不死の魔法使いは鍵をにぎる

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感謝の言葉と戸惑い

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官吏は王城へと戻り、私はワイセと共に新しい町の様子を見に行くことにした。




しばらく呼び名の無かった新しい町だったが、最近ようやくヌーウェという名がついた。
町の名づけについて話し合う場が設けられ、住民同士で話し合った結果だ。


ヌーウェには“新しい”という意味がある。

新しく作られた町。
魔物と人間の共存という新しい試み。
今までからは考えられない、新たな未来。

明るい未来に向けて、新しい風が常に吹くような町にしたい。


…という願いが込められているだとか、どうとか。






馬車で移動組も新生活を始めて数日が経った頃だろう。
バリエレは馬車移動組に混ざっていた。
ヌーウェでの暮らしは順調か、様子を見たい。


王都からヌーウェへはそう遠くない。
王都住民の様子や道の状態、馬車を引く魔物や中に座る人の様子を観察がてら歩いていく。






と、唐突にワイセが笑いだした。



「なんだ」

「いや、マーツェも俺も、他の仲間たちだって関わって策をはり巡らしてたのにさ、ゲルトのことしか頭に残ってないんだな。そんで褒められてるときのゲルトの顔が面白かった。思い出しちった」


笑いで声を揺らしつつそう言う。


「ゲルトはさ、もっと人の感謝を素直に受け取った方がいいよ。自分で思ってるよりもずっと、たくさんの人を助けて、たくさんの人に影響を与えてる」

「私だけでしたことじゃない」


「うん。でもゲルトも関わってんじゃん。マーツェも俺もダモンもヘフテもジーグも、その他の仲間たちも、みんな礼を言われれば素直に受け取ってるよ。礼を言われて嬉しい、こちらこそありがとうってな。

でもゲルトは違う。自分の手柄じゃないって押し返す。俺たちを助けたことだってそうだろ?俺はめちゃくちゃ感謝してんのにさ」


「…利用するために保護したんだ」

「ほらな。けどゲルトとマーツェがいなきゃきっと、俺もアンテルもシュグリも、今頃生きてない。どっかで飢え死にしてるよ。ありがとな。あのとき俺らを拾ってくれて」

「…あれは、マーツェが言い出したんだ」

「マーツェにはとっくのとうに礼言ってるよ!」



ワイセの予想通りの返答をしたようで、また笑い出した。








感謝を述べられることが最近多い気がする。
ワイセは素直に受け取れというが、戸惑う気持ちの方が強い。


大概、裏があって行動した結果だ。

利用するため。
交換条件として。

そして大抵マーツェが発端となっている。


私に礼を言うのは間違っているのではないか。




加えて、人を憎んだ期間が長すぎた。

毒に剣に炎。
地獄を味わったあの日、私は人間であることをやめた。

あいつらとは同族ではない。
決して、違う。
違う生き物だ。

泣きも喚きもしなかったが、静かに、怒りの炎を燃やした。
1000年以上もの間。




全てを滅ぼしてやろうか、なんて考えがよぎったこともある。



町1つくらいなら簡単に滅ぼせる。
世界全てを滅ぼすならば何日かかるだろうか。

行動に移さなかったのは、ただ単に気力が湧かなかっただけだ。


なにもかもが面倒。
面倒だった。
眠るのも食べるのも息をするのも面倒な日々。


ただただ時間を浪費して、やっと食事をとろうと動いたのは、何年経ってからだったろうか。

何をしても死ねない体。
仕方なしに生活を始めた。
食事の準備、掃除、洗濯、最低限の生活を。






長いこと人間を憎んでいたのだ。
そんな者たちに礼を言われて、どう受け取ればいい。


“素直に受け取れ”なんてワイセは言うが、酷く難しい行為に思えた。
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