不死の魔法使いは鍵をにぎる

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ヌーウェでの様子

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ベスツァフたち早期移動組はのびのびと暮らしていた。
ヌーウェ内の知り合いも多く作れたようである。


面を外して過ごすベスツァフの顔は生気に満ち溢れている。





「ゲルハルト!毎日楽しくて仕方ないんだ。ほらこれ!お菓子の作り方を教わって我が作ったんだ。食べてみてほしい」



焼き菓子を口に突っ込まれた。
固めの食感だったが、普通に味は良い。



「ちょっと焼きすぎたんだ。でも美味しいでしょう?こういう食べ物は村では誰も知らなかったからな。いろんな人と関わってやる仕事も楽しいよ。ヌーウェはゲルハルトのおかげでできたんだって?」



いや、王主導で作った町だ。
という反論をする前にベスツァフの言葉が続く。



「ありがとう。本当に、ゲルハルトには感謝してもしきれないよ。こんな生活ができるようになるなんて、夢のようなんだ」


眩しいほどに目が輝いている。



「良かったな」

「バリエレたちも、戸惑うこともあるみたいだけど楽しく暮らしてるよ。バリエレの家、我の隣になったんだ。よく一緒に食事もしてるんだ。あ、バリエレ!」


茸を抱えて通りがかったバリエレを呼び止める。



「お?ゲルハルトだな?様子見に来てくれたのか?」



狐に似た太い尻尾を左右に振りながら近づいてくる。
バリエレも充実した時間を過ごせているようだ。

移住した数日間で経験したこと。
他の馬車移動組の様子。

嬉々として教えてくれる。




「関わる人の多さに戸惑ってはいるかな?けど自由に動き回れて、いろんな刺激があって、子供のころに戻った気分だな?毎日新しい発見がある。みなも楽しそうだからな?ゲルハルトには感謝しかないな?」

「…ああ」



茸の干し方をこれから教わるのだと、バリエレは去っていった。
毒茸なのだが、ある条件を揃えて干すと、毒成分が消えて旨味成分が増すのだとか。

ヌーウェへの移住は特に問題なく馴染んでいるようだ。







その他の住民の様子も一通り確認している中で、ワイセが言った。




「ここの人たちの礼は押し返さないんだな」



そうだったろうか。
意識していないことを指摘されたため、ピンとこない。



「あれをしたかったからだ、誰がしたことだ、ってゲルトは手柄を否定するだろ。それが無かった。地図外の村から移住してきた人たちの礼は、素直に受け取るんだな」


気のせいか、拗ねたような口調だ。




「そんなつもりはない」



しかし、確かにとも思う。

ベスツァフたちから言われる礼を、否定したことは無かったかもしれない。
感謝されて戸惑う気持ちも少なかった。


彼らは明らかに違うから。
人間とは違う。

ベスツァフたちは自らを人間だと捉えていたようだが、異形の部位を持つ体。
人間と魔物の血が混ざった、別種の生き物。



勝手に別枠だと捉えて、安心していたのかもしれない。

憎きあいつらとは違う生き物。
私を私として、接してくれる者たち。







「…ただ、そうだな。私は長いこと人を憎んでいた。ベスツァフたちは、人とはまた違う生き物だと、そう思っていたのかもしれない」

「人を憎んでた?ゲルトが?そうは見えなかったんだけど、…そうなんだ。あの人たちは血が混ざってるから平気だってことか?それは、なんか…、むかつくな」





不愉快を全面に押し出してワイセは言う。



「ゲルト。人に礼を言ってさ、“いや自分に言わないでくれ”って否定されると、感謝が伝わらなかったって悲しくもなるんだよ。

それを、人間の言葉は否定して、血が混ざってる人たちの言葉は受け入れるのか?俺の言葉は、人間だから否定されるのか?そんなん酷いじゃん。

ゲルトの過去に何があったんだか知らないけど、何があって人が憎いってなったのか知らないけど、そうやって括んないでほしい。人とか魔物とか混ざってる人とか、括って考えることないよ」


「…すまない」



ワイセに叱られる日がくるとは思わなかった。
見当違いなことを考えながら、軽く反省する。


意識を改めるというのは、なんと難しいことか。
気づいてきてはいるのだ。

全か無かで考える必要はない。
“人間”と全てを括って考える必要もない。



理解は、しているのだ。
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