰か亡くなったのか。
しかしそれほど重大人物の訃報なら、即時性を重視して濃紺の小鳩を既に飛ばしているはずだ。
知らせを出してから声明を出す余裕がある。
一体どんな内容なのか。
そこかしこで囁かれていた。
いざ、定刻である。
王都の住民は耳を澄ます。
街路に出るもの。
話を止めるもの。
仕事の手を休めるもの。
個々で場所や状態は異なるが、王の言葉を待つ。
私やマーツェは、王都でその様子を眺めていた。
王城の上部。
声明を出すために、王都に向かって設けられている露台。
そこへ王が姿を現した。
「此度の声明は、王族の過ちを正すものである。これまでの歴史には誤りがある。初代魔王は王に使える部下であった。かつての王が初代魔王を誕生させる原因を作った。余は魔物との共存を目指すこととし、この声明を出す」
王はここで言葉を区切った。
傍に控えていた魔法使いが小鳩を飛ばす。
幾羽も飛び立っていく白い小鳩。
それを見届け、王は再び口を開く。
「突然の声明に驚かせてしまったことでしょう。長らく、私含め王族は、この事実を隠してきました。人類と魔物の、終わりの見えない長い闘いを引き起こしたのが我々王族だと、皆に知られたくありませんでした。
けれど敢えて公表します。国の未来のため、民の安全のため、保身よりも争いを止めることを選びます。全ての原因は魔物だと嘘をついたままでは、魔物と談判することはできません。まず過ちを認めなければ、皆に知ってもらわなければ、何も始まりません。
初代魔王は、人間でした。王城で働き、作物を魔物被害から守る研究をしている者でした」
そうして王は、魔物と人間の争いが始まった経緯を話していく。
直接声を届けられる王都の住民に向けて。
書物を行き渡らせるべく、既に兵士は動き出した。
しかし冊数は限られている。
詳細が広まるまでにどれだけの時間がかかることか。
なるべく混乱を抑えるためにも、迅速な情報提供が好ましい。
本来、民に向けて王が長々と言葉を紡ぐことは無い。
簡潔に声明だけを述べてその場を去る。
詳しく述べたいことがある場合は、予め用意した文面を官吏に読ませるものだ。
露台に留まり、声明の文言以外を述べている今。
この状況は相当に稀有なことだ。
王都の住民は戸惑いつつも王の話に耳を傾けている。
王自らが言葉を紡ぐのは、情報の信憑性を高めるためでもあった。
なぜこのような声明を出すに至ったか。
本来あった事実とは何か。
王の真摯な態度が民に訴えかける。
正しいと信じきっていた概念をひっくり返すことは難しい。
幾ら策を練り手を回し、なるべく円滑に事を運べるよう尽力を尽くしたところで、限界はある。
凝り固まった頭を持つ者には届かない。
けれど王自らが訴えかければどうか。
民からの信頼厚い、慕われている王。
本来なら行わない、稀有な手段をもって民に直接訴えかける、その姿。
心が揺り動かされるだろう。
信じがたい内容であろうと、王の言葉を信用したいと考えるだろう。
実際、流した噂全てに懐疑的で一笑に付していた店主が、深く聞き入っている。
魔物への認識が改まるかは不明だが、効果は見受けられる。
長い争いの経緯を話し、王は最後にこう付け加えた。
「互いに大量の命を賭し、終わりなき争いを続けてきました。もう終わりにしましょう。私は、魔物と人間とが、共存できる未来を目指します。魔王の討伐は行いません。魔王も私たちを襲いません。互いに、平和を模索するのです」
声を拡散させる魔法を使用していた魔法使いが、その手を下げる。
王は露台から姿を消し、官吏たちもその後に続く。
露台から誰もいなくなったのを見て、静かに耳を傾けていた王都の住民は動き出した。
傍にいた者と今の話について言葉を交わす者。
家に戻り家事を再開する者。
止めていた仕事の手を動かす者。
改めて情報を吟味しようと、声明を補足する情報を見に行く姿もあった。
今の情報がどう受け止められたのか。
私やマーツェは民の様子を確認しに動き回る。
極簡単に見て回った様子からは、王都に大きな乱れは見られなかった。
変化はこれからだろうか。
王の言に賛同できない者は必ず存在する。
皆無などあり得ない。
その者たちが結託して何かを起こすのか、起こさないのか。
注視しておかなければならない。
王都以外の小鳩が降り立った地区では、物議を醸していた。
小鳩が王の声明を伝え、兵士が書物を流す。
順調に書物が届いても、一度にそれを読める人数は限られる。
大半が詳細情報に目を通せない状況だ。
王の意図はなんだ。
噂の情報通りじゃないか。
王が初代魔王を生み出したとは。共存だなんてできるはずがない。
様々な言葉が飛び交っていた。
意見交換が白熱しすぎて、軽い乱闘騒ぎへ発展しているところもある。
城に待機させていた兵士を転移させ、仲裁に当たらせた。
他にも、いくつかの町村に兵士を送ることになった。
兵士を送ればすぐ騒ぎは収まるものの、不満やらは燻ったままだろう。
普段と変わらないようでいて、どこか落ち着かない空気が漂っている。
まだ魔王は倒されていない。
吉報ではないだろう。
ならばなんだ、誰か亡くなったのか。
しかしそれほど重大人物の訃報なら、即時性を重視して濃紺の小鳩を既に飛ばしているはずだ。
知らせを出してから声明を出す余裕がある。
一体どんな内容なのか。
そこかしこで囁かれていた。
いざ、定刻である。
王都の住民は耳を澄ます。
街路に出るもの。
話を止めるもの。
仕事の手を休めるもの。
個々で場所や状態は異なるが、王の言葉を待つ。
私やマーツェは、王都でその様子を眺めていた。
王城の上部。
声明を出すために、王都に向かって設けられている露台。
そこへ王が姿を現した。
「此度の声明は、王族の過ちを正すものである。これまでの歴史には誤りがある。初代魔王は王に使える部下であった。かつての王が初代魔王を誕生させる原因を作った。余は魔物との共存を目指すこととし、この声明を出す」
王はここで言葉を区切った。
傍に控えていた魔法使いが小鳩を飛ばす。
幾羽も飛び立っていく白い小鳩。
それを見届け、王は再び口を開く。
「突然の声明に驚かせてしまったことでしょう。長らく、私含め王族は、この事実を隠してきました。人類と魔物の、終わりの見えない長い闘いを引き起こしたのが我々王族だと、皆に知られたくありませんでした。
けれど敢えて公表します。国の未来のため、民の安全のため、保身よりも争いを止めることを選びます。全ての原因は魔物だと嘘をついたままでは、魔物と談判することはできません。まず過ちを認めなければ、皆に知ってもらわなければ、何も始まりません。
初代魔王は、人間でした。王城で働き、作物を魔物被害から守る研究をしている者でした」
そうして王は、魔物と人間の争いが始まった経緯を話していく。
直接声を届けられる王都の住民に向けて。
書物を行き渡らせるべく、既に兵士は動き出した。
しかし冊数は限られている。
詳細が広まるまでにどれだけの時間がかかることか。
なるべく混乱を抑えるためにも、迅速な情報提供が好ましい。
本来、民に向けて王が長々と言葉を紡ぐことは無い。
簡潔に声明だけを述べてその場を去る。
詳しく述べたいことがある場合は、予め用意した文面を官吏に読ませるものだ。
露台に留まり、声明の文言以外を述べている今。
この状況は相当に稀有なことだ。
王都の住民は戸惑いつつも王の話に耳を傾けている。
王自らが言葉を紡ぐのは、情報の信憑性を高めるためでもあった。
なぜこのような声明を出すに至ったか。
本来あった事実とは何か。
王の真摯な態度が民に訴えかける。
正しいと信じきっていた概念をひっくり返すことは難しい。
幾ら策を練り手を回し、なるべく円滑に事を運べるよう尽力を尽くしたところで、限界はある。
凝り固まった頭を持つ者には届かない。
けれど王自らが訴えかければどうか。
民からの信頼厚い、慕われている王。
本来なら行わない、稀有な手段をもって民に直接訴えかける、その姿。
心が揺り動かされるだろう。
信じがたい内容であろうと、王の言葉を信用したいと考えるだろう。
実際、流した噂全てに懐疑的で一笑に付していた店主が、深く聞き入っている。
魔物への認識が改まるかは不明だが、効果は見受けられる。
長い争いの経緯を話し、王は最後にこう付け加えた。
「互いに大量の命を賭し、終わりなき争いを続けてきました。もう終わりにしましょう。私は、魔物と人間とが、共存できる未来を目指します。魔王の討伐は行いません。魔王も私たちを襲いません。互いに、平和を模索するのです」
声を拡散させる魔法を使用していた魔法使いが、その手を下げる。
王は露台から姿を消し、官吏たちもその後に続く。
露台から誰もいなくなったのを見て、静かに耳を傾けていた王都の住民は動き出した。
傍にいた者と今の話について言葉を交わす者。
家に戻り家事を再開する者。
止めていた仕事の手を動かす者。
改めて情報を吟味しようと、声明を補足する情報を見に行く姿もあった。
今の情報がどう受け止められたのか。
私やマーツェは民の様子を確認しに動き回る。
極簡単に見て回った様子からは、王都に大きな乱れは見られなかった。
変化はこれからだろうか。
王の言に賛同できない者は必ず存在する。
皆無などあり得ない。
その者たちが結託して何かを起こすのか、起こさないのか。
注視しておかなければならない。
王都以外の小鳩が降り立った地区では、物議を醸していた。
小鳩が王の声明を伝え、兵士が書物を流す。
順調に書物が届いても、一度にそれを読める人数は限られる。
大半が詳細情報に目を通せない状況だ。
王の意図はなんだ。
噂の情報通りじゃないか。
王が初代魔王を生み出したとは。共存だなんてできるはずがない。
様々な言葉が飛び交っていた。
意見交換が白熱しすぎて、軽い乱闘騒ぎへ発展しているところもある。
城に待機させていた兵士を転移させ、仲裁に当たらせた。
他にも、いくつかの町村に兵士を送ることになった。
兵士を送ればすぐ騒ぎは収まるものの、不満やらは燻ったままだろう。
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