クビになった暗黒騎士は田舎でスローライフを送りたい~死の大地と呼ばれる場所は酷暑の日本と同じような場所でした。チートスキルで快適生活します~

taqno2nd

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第一章

第5話 元暗黒騎士は元同僚を制圧する

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「おいあんたら、国境近くまでついたぜ」

「起きなさい、ねぇ起きて」

 眠い……。もう少し寝かせてほしい。
 しかしそうも言ってられないな。目的地に到着だ。

「ほらあそこに関所があるだろう。あそこを超えればこの国から出れるよ」

「そうか。ここまで連れてきてくれてありがとう。俺はここで降りることにするよ」

「私もそうするわ」

 アリアスも俺も、真正面から関所を通れるとは思えないからな。
 騎士団のやつらは、俺が無事に国から出られないようにしてるはずだ。
 正規の方法で国から出ることは出来ないだろう。

 商人のおじさんと別れた。
 あのおじさんは無事に関所を通れるだろうか。
 騎士団の連中から目をつけられてないといいが。

「さて。俺はどうするべきか」

 問題はどうやって関所を抜けるか。
 見張りを倒して通るか? いやそれだと騒ぎになる。
 じゃあどうにかして見張りの注意を逸らす? いやそれだと見張りの意味がない。通用しないだろう。

 さてどうしたものか。

「お前はどうするんだ? お尋ね者なんだろう」

「私は大丈夫よ。関所を通るのに何の問題もないわ」

「そうは言ってもどうやるんだ。変装してることも騎士団にはバレてるぞ」

「大丈夫。それよりあなたはどうするの。あの商人といっしょに関所を通ればよかったんじゃない?」

「俺にも事情ってものがあるんだよ」

 アリアスと同じく俺もこの国ではお尋ね者だ。
 彼女がどうやって関所を通るか、参考にしたかったが秘密のようだ。

「なぁ。見張りに顔を見られずに関所を通る方法ってあるかな」

「何を言ってるのよ。そんな方法があれば、関所なんて意味がなくなるじゃない」

「ごもっとも。じゃああんたはどうやってあの関所を通るんだ?」

「あなたには関係ないわ」

 それもごもっとも。
 だが俺としても重大な問題なのだ。
 ここは少し強気で行ってみよう。

「俺はさっき、騎士団の毒矢からあんたを助けた。いわば命の恩人だ」

「……それについては礼を言うわ」

「礼のついでに、その関所を通り抜ける秘密を教えてくれないか?」

「どうしてそんなことを知りたがるのか不思議だわ」

「興味本位だよ。知的探究心ってやつだ」

「本当かしら……」

 怪しみながらもアリアスは俺にその秘密を教えてくれた。

「このマジックアイテムを使うのよ。変装の腕輪と言って、身につけると外見を変えられるのよ」

「ほう。そんな便利なものがあるのか」

「ただし効果は五分だけしか続かないわ。使い切りのマジックアイテムよ」

「使い切りか……それは一個だけか?」

 頼む、二個持っててくれ。
 言い値で買うから……!

「私が持ってるのはこれ一個よ。そもそも、これはレアなマジックアイテムなの。手に入れるのに苦労したのよ」

「色々と悪用できそうだしな」

「これ一つで三◯◯万ゴールド。関所を通り抜けるためだけに手に入れたの」

 三◯◯万ゴールドってことは、日本円で三千万円か。確かに激レアなマジックアイテムらしい。
 俺の手持ちの金じゃあ、とても買えそうにない。

「秘密を教えてもらってすまなかった。色々と知れてよかったよ」

「その割に残念そうな顔をしているけれど、もしかしてあなた……これを使いたいの?」

「そんなところだ。まぁ一個しかないなら仕方がないさ」

「そんなに前の職場の失敗が恥ずかしかったのね……」

「……そんなところだ」

 こうなったらぶっつけ本番で関所を通るしかないか?
 変顔をしてれば案外バレないかもしれない。

 いや駄目だ。もし俺の正体がバレたら騒ぎになる。
 そうなると商人のおじさんやアリアスも巻き込まれる。
 それは駄目だろう。

「無事に国境を超えれることを祈ってるよ」

 俺はこの国から出られそうにない。

 ◆◆◆

 アリアスと別れを告げて数十分ほど経った。
 無事にユグドラ王国から逃げ出せたのだろうか。

「なんだか関所が騒がしいな」

 まさか、アリアスの変装が見破られた?
 だがアリアスはマジックアイテムで変装してたはずだ。
 そう簡単に見破られるものなのか?

 様子を見に行ってみよう。

「おい! お前がアリアス・シーゲルシュタインを馬車に乗せていたことは分かっている! あの女はどこに行った!」

「ひ、ひぃ! し、知らない! そのアリアスなんとかって人が乗ってたなんて知らないんだ! 女はさっき馬車から降りた! 俺はなんにも知らねえ!」

「なるほど、どうやらこの辺に潜んでいるようだな。お前たち!」

「はっ!」

「この関所を封鎖しろ! 周囲に人員を配置しろ! この周辺にいる人間を一人たりとも逃がすな!」

 まずいな……。
 悪い予想が当たってしまった。
 やはり騎士団は商人のおじさんを待ち伏せていたようだ。

「貴様はアリアス・シーゲルシュタインの逃亡を協力した罪で連行する」

「そ、そんな! し、知らなかったんだ! 俺は別に悪いことをしたわけじゃ……」

「黙れ! 騎士団に逆らうか!」

「やめなさい! その商人は無関係よ!」

 年寄りの女性が声を荒らげる。
 その女性は腕輪をしていた。変装したアリアスのようだった。

「あのバカ、せっかく変装したのにバレちまうぞ……」

 三◯◯万ゴールドのマジックアイテムを無駄にする行為だ。
 だがアリアスは見過ごせなかった。自分のせいで無関係な人が巻き込まれるのは許せないのだ。

 アリアスは腕輪を外した。
 すると彼女の変装が解けた。

「私がアリアス・シーゲルシュタインよ。その商人を解放しなさい」

「ほう、お前がかの異端者アリアス・シーゲルシュタインか。中々いい女じゃないか」

 おい、ゲスいことを言うな。同じ騎士として恥ずかしいぞ。
 この国の騎士がみんなクズみたいに思われる。
 いや、クズだな。うん、こいつらクズだわ。
 揃いも揃って、変な思想持ってるんだよなこいつら。
 一緒に働いててキツかった記憶がある。

「そう言えばあの隊長格の騎士は見覚えがあるな……」

 そうだ思い出した!
 あいつは俺が暗黒騎士として働いてる時に、いつも騎士団長と一緒に嫌味を言ってきた騎士だ!

 思い出したらなんだか怒りが湧いてきた。
 こいつらのせいで俺の転生ライフは、前世と同じブラック企業みたいな空気になってたんだ。

「そこを動くなよアリアス・シーゲルシュタイン。抵抗すればこの場にいる全員を処刑する。なぁに、貴様が少々我慢すれば済む話だ。グフフ……」

「クズめっ……。この国の騎士は揃いも揃って最低な人間ばかりね……!」

「貴様のような異端者に言われたくはない! さあじっとしていろ。今そのローブを脱がして、貴様の柔肌を味わってやろうじゃないか……」

 騎士の手がアリアスの体に触れようとする。
 もう我慢ならない。
 俺は物陰から飛び出した。

「さてさて、異端者アリアス・シーゲルシュタインの身体はどれほどのものか……ぐへっ!?」

「お前に、その女に手を出す資格はない」

 俺は騎士の脳天に短剣を突き刺していた。

「た、隊長! 貴様、何者だ!」

「おいおい、もう俺の顔を忘れたのか。冷たい同僚たちだな。いや、もう同僚じゃないか」

 脳天に刺した短剣はもう使えそうにない。
 暗殺用の物だからか、耐久力が低いようだ。
 たった数人を処理しただけで、もう使い物にならないか。
 まともな武器を揃えないといけないな。

「き、貴様はまさか……!」

 周囲の騎士たちが騒然としている。
 俺の顔を見て驚愕している者もいた。
 それはそうだろう。なぜなら俺は昨日までこいつらの同僚だったのだ。
 そんな人間が自分の上司を殺したのを目撃したら、驚くのも無理はない。

 前世で言うところの、お礼参りってやつだ。

「あ、悪魔だ……」

「で、出た……裏切り者の暗黒騎士……」

「レクス・ルンハルト!」

「裏切り者? 酷い言われようだな。俺の認識だと、俺が一方的にクビにされたはずなんだがな」

「こ、殺せ! 全員こいつを殺すのだ! アリアス・シーゲルシュタインなどどうでもいい! こいつをこの場で始末しろ!」

 おい、アリアスに比べて随分と反応に差があるじゃないか。
 野郎はお呼びじゃないってことか?
 ラノベみたいなエロシーンが来ると思ったら、男が混じってきたからキレてるのか?

 だがそんなことはどうでもいい。

「死ね、裏切り者のレクス・ルンハルト!」

「さっきから悪魔だの裏切り者だの、好き勝手言うんじゃない。俺はお前ら以上にキレてるんだ」

「ごばっ……!」

「ひぃ……悪魔っ……! ぐはっ……!」

 武器がないので仕方なく素手で倒していく。
 とどめを刺せないので不安だが、この状況から抜け出すことが先決だろう。

「や、やめろ! 俺達仲間だろ!? ほら、以前飯を奢ってやったじゃないか……!」

「俺には飯を奢ってくれるような同僚はいない!」

「ぶべっ……!」

 どいつもこいつも、くだらないことを言いやがって。
 お前らが俺に優しくしてくれたことなど、ただの一度も無いじゃないか。
 それなのにまるで俺が悪いみたいに言いやがって。

 俺に優しくしてくれたのは聖女ローレシアと国王陛下くらいだった。
 俺はこの世界に来てからずっと、一人だったんだ。

「た、頼む……殺さないでくれ……!」

「別に殺したくて殺してるわけじゃない。騎士団長に伝えとけ。お前らが俺を追ってこないなら、俺はお前らを攻撃しない」

 でももし追ってくるのなら、やり返させてもらう。
 クビになった職場からの嫌がらせを我慢するわけないだろ。
 やられたらやり返すさ。それだけだ。

「よし、これで無事終わったな。な?」

 アリアスに視線を向けると彼女は困惑した顔で立っていた。

「あなたは、あなたが暗黒騎士……ユグドラの黒き剣……」

 アリアスは勘違いしている。
 彼女が言っていた暗黒騎士は俺のことじゃない。
 俺はそんなにすごい人間じゃないのだ。
 ただ、生きるために必死で戦っていた、平凡な騎士に過ぎない。

「そう言えば自己紹介がまだだったな。レクス・ルンハルトだ」

「わ、私はアリアス・シーゲルシュタイン……」

 俺が握手を求めると、アリアスは混乱した様子で握手を返した。
 その時、アリアスのフードが脱げた。
 綺麗な金髪が見えて感心していると、そこから俺は更に驚いた。

 なんと、耳が。
 アリアスの耳が長いのだ。

「……見ての通り、エルフよ。この国では忌み嫌われる亜人なの」

「美しい……」

「は?」

 始まったかも知れない。
 俺の転生ライフが。

 職場をクビになった結果、デカパイ金髪エルフと出会えました。
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