クビになった暗黒騎士は田舎でスローライフを送りたい~死の大地と呼ばれる場所は酷暑の日本と同じような場所でした。チートスキルで快適生活します~

taqno2nd

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第一章

第6話 元暗黒騎士は既にエルフとフラグが立っていた

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 関所の騎士たちを片付けた後、俺達は国境の向こうへと抜け出した。
 結局強行突破となってしまったが、みんあ無事で結果オーライだろう。

 商人のおじさんも、助けてくれてありがとうと言ってくれたが、面倒に巻き込んだのは俺達だ。
 もう面倒事に巻き込まれたいのを祈っておこう。

 そして俺の横にはアリアスが並んでいる。
 ローブを脱いで、変装を完全に解いていた。

「お前、エルフだったのか……」

「ええ……本当は正体を明かしたくはなかったわ」

 アリアス・シーゲルシュタイン。
 騎士団から異端者認定されていた謎の女の正体は、デカパイ金髪エルフだった。

 正直感動している。
 この世界に来て初めて、エルフという存在に出会ったからだ。

 エルフと言えばファンタジーの王道だ。
 俺も前世でたくさんのラノベを読んだが、異世界系の作品には高確率でエルフが登場していた。
 転生して、いつかは会ってみたいと思っていたが、ようやく出会えるとは……。

「それで……本当なの?」

「何がだ」

「あなたがあのユグドラの黒き剣、最強の暗黒騎士だったなんて」

「そのことなんだが、アリアスは何か勘違いしてるんじゃないか」

 彼女の語る暗黒騎士のイメージは、俺とはかけ離れている。

「俺はアリアスの思うような、ヒーローなんかじゃないよ。職場で疎まれてクビになった、ただの無職だ」

「いや違うわ! さっきの身のこなし、騎士団のやつらからの怯えられっぷり、間違いなく黒き剣よ!」

「だったら噂に尾ひれがついたんだろう。俺はただ自分の仕事をしてただけだからな」

 正確にはやりたい仕事だけをしていたのだが。
 さっきの騎士たちのような、一般人を巻き込むような仕事は断ってただけだ。
 俺がやるのは悪の組織や敵国の強敵を秘密裏に葬ってきただけ。

 それも異世界転生で得たスキルのおかげだ。
 全然かっこよくない。

「違う……黒き剣……暗黒騎士は本物の英雄よ。私はよく知ってる」

「どういうことだ?」

「私は数年前、故郷の村から連れ去られたの。エルフの奴隷は高値で売れるって理由だけでね。故郷の村は盗賊に襲われて崩壊するところだったわ」

「その村って……」

「エゥルス村……隣国の北東にある、のどかな村よ」

「ああ……」

 その村の名前は聞き覚えがあった。
 俺が任務で訪れた村だ。
 任務内容は人身売買組織の壊滅と、目撃者の処分。

 だが俺は何も知らない一般人を口封じのために処分するなんて出来なかった。
 今日見たことは忘れて、別の村に移住するといい。そう言って村人を助けたのだ。

 だが上層部は俺の判断に怒り、騎士団長からは処罰を受けた。
 直属の上司じゃないくせにと当時は不満に思ったものだ。

 いや今も不満に思ってるけどな。
 次に顔を見た時は許さんぞ騎士団長。

「あの時の村人は全員フードやターバンをしていたから、エルフだって気付かなかった」

「おかげで私達の村は壊滅せずに済んだ。危険だってことで、住む場所を変えたけどね」

「それは、すまなかったな。この国は亜人に厳しいから」

「ええ。でもそうじゃないの……! 私はあなたにお礼が言いたかった!」

「お礼……?」

 今の話のどこに、お礼を言われるポイントが有るのだろう。
 むしろ故郷の村を厄介事に巻き込んで、申し訳ないと思うところなのだが。

「ユグドラの黒き剣が私を助けてくれた。盗賊に誘拐された私を、颯爽と救ってくれたのよ。そして故郷の村に送り返してくれた」

「もしかしてお前、あの時の子供か!」

「子供じゃないわ! 私はもう十八歳よ!」

 当時は子供だろ……。
 そっか。あの任務は五年前だったが、あの時助けた子供が大きくなったんだな。
 俺も当時は十六歳だったけど、転生してるから子供って自覚が薄かったもんな。

「あの時の子がアリアスだったなんて驚いたよ。無事に成長して安心した」

「これもすべてあなたのおかげよ。あなたに救われたから、私は今こうして生きている」

「大げさだな。人を助けるのは当たり前だろ」

「それがエルフだとしても?」

「当時はエルフだって気付かなかったけど、今も変わらないよ。もちろん助けるさ」

 そう言うとアリアスはほっと安堵の息を漏らした。

「よかった。やっぱりあなたは私の思った通りの人みたい」

「それはどういう意味だ」

「信じるに値する人ってこと」

 それは光栄だ。
 こんな美人エルフに信頼してもらえるなんて、前世でどんな徳を積んだのだろう。
 ブラックなベンチャー企業でこき使われて、倒産する時の責任をおっ被せられたくらいか?

「でもまさか、あの黒き剣が騎士団を追放されるだなんて……」

「どうも、職場での勤務態度が悪かったんだとさ。嫌な任務は片っ端から断ってたら、いつの間にか職場で嫌われてた」

「ふふ、暗黒騎士なのに真面目なのね」

「いや、暗黒騎士だから仕事をサボってたらこうなったんだ」

 フフフ、とアリアスは微笑む。
 先程までの張り詰めた雰囲気は、いつの間にか霧散していた。

「それで? これからどうするの?」

「最初に言っただろ。遠くに行くって。俺は国際的なお尋ね者にされてしまったらしい」

「正直、信じられないわ。あのユグドラの黒き剣にそんな仕打ちをするなんて」

「実際、暗殺者を送り込まれたからな。周辺国にも恨まれてるらしいし、人のいない場所で静かに暮らすとするよ」

「行くアテはあるの……?」

「『死の大地』、マヤトに行く」

「し、正気!? 確かにあそこはどの国の領土でもないけど、生物が死に絶える最悪の場所だって話よ?」

 暗殺者が漏らした情報だが、やはり有名な場所らしい。

「逆に言えば、そこまで行けば俺を追ってくるやつはいないってことだろ」

「それは、そうかもしれないけど……。死ぬかも知れないわよ」

「大丈夫だ。すぐには死なないよう、対策は考えてある」

「へぇ、どんな対策があるのかしら」

「まぁ、つまんない答えだけど俺のスキルだな」

「そう言えばあなたのスキルって、元暗黒騎士だけあって闇に関するスキルなの?」

「ああ、いやそうだけど、そうでもなくて……」

 なんと説明したらいいのだろう。
 俺の特別なスキル。いや特異なスキルとでも言おうか。
 異世界の人間に伝わるかわからないけど、俺のスキルは普通のスキルとは全然違うものだ。

「俺のスキルは【ダークマター】。未知の物質を生み出すスキルだよ」

 おそらく転生者ボーナスで手に入れた、この世界に存在しないモノを生み出すレアスキルだ。
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