不死の魔法使いは鍵をにぎる

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働く孤児たち

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大きな図書館を供えた町では、孤児の受け入れを試験的に開始していた。

王都と連絡を取る魔具もすでに渡してある。
居場所のない孤児は図書館を頼るようにと知らせも出した。

すると、想定以上の数が集まってしまった。


親が亡くなり孤児としてなんとか生き延びてきた子。
養いきれず食い扶持を減らすために図書館に送られた子。

中には生後数か月の赤子の姿もあった。
置き去りにされたのだ。



それ故、すぐに図書館だけでは対応できなくなった。
保護すると言い集まった子を放り出すわけにはいかない。

図書館で面倒を見切れない子はジーグの元に送られた。
乳児が増えたこともあり、ジーグの教育は思うように進まなくなった。


そこで、少しでも働けそうな子は外に連れ出しているのだ。




変わりつつある状況を見せ、新たな町の状態を基準として今後を生きてほしい。
この食堂以外にも年長組が付き添って子を連れて行っている。

魔物の馬車へ荷の上げ下ろし。
馬車道整備の簡単な手伝い。

魔物とともに働いている子もいる。




私の元根城からの送迎は魔物によって行われていた。

王が知らせを出して集まった孤児たちである。
支援として出される補助金。

その金で魔物馬車を雇い、送迎させているのだ。






「なるほどな」



確かに王は、孤児支援について何事かをよく話し合っていた。
食い扶持を減らす目的に子を置いていくことは想定外だったため、孤児の想定年齢や受入数を変えて対応を議論していたのだろう。



単純な受入数なら、食料を確保すれば対応できるかもしれない。
しかし乳幼児も相手にするなら話は変わる。

数時間ごとの授乳や排泄の処理。
怪我をしない環境も整える必要がある。





私とヘフテが話している横で、エヌケルは料理を運んできた子を褒めていた。
礼の言葉と共に頭を撫でるエヌケル。
子は照れたように肩をすぼめ、小走りで戻っていった。

その様子を見ていたヘフテが言った。



「エヌケルさん、いつもありがとう」

「いやいや。あんな小さいうちから働いて偉いじゃないか。貰える愛情は多ければ多いほどいいからね。私が褒めた程度じゃ微々たるものだが、少しだけでもね」

「少しだなんて。あの子たちのいい励みになってるよ。エヌケルさんが来たときは給仕の取り合いになってるんだ。みんな褒めてもらいたくてしょうがないみたい」


それから、「冷めないうちにどうぞ」と言ってヘフテは下がっていった。




「頻繁に来てるのか」

「そうだね。2日に1回くらいで来てるかな。褒めると本当に嬉しそうだから、こっちまで嬉しくなるんだよ」

「そうか」




褒めてくれる親がいない孤児たち。

些細なことだとしても、自分の行為を見て褒めてくれるのは嬉しいものだ。
制度を整えて衣食住は確保できたとしても、愛情を用意することはできない。


孤児を保護した際には、該当の図書館に孤児支援係が王城から派遣される。
支援係の人選基準を少し見直した方がいいのかもしれない。


教育や健康の管理を基準に選んでいたが、子供の精神面も考慮した方がいい。





食べ終えた食器を取りに来た子に対しても、エヌケルは褒めて頭を撫で、それから席を立った。



「ゲルトさんはこの後も王城に戻って作業をするのかい?」

「ああ」

「そうか。それも国のための作業なんだろう?よろしく頼むね。そうだ、後輩の官吏たちがゲルトさんに魔法を教わりたいとも言っていたんだ。少しの時間でも構わないんだが、もし暇があったら頼めないかな。本人たちは恐れ多くて話しかけられないと言っていてね」





私やマーツェがかつての勇者だと伝えたのは極一部だ。
王と、その側近。

しかし現在、私は面を外しての生活。
王城で行なう魔具制作ではどうしても腕の魔法陣は発光してしまう。


私が勇者の記録にある容姿と同じだという噂は密やかに広まった。
さすがに同一人物だとは結び付かなかったようだが、勇者の生まれ変わりなのではと囁かれている。

マーツェがさも愉快そうにそう教えてきた。





引き受けるのはまあいいとして、私個人について根掘り葉掘り聞かれるのは勘弁願いたい。

面倒な気配を察しつつ、言葉を選ぶ。



「…純粋に魔法指導だけなら、やってやらなくも、ない」

「本当かい。後輩たちも喜ぶよ。後日、本人たちから話をさせるから、そこで日程等決めてもらっていいかな。本当にありがとうね」



再度礼を言い、エヌケルは去っていく。
私は王城に戻って魔具制作の再開だ。
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