クビになった暗黒騎士は田舎でスローライフを送りたい~死の大地と呼ばれる場所は酷暑の日本と同じような場所でした。チートスキルで快適生活します~

taqno2nd

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第一章

第4話 元暗黒騎士は謎の女の実力を見る

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「はぁぁぁぁ!」

「ぐわっ!」

 おお、すごいな。
 剣を一振りしただけで、騎士団の連中がゴミのように吹き飛んだ。

 この女、確かアリアス・シーゲルシュタインとかいったか。
 中々に強い女のようだ。

「ふん、騎士団の実力はこの程度なのかしら。たいしたことないわね」

「舐めるなよ、こいつ! くらえ、ファイアーボール!」

「下級魔法が私に通用するものですか」

 なんと、アリアスは騎士団の魔法攻撃を防ごうともしない。
 いくら下級魔法といえど直撃すれば多少のダメージはあるはずだ。

「ダメージが……ない?」

 どういうことだ。
 まさかあのローブの下に魔法防御効果のある防具を着けているのか。
 それにしては体のラインがくっきりと出ている。
 防具を着けているようには見えない。

「この……忌まわしいスキルを持ちやがって! 禁忌の悪魔め!」

「禁忌を犯してるのはあなたたち王国の方よ! 私のスキル、【女神の加護】はどんな魔法攻撃も無効にする!」

 魔法でダメージがないのはアリアスのスキルの効果だったのか。
 騎士団の連中が鬱陶しく思うのも頷ける。
 この世界で魔法攻撃を無効にするというのは、チートレベルのスキルだろう。

「私を倒したければ物理攻撃で倒すしか無いわよ。でもあなた達にこの私を倒せるかしら」

 無理だろうな。
 さっきアリアスの剣筋を見たが、騎士団のやつらが敵う相手じゃない。
 アリアスとは天と地ほどの差がある。

 魔法が効かないとなると、騎士団のやつらがアリアスに勝てる方法はない。

「クソ! 我らユグドラ王国の民ではなく、なぜ貴様のような異端の女に【女神の加護】というスキルが与えられたのだ! 忌々しい!」

「あなた達ユグドラの民に女神を信奉する資格など無い! てやぁぁ!」

「がぁぁぁ!」

 なるほどな。アリアスが騎士団に追われている理由がわかった。
 ユグドラ王国は女神を信仰している。それはもう、ブラック企業の社風のように、怖いくらいの信仰心がある。
 それなのに他国の人間であるアリアスに【女神の加護】なんてスキルが与えられたから、それを恨めしく思ったのだろう。

 ないものねだりだな。
 自分たちに女神の加護が無いからって、加護があるアリアスを消そうとするなんて情けない。

 改めて思う。この国ってクソだわ。

「ふぅ。全員倒したわね」

 おいおい、十人はいた騎士団がもう全滅か。
 情けないなぁ。元同僚として恥ずかしいぜ。
 まぁ、俺はこんな卑怯な任務は絶対に受けないけど。
 あ、だからクビになったんだった。まぁいいか、こんな職場。

 俺が倒れた騎士団の連中を眺めていると、剣を収めたアリアスがこっちに向かってくる。

「悪かったわね。私の面倒事に巻き込んでしまって」

「いいや、気にしてないさ。見事な腕だな」

「……あなた驚かないのね。騎士団が一斉に押し寄せてきたら、普通はもっと驚くはずだけど」

「こいつらは下っ端だ。こんなやつらが何人来ようと怯える必要なんてないだろう」

「あなた、何者なの……」

「ただの無職だよ」

 本当に無職で困る。これからどうしようか。
 この世界で再就職ってどうするんだろうな。ハ◯ーワークみたいな施設ってあるんだろうか。

「ねぇ、あなたひょっとして……」

「ぐぅ……おのれ、アリアス・シーゲルシュタイン……!」

 倒れた騎士の一人が、矢をアリアスに向けていた。

「危ない!」

 言うと同時に、俺はその騎士の喉元を短剣で切り裂いていた。
 暗黒騎士をしているうちに身についた、相手を瞬殺する動きだ。
 いやな癖がついちゃったなぁ。前世だとこんなこと絶対にしないわ。

「かはっ……! き、貴様は……まさ、か……」

 驚いた眼をして俺を見た騎士は、ようやく息絶えたようだった。
 悪いな。いくら元同僚とはいえ手加減が出来なかった。

「この騎士、矢で私を狙ってたのね……油断していたわ」

「あんたは物理攻撃しか効かないみたいだから、隙を突こうとしてたんだろうな。おまけに猛毒の矢だ。悪いけど出しゃばらせてもらった」

「助けてくれてありがとう。もしこの矢を受けていたら、今頃大変なことになっていたわ」

「どうだろうな。あんたなら矢が放たれてからでも反応できそうだが」

「買いかぶりすぎよ。そんな事できるのはあの暗黒騎士くらいじゃないかしら」

「えっ」

 暗黒騎士ってもしかして……。

「ユグドラ王国の騎士としては異端と言われる正義の騎士。敵味方を問わず、己の正義を貫き通す最強の戦士。王の右腕とも言われている、この国最強の暗黒騎士。一度手合わせしてみたいものだわ」

「誰だよそれは」

「あなた知らないの? この国の唯一の良心といってもいい、まともな人間なのよ」

「誰なんだよそれは」

「だから言ってるでしょう? ユグドラの黒き剣こと、最強の暗黒騎士のことよ。名前は明かされていないけど、有名人なのよ。噂くらい聞いたことあるでしょ?」

 いや、ないけど。
 もしかして、もしかしなくても俺のことじゃないよな?
 だって俺、そんなやつのこと知らないぞ。なんだよユグドラの黒き剣って。
 なんかちょっとかっこいいじゃないか。そんな二つ名があるなんて、全然知らない。

 俺の騎士団での呼び名なんて、『あいつ』とか『あの人』ばっかりだったからな。
 そんな厨二心に響く二つ名が与えられていたら、もっと仕事のモチベーションが上がったはずだ。

 だからアリアスが言う暗黒騎士は、きっと俺とは違う誰かのことだろう。
 この国に暗黒騎士って俺しかいなかったはずだけど、たぶんそうだ。

「そんなに有名なのか? その暗黒騎士ってやつは」

「ええ。もし彼が敵として現れたら、敗北は確定すると言われるくらい強いのよ」

「し、知らねえ……!」

 これは絶対に俺のことじゃないな。
 そりゃ、他の騎士に比べたら強いって自覚はある。
 転生ボーナスなのか、たまたま才能があったのかはわからんが、俺は騎士団の中だと上位の実力だった。最強の暗黒騎士と呼ばれたこともある。

 だが俺が戦場に出ると相手は負けるなんて、そんな馬鹿げた話があるはずない。
 いくら俺が強くても、そんなチートみたいな強さを持ってるわけじゃないし。

「すごいなその暗黒騎士ってやつ。俺も一度は会ってみたかった。もうこの国には戻ってこれないだろうし」

「そういえばあなた、仕事をクビになって他の国に行こうとしてるんだったわね」

「ああ。職探しだけでも大変そうなのに、他国で再就職なんてどうなることやらって感じだ」

「それほど酷い失敗をしたのね……」

「いや、俺はそんなにやらかしたつもりは無いんだが」

「失敗した人はみんなそう言うのよ」

 そうなのかな……そうなのかもしれない。
 自覚がないだけで、騎士団長にも嫌われてたっぽいしな。
 暗殺者が送り込まれるくらいだし、俺はさぞ疎ましく思われてたのかもしれない。

「気にしない方がいいわよ。失敗は誰にでもあるものだから」

「そういうもんかね。まぁ、俺も気にしないようにするよ」

 俺達は片付けを済ませて、商人のおじさんの無事を確認した。
 幸いこれといって怪我もなかったので、馬車は無事走ることになった。

「国境のあたりまであと数時間でつくよ。あんたらはそれまで寝てていいぜ」

「じゃあ、お言葉に甘えることにしようかな」

 俺は馬車の中で寝ることにした。
 暗殺者に襲われて、宿で寝ることも出来なかったからな。
 ようやく一息つける。本当に、今日は慌ただしいな。
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