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荒れるパートルム公爵家
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パートルム公爵家では、今まさにジュルガーが公爵夫妻の前に座らされていた。
ソファではない。
カーペットのない床に直接膝を折り曲げて座らされているため、痛いのだろう。ジュルガーの体が揺れているが、夫妻はまったく気にする様子を見せることはない。
昨日領地を回っていたパートルム公爵モリーズは、学院でジュルガーがやらかし、王女に拘束されたと聞くや否や、そのまま城にすっ飛んで行き、床に頭を擦り付けんばかりにリュスティリア王女に謝罪した。
リュスティリア王女からは、今のところパートルム公爵家に対しては怒っていないが、今後のジュルガーによっては公爵家全体に影響があるだろうと釘をさされ、平身低頭のまま、縄を打たれたジュルガーを引き摺って帰ってきた。
というのも、コリールのあまりの愚かさに驚き、呆然としていたジュルガーは幸い不敬までは問われておらず、男爵令嬢を庇うようなら面倒だと拘束されただけだったから。
ただ。
「王女であるわたくしが何度も注意を与えたというのに、教育係を買って出ただけと屁理屈を捏ね、Aクラスだけが利用できるエリアに下賤な者を引入れた罪は不快で許し難い!
しかもあきらかに婚約者を蔑ろにしており、先日の模擬パーティーは婚約者でなく、その下賤な者をエスコートして現れたのだ!パートルム公爵家はそれをどのように考えておるのか!」
と、大変な剣幕でリュスティリア王女に叱責された。
模擬パーティーのエスコートの件を知らなかったモリーズは、ジュルガーに煮え湯を飲まされ、悔しさを歯軋りで堪えていた。
「顔を上げろ」
身震いするほど冷たい声に、ジュルガーは顔をあげられない。
「顔を上げろと言ったのが聞こえないのか」
父が恐ろしくてならないが、諦めてそろそろと顔を上げたジュルガーの目に、憤怒の両親が映って、思わず目を瞑った。
「おまえはマーテルラ侯爵夫人のブティックでトラブルがあった際、リーリルハ嬢を大切にしていると言い退けたが、あれは嘘だったのだな」
「・・・・・・・」
「嘘だったのだなっ?答えねばそういうことだな」
カツっと踵の音がしたと思うと、モリーズはその踵でジュルガーが床についていた手の指を踏んだ。
「ギャッ」
「答えない、または嘘を言えばお前の指を踏み潰すと覚えておけ」
くるりと踵を返し、椅子に座り直した父の未知の恐ろしさに、ジュルガーはガタガタと震えが止まらないが、また踏まれてはたまらないとなんとか声を絞り出した。
「う、うそを、つきました」
「リーリルハ嬢を蔑ろにしていた上に、他の娘を模擬パーティーにエスコートしたそうだが、ではその模擬パーティーにリーリルハ嬢はいらしていなかったのか?調べたところ、おまえの予算からドレスを買った形跡がないようだが、リーリルハ嬢にドレスはちゃんと贈っていたのか?」
父の詰問は、マーテルラ侯爵夫人とブティックで揉めたときとは比べ物にならないほどの厳しさだ。
家族には穏やかな顔を見せていても、王族に次ぐ、貴族階級の最上位にいる公爵らしい厳しさがないわけではない。それが今、家門の危機を呼んだジュルガーに向けられていた。
ソファではない。
カーペットのない床に直接膝を折り曲げて座らされているため、痛いのだろう。ジュルガーの体が揺れているが、夫妻はまったく気にする様子を見せることはない。
昨日領地を回っていたパートルム公爵モリーズは、学院でジュルガーがやらかし、王女に拘束されたと聞くや否や、そのまま城にすっ飛んで行き、床に頭を擦り付けんばかりにリュスティリア王女に謝罪した。
リュスティリア王女からは、今のところパートルム公爵家に対しては怒っていないが、今後のジュルガーによっては公爵家全体に影響があるだろうと釘をさされ、平身低頭のまま、縄を打たれたジュルガーを引き摺って帰ってきた。
というのも、コリールのあまりの愚かさに驚き、呆然としていたジュルガーは幸い不敬までは問われておらず、男爵令嬢を庇うようなら面倒だと拘束されただけだったから。
ただ。
「王女であるわたくしが何度も注意を与えたというのに、教育係を買って出ただけと屁理屈を捏ね、Aクラスだけが利用できるエリアに下賤な者を引入れた罪は不快で許し難い!
しかもあきらかに婚約者を蔑ろにしており、先日の模擬パーティーは婚約者でなく、その下賤な者をエスコートして現れたのだ!パートルム公爵家はそれをどのように考えておるのか!」
と、大変な剣幕でリュスティリア王女に叱責された。
模擬パーティーのエスコートの件を知らなかったモリーズは、ジュルガーに煮え湯を飲まされ、悔しさを歯軋りで堪えていた。
「顔を上げろ」
身震いするほど冷たい声に、ジュルガーは顔をあげられない。
「顔を上げろと言ったのが聞こえないのか」
父が恐ろしくてならないが、諦めてそろそろと顔を上げたジュルガーの目に、憤怒の両親が映って、思わず目を瞑った。
「おまえはマーテルラ侯爵夫人のブティックでトラブルがあった際、リーリルハ嬢を大切にしていると言い退けたが、あれは嘘だったのだな」
「・・・・・・・」
「嘘だったのだなっ?答えねばそういうことだな」
カツっと踵の音がしたと思うと、モリーズはその踵でジュルガーが床についていた手の指を踏んだ。
「ギャッ」
「答えない、または嘘を言えばお前の指を踏み潰すと覚えておけ」
くるりと踵を返し、椅子に座り直した父の未知の恐ろしさに、ジュルガーはガタガタと震えが止まらないが、また踏まれてはたまらないとなんとか声を絞り出した。
「う、うそを、つきました」
「リーリルハ嬢を蔑ろにしていた上に、他の娘を模擬パーティーにエスコートしたそうだが、ではその模擬パーティーにリーリルハ嬢はいらしていなかったのか?調べたところ、おまえの予算からドレスを買った形跡がないようだが、リーリルハ嬢にドレスはちゃんと贈っていたのか?」
父の詰問は、マーテルラ侯爵夫人とブティックで揉めたときとは比べ物にならないほどの厳しさだ。
家族には穏やかな顔を見せていても、王族に次ぐ、貴族階級の最上位にいる公爵らしい厳しさがないわけではない。それが今、家門の危機を呼んだジュルガーに向けられていた。
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