クビになった暗黒騎士は田舎でスローライフを送りたい~死の大地と呼ばれる場所は酷暑の日本と同じような場所でした。チートスキルで快適生活します~

taqno2nd

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第一章

第3話 元暗黒騎士はデカパイ女と出会う

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 暗殺部隊を始末したけど、まずいな。
 確実に次の追手が来る。

 やっぱり酔った勢いでやるのはよくないな。
 みんな、ヤケ酒はよくないぞ!

「宿屋に泊まるのはやめだ。今夜のうちに王都から抜け出そう」

 まだ教会の上層部に勘づかれる前に移動する。
 じゃないと今度はもっと大勢の刺客が送り込まれる。

 正直大したレベルじゃないけど、荒事に巻き込まれるのは嫌だ。
 もう俺の心は異世界転生でスローライフって次の目標があるんだ。
 トラブルなんてごめんだね。

「まるでお尋ね者だなぁ。一方的に襲われたのは俺なのに、なんで逃げなきゃいけないんだ」

 暗殺者を返り討ちにしたからだ。
 けど仕方ないだろ? 殺されてたまるか。
 まぁ、酒の勢いってのはあるんだけどさ。忘れよう。

「正規の移動ルートだと先回りされてる可能性があるよな。列車は使えない」

 この世界は不思議なもので、雰囲気は中世ファンタジーなのだが、魔法のおかげで文明レベルはそこそこ高い。

 魔法で動く列車が、交通機関として存在している。
 自動車はまだこの世界には無いようだ。あれば便利なのに。
 その代わり、馬車での移動が多い。異世界の馬って頑丈だな。いや前世で馬に乗ったことないけど。

「馬車での移動か。この前の任務依頼だけど、民間の馬車に乗ったことないかもしれん」

 任務で移動する時は軍用の馬車に乗ることもあった。
 一般の馬はどれくらい早いのか、よくわからない。
 こっちの世界だと孤児だったから、一般常識とか疎いんだよなぁ。

「こういう時は行商の馬車に乗せてもらうしかないか。なるべく夜のうちに動くとしよう」

 王都脱出作戦。
 なんだかわくわくするシチュエーションだ。
 失敗したら何をされるかわからないから、テンション上げてる場合じゃないんだけどね。

 ◆◆◆

「なぁ、あんた商人か? 道中の護衛を引き受ける代わりに、俺を馬車に載せてくれないか」

「なんだ兄ちゃん、あんた冒険者かい」

「似たようなもんだよ」

 冒険真っ最中だ。ただし逃避行という最悪の冒険だ。

「どこまで行きたい? わしは隣国のスリトライ共和国まで行く予定だが」

「そこは関所を通るだろうか」

「そりゃあ、当然通るね。国から出たり入ったりする時は必ず通るよ」

 それはマズイよなぁ。確実に捕まる予感がする。
 今はまだ夜だからいいけど、明日になると俺の情報が伝わってるかも。

 見つかったら面倒そうだ。
 この商人のおじさんにも迷惑をかけるだろう。
 関所に着く前まで乗せてもらおう。

「じゃあ途中まででいい。そこまで乗せてもらえないだろうか」

「護衛してくれるんだろう? むしろありがてぇ限りだ。あんた強そうだもんなあ」

 ありがたいな。転生して素直に感謝されるのは久々だ。
 俺はこの国最強の暗黒騎士と呼ばれていたし、腕に自信はある。
 商人のおじさんは守り切ってみせよう。

「そ、そこの馬車待ってください!」

 俺が馬車に乗り込もうとしてたら、女性の声が聞こえた。
 ずいぶん焦っているみたいだ。息を切らしてこちらに走ってくる。

 まさか追手か? 俺を捕まえようとしている?

「私もその馬車に乗せてくれませんか?」

 どうやら追手じゃないらしい。
 ローブで全身を隠してるから、あいつらの仲間かと思った。

「今の話を聞いてました。私も腕に覚えがあります。護衛を引き受けますので、一緒に乗せてもらえませんか!」

「なんと、冒険者が二人も護衛についてくれるのかい。でも残念ながら報酬は払えないよ」

「俺は乗せてくれるだけで、全然ありがたいです」

「私もよ。出来れば国境の前で降ろしてくれると嬉しいのだけれど」

「…………」

 この女、もしかして同類か?
 国境前で降りるってことは、関所で見つかるとマズイってことだ。
 まさかこの女もお尋ね者か?

「それじゃあ二人とも乗った乗った! 魔物が出たら働いてもらうよ!」

「任せてくれ。魔物退治は慣れてる」

「私もよ。役に立てるように頑張るわ」

 この女、冒険者か?
 いや違うな。冒険者なら姿を隠すような格好をするはずがない。
 全身をローブで隠してるから、顔を見られたら困る事情があるに違いない。

 俺たちは馬車に乗る。
 怪しい女と一緒に後部座席に座る。

「ずいぶん大変そうだな、あんた」

「どういうことかしら」

「そんな格好をしてるんだから、何か事情があるんだろ。例えば誰かに追われてる、とか」

「そういうあなたこそ、こんな早朝から馬車に乗せてもらおうだなんて、訳アリって感じだわ」

「俺はただの冒険者だよ」

「嘘よ」

 一発で嘘がバレてしまった。
 俺の格好も冒険者らしくない、ラフな格好だしな。
 二人揃って冒険者にはとても見えない。

「俺は事情があって、この国にいられなくなってね。さっさと別のところに行こうとしてるとこなんだ」

「あら、仕事をクビにでもなったのかしら。それで恥ずかしくてどこか遠いところへ行きたいとか?」

「まぁ、そんな感じだよ」

 実際はなぜか指名手配されて、お尋ね者になっちゃったんだけど。
 それを正直に言うのはリスキーだろう。

「まぁ、でも私も似たような境遇ね。この国にいられなくなったのよ。こんな国はとっとと出ていきたい」

「気が合いそうだな」

「あなたみたいに、ぬるい事情じゃないけどね」

 言ってくれるじゃないか。
 職場をクビにされて、指名手配されるのがぬるいって?
 まぁ正直どうでもいいとは思ってる。相手にするのが面倒なだけだ。

 この国の思想強めな雰囲気が苦手で、この機会に国から出ようと思ったわけだし。

 しかしこの女はどんな事情を抱えているのだろう。
 気になるが、聞いていいのか迷うな。

 今俺がわかるのは、全身を覆ったローブの上からでもわかるくらい、この女の胸がデカいということだけだ。

 あまり露骨に見るのも失礼だろう。
 俺は眼福だと思い、名残惜しさを覚えつつ視線をこっそり逸らすのだった。

 このデカパイ女、変装してる割にはその胸のせいでかえって目立つんじゃないか? と思わずにはいられなかった。

 ◆◆◆

 馬車に乗って四時間ほど経った。
 結構なスピードで馬車を走らせてるが、今はどの辺りまで来たんだろう。

「って、俺この国の地理とか知らねえや」

「ここは白き森と呼ばれる地域よ」

「詳しいんだな」

 そう言えば任務で何度か来たことがあるような……。
 俺の任務って大体夜だから、日中の景色とかわからないんだよな。
 たぶん来たことはあるんだろうけど。

「う、うわああ! あ、あんたら誰ですか! と、盗賊!?」

 突然、前の方から悲鳴が聞こえた。
 おそらく商人のおじさんだろう。野盗か何かが出てきたらしい。

「早速出番みたいだ。行こう」

「ええ、おじさんが襲われる前に助け出しましょう」

 俺たちは馬車から降りて武器を構える。
 武器と言っても、昨日倒した暗殺者から拝借した短剣だけだ。
 以前使ってた武器は全部、騎士団に返還しちゃったからなぁ。

 でも人間相手ならこの短剣で十分戦えるだろう。

「あ、あんたら来てくれたか! た、助けてくれ!」

「今行くぞおじさん! おい、野盗ども! 大人しく……って、こいつら」

「最悪だわ……」

 デカパイ女が剣を構えて悪態をつく。

「こいつら、騎士団の連中よ……」

 冒険の旅に出てきた最初の敵は、元職場の連中でした。
 俺を殺すためにもう追ってきたの?
 そんなに職場で嫌われてたのか、俺。ショックだ。

「アリアス・シーゲルシュタイン。貴様を捕縛させてもらおう!」

「誰が捕まってやるものですか! この迫害主義者の騎士団どもめ!」

 あれ、もしかして狙いは俺じゃなくて、こっちのデカパイ女の方?
 ということは、こいつらは俺じゃなくてこの女を追ってきたのか。

 騎士団に追われるなんてこのデカパイ女、一体どんな事情を持ってるんだ。

「あんたたちみたいな卑怯な騎士なんかに、絶対に負けないんだから!」

 おい、それは負けた時にすごいことされるフラグにしか聞こえないぞ。
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