不死の魔法使いは鍵をにぎる

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ヘフテの村の変化

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既存の図書館には魔具を配り終え、図書館が無い村でも図書館建造が少しずつ進んでいる。
試験的に受け入れた孤児の結果から、支援物資や対応策も改善され、多少は乳幼児も保護しやすくなった。






ヘフテやダモンの村との話はまだついていない。
今まで同様に他所の町村と関わる気は無い、孤児も出ることはない、と否定的なヘフテの村。


ダモンの村は魔王が話をしているが、そちらも手こずっているようだ。

忌々しい人間どもと何故手を取らねばならないのか。
フォルファ様の恨みを果たさずにいていいのか。

人間への憎悪は深い。






しかしヘフテの村へ幾度目かの話をしに行った今日、少し変化があったようである。

報告があるとヘフテが言うので、王の元へ集まった。
王城の会議室に集まった面々。

顔ぶれが揃ったのを見てヘフテが口を開く。





幾度目になるのか、共存を目的に交流を持ちたいと話をしに行った。

村代表のお婆は今日も否定的な態度。
始めはまた駄目だったかと思った。


しかし帰り際、小さい頃によく遊んでくれた兄姉にこっそり呼び止められる。
お婆はああ言ってるが、若い連中は賛成する者も出てきてる、と。




どうやら、年代によって意見が分かれてきてるようだった。

上の世代は、現状を変えるつもりはない。
今まで同様、人間にも魔物にも関わらず、支援も受けない。
共存などは勝手にやっていればいいという見解。




しかし若い世代には、違う意見も出始めていた。


自分たちの村と、周りの森と、森向こうの敵対する村。
それだけの、狭い世界で生きてきた。
ここに留まらずともいいのではないか。
外の世界に飛び出してもいいのではないか。


自分たちの村から外に飛び出していったヘフテは、随分と楽しそうだ。

あらゆるものを見聞きし、体験し、内面的にすごく成長したようである。
ヘフテが持ち込む衣服や料理もとても魅力的に映る。

お婆たちの反応を見ていると、村全体で交流を持つことは不可能だろう。
ならば、若い私たちだけ移住してはどうか。


お婆たち上の世代はこのまま残ってもらって、私たちだけ移住なら可能なのではないか。




そういう話が出ているらしい。











「若い人たちだけ移住、ですか。人数はどの程度ですか」

「30人ちょっとと言っていました」



王の質問にヘフテが答える。


全員をヌーウェに移住させるとしたら、少し厳しい人数かもしれない。
入れなくはないが、手狭な家になるだろう。


マーツェからも質問が飛ぶ。



「問題ないの?その人数が移住して。住民が減って。残る人たちは平気なのか?生活の維持は?可能なのか?」

「平気だよ。ほぼ自給自足で、支え合ったりとか元々なかったんだ。人数が減っても、お婆たちが生活に苦しむことはないはず」

「そう。ならいいね」






移住は喜んで受け入れる。
しかしそれによって生活基盤が壊れるのは不本意だ。


ヘフテの返答を聞いてマーツェは安心したようだ。
残る住民の生活も守られるならばと、移住を受け入れる方向で話が進む。


全員をヌーウェに移住させるか、否か。

家が手狭になるだろうが、ヌーウェなら問題なく受け入れられる。
ベスツァフやバリエレたちも馴染んでいた。
見た目で差別されることは少ないだろう。



しかし森に囲まれ、開放的に暮らしていた者たちだ。
手狭な家に押し込められて、窮屈に感じないだろうか。苦痛ではないだろうか。

なら、時期尚早かもしれないが、他の町にという手もある。


魔物の働く場も広がりつつある。
ヌーウェ以外の、土地に余裕ある他所の町に移住する方が、快適かもしれない。






話し合った結果、ヌーウェと他所の町、複数の地への移住という結論が出た。

半数ほどがヌーウェに。
褐色肌や人間に近しい見た目の者がヌーウェ以外の町へ移住。

これなら差別も起こりにくいだろう。




一旦この結果を伝え、実行するかどうかを問う。

お婆たち上の世代は、これ以上場を設けても意見が変わる望みは薄い。
国からの干渉を避け、距離を取るのが一番良いのだろう。

ただ、ときおり様子を見に行きたいとヘフテは言っていた。




その後、若者が出ていくことで村では一悶着あったようだ。

口喧嘩にも発展し、あわや喧嘩別れかという事態に。
しかしお婆は言った。


前途ある若者を、年寄りにつきあわせて縛り付けてはいけない。
行きたいというなら行けばいい。
自分たちはこれまで通りの生活を続けるだけだ。


これにより事態は鎮火。
快くとはいかないが、一応は送り出してもらえることに。


受け入れる準備が整い次第、移住することとなった。
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