15 / 23
第15話
しおりを挟む
「シューラ!シューラはいないのか?」
レインスル家の屋敷の中にマイクスの声が響き渡る。
「お父様どうなさいました?」
「ほら、婚約破棄が完全に成立したぞ!テルド伯爵のお陰で満額の支払いだ!ハハハ」
「あれ、仰ったのですか?」
「ん?ああ、もっちろんだ」
ドレスショップで「このろくでなし野郎くたばりやがれ」とでも言ってやれと、ヨノイが言ったアレである。
「せっかくだからソネイル子爵にそのとおりに言ってやったぞ!すっきりしたが、おまえも言いたかったのではないか?」
「っ!いえ、全然これっぽっちも!」
「そうかぁ?あ!そうだ新しい婚約も成立したぞ!」
「は?はあ?なななに言ってるのおとうさま」
驚きすぎて、いつものすましたシューラはどこかに行ってしまう。
「ちょっと!今日婚約破棄できたというところで、わたしになんの相談もなく?どうかしてるんじゃないの?冗談じゃないわ!」
怒りのあまり、敬語の存在を忘れたシューラが父を怒鳴りつけた。
生まれから貴族であればそんなことは決してできないだろうが、数年前まで平民だったシューラには、こんな時まで貴族然と済ましていることはできなかった。
「まあまあまあ、怒る気持ちもわかるがな」
マイクスがドレスが入った箱を取り出してテーブルに置き、開けるようにシューラに促す。
怒りながらも、テルド伯爵が贈ってくれたドレスを見る誘惑に負け、箱を開けたシューラは目を瞠った。
「わあ素晴らしいわ」
意匠はシューラが選び、ドレスメーカーが屋敷に仮縫いにも着てくれたが、仕上がりがどうなるかは何故か秘密と言われていたのだ。
「それを着て、テルド伯爵に見せに行こう」
「え?何それ?」
「テルド伯爵から言われているんだよ、伯爵家は子も孫も全員男で、初めて孫にドレスを贈るような気分らしい。ほら支度しろ」
何がなんだかわからないうちに、侍女にドレスアップさせられ、マイクスに馬車に乗せられた。
「楽しみだな!」
テルド伯爵の屋敷は、レインスル男爵家から馬車でニ時間ほどの距離にあった。
その大きさから爵位以上に豊かな一族だとわかる、素晴らしい邸宅である。
馬車を降りると、迎えに出ていた執事に案内されるまま廊下を連れられていく。
「すごいな」
大商会を育て上げ、数多の貴族家に出入りするマイクスでもそうため息をつく、レインスルなど百年経っても到底歯が立たないと感じさせる由緒正しき貴族屋敷は、廊下でさえマイクスを圧倒した。
レインスル家の屋敷の中にマイクスの声が響き渡る。
「お父様どうなさいました?」
「ほら、婚約破棄が完全に成立したぞ!テルド伯爵のお陰で満額の支払いだ!ハハハ」
「あれ、仰ったのですか?」
「ん?ああ、もっちろんだ」
ドレスショップで「このろくでなし野郎くたばりやがれ」とでも言ってやれと、ヨノイが言ったアレである。
「せっかくだからソネイル子爵にそのとおりに言ってやったぞ!すっきりしたが、おまえも言いたかったのではないか?」
「っ!いえ、全然これっぽっちも!」
「そうかぁ?あ!そうだ新しい婚約も成立したぞ!」
「は?はあ?なななに言ってるのおとうさま」
驚きすぎて、いつものすましたシューラはどこかに行ってしまう。
「ちょっと!今日婚約破棄できたというところで、わたしになんの相談もなく?どうかしてるんじゃないの?冗談じゃないわ!」
怒りのあまり、敬語の存在を忘れたシューラが父を怒鳴りつけた。
生まれから貴族であればそんなことは決してできないだろうが、数年前まで平民だったシューラには、こんな時まで貴族然と済ましていることはできなかった。
「まあまあまあ、怒る気持ちもわかるがな」
マイクスがドレスが入った箱を取り出してテーブルに置き、開けるようにシューラに促す。
怒りながらも、テルド伯爵が贈ってくれたドレスを見る誘惑に負け、箱を開けたシューラは目を瞠った。
「わあ素晴らしいわ」
意匠はシューラが選び、ドレスメーカーが屋敷に仮縫いにも着てくれたが、仕上がりがどうなるかは何故か秘密と言われていたのだ。
「それを着て、テルド伯爵に見せに行こう」
「え?何それ?」
「テルド伯爵から言われているんだよ、伯爵家は子も孫も全員男で、初めて孫にドレスを贈るような気分らしい。ほら支度しろ」
何がなんだかわからないうちに、侍女にドレスアップさせられ、マイクスに馬車に乗せられた。
「楽しみだな!」
テルド伯爵の屋敷は、レインスル男爵家から馬車でニ時間ほどの距離にあった。
その大きさから爵位以上に豊かな一族だとわかる、素晴らしい邸宅である。
馬車を降りると、迎えに出ていた執事に案内されるまま廊下を連れられていく。
「すごいな」
大商会を育て上げ、数多の貴族家に出入りするマイクスでもそうため息をつく、レインスルなど百年経っても到底歯が立たないと感じさせる由緒正しき貴族屋敷は、廊下でさえマイクスを圧倒した。
47
あなたにおすすめの小説
最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜
腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。
「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。
エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。
婚約破棄が破滅への始まりだった~私の本当の幸せって何ですか?~
八重
恋愛
「婚約破棄を言い渡す」
クラリス・マリエット侯爵令嬢は、王太子であるディオン・フォルジュにそう言い渡される。
王太子の隣にはお姫様のようなふんわりと可愛らしい見た目の新しい婚約者の姿が。
正義感を振りかざす彼も、彼に隠れて私を嘲る彼女もまだ知らない。
その婚約破棄によって未来を滅ぼすことを……。
そして、その時に明かされる真実とは──
婚約破棄されたクラリスが幸せを掴むお話です。
妹と再婚約?殿下ありがとうございます!
八つ刻
恋愛
第一王子と侯爵令嬢は婚約を白紙撤回することにした。
第一王子が侯爵令嬢の妹と真実の愛を見つけてしまったからだ。
「彼女のことは私に任せろ」
殿下!言質は取りましたからね!妹を宜しくお願いします!
令嬢は妹を王子に丸投げし、自分は家族と平穏な幸せを手に入れる。
【完結】騙された? 貴方の仰る通りにしただけですが
ユユ
恋愛
10歳の時に婚約した彼は
今 更私に婚約破棄を告げる。
ふ〜ん。
いいわ。破棄ね。
喜んで破棄を受け入れる令嬢は
本来の姿を取り戻す。
* 作り話です。
* 完結済みの作品を一話ずつ掲載します。
* 暇つぶしにどうぞ。
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
婚約破棄した相手が付き纏ってきます。
沙耶
恋愛
「どうして分かってくれないのですか…」
最近婚約者に恋人がいるとよくない噂がたっており、気をつけてほしいと注意したガーネット。しかし婚約者のアベールは
「友人と仲良くするのが何が悪い!
いちいち口うるさいお前とはやっていけない!婚約破棄だ!」
「わかりました」
「え…」
スッと婚約破棄の書類を出してきたガーネット。
アベールは自分が言った手前断れる雰囲気ではなくサインしてしまった。
勢いでガーネットと婚約破棄してしまったアベール。
本当は、愛していたのに…
敵対勢力の私は、悪役令嬢を全力で応援している。
マイネ
恋愛
最近、第一皇子殿下が婚約者の公爵令嬢を蔑ろにして、男爵令嬢と大変親しい仲だとの噂が流れている。
どうやら第一皇子殿下は、婚約者の公爵令嬢を断罪し、男爵令嬢を断罪した令嬢の公爵家に、養子縁組させた上で、男爵令嬢と婚姻しようとしている様だ。
しかし、断罪される公爵令嬢は事態を静観しておりました。
この状況は、1人のご令嬢にとっては、大変望ましくない状況でした。そんなご令嬢のお話です。
婚約破棄、ですか。此方はかまいませんよ、此方は
基本二度寝
恋愛
公国からやってきた公女ニドリアラは、王国の王子アルゼンが男爵令嬢と良い仲になっていると噂を聞いた。
ニドリアラは王国に嫁ぐつもりでやってきたはずなのだが、肝心の王子は他の令嬢にうつつを抜かし、茶会の席にも、夜会の出席もない。
ニドリアラの側にいつも居るのは婚約者の王子ではなく、王家から派遣された護衛の騎士だけだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる