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級友の心配

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「ねえ、リルハ。生徒会室にきて」

翌朝学院に行くと、早くも教室にいたリュスティリア王女に生徒会室に連れて行かれた。

「な、なんですの?」
「なんですのじゃないわ!昨日のこと聞いてないの?」
「昨日のことですか?さあ」

リーリルハの両親たちは昨夜は在宅しており、夜会で飛び交ったジュルガーの噂を聞いた者はいなかったのだ。

愚か者が、エレイン・マーテルラのブティックに男爵令嬢を連れて行って、騒ぎを起こしたそうよ」

愚か者・・・と男爵令嬢?

口にするのも穢らわしいと、リュスティリア王女は名を言わなかったが、ちょうど入ってきた書紀を務めるホールズワード伯爵令息アイザルグが、あからさまぶりに吹き出しながら「ああ、それ!」と補足した。

「ジュルガーやってしまったらしいですね。今朝うちの両親から私も注意されましたよ」
「へえ、ホールズワード伯爵はなんて?」
「婚約者を裏切るな!それとジュルガーとは付き合いを考えたほうがいいって」

神妙な口ぶりに、事態の重みを理解していることがうかがえる。

「それが正解だと思うわ」

こくこく頷きながら、リュスティリア王女は痛ましそうにリーリルハを見つめた。

「そんな・・・、そんな噂なんて」

「それがただの噂じゃないんだよ。
マーテルラ侯爵夫人のブティックで、ジュルガーが公爵家の名を振りかざして暴言を吐き、夫人に撃退されたそうなんだが、その現場にいらした方が何人もいたんだ。誰かひとりの思い込みというものではないんだよ」

アイザルグの視線が気の毒そうにリーリルハを包む。

「それじゃあ・・・」
「リルハ、本当にごめんなさい!やっぱりわたくしのせいだわ」
「違いますわ・・・違いま・・・」

リーリルハの瞳からぽろりぽろりと大粒の涙が零れ落ち、リュスティリア王女が何かから庇うように抱き締める。

「今日は授業を休んで、帰ったらどう?」

気遣ったリュスティリアからそう言われ、ふるふると首を左右にしたが。

「リルハ、今のその瞳では授業は難しいと思うわ」

真っ赤に染まった瞳とやや腫れた瞼、涙跡が残る顔が痛々しい。
アイザルグもリュスティリア王女の背後でこくこく頷いて。

「そのほうがいい。先生には私が知らせておくし、シューリンヒ家にも迎えの馬車を出すよう知らせたほうがいいね」
「いえそんな大袈裟な!少し休めば」
「今日はたぶん噂が凄いと思うんだ。とばっちりが行くかも知れないし、殿下の仰るとおり休んだほうがいいと思うよ」

アイザルグにそう言われると、それもそうかもしれないと納得できた。
リーリルハはアイザルグが取ってきてくれた鞄を持ち、授業に出ることなく、屋敷へと帰って行った。
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