【完結】君を傷つけるつもりはなかったと、浮気者の婚約者が叫んでいます。

やまぐちこはる

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第16話

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「やあやあ、急な誘いであったのによく来てくれたね。おお!シューラ嬢よく似合っている!」
「テルド伯爵様、本日はお招き頂き、ありがとうございます。素晴らしいドレスを贈ってくださいまして、心より感謝致します」
「いやあ、私のような爺さんからじゃ嫌かもしれんとは思ったが、孫を飾ってやりたかった爺の夢を叶えてやったと思ってくだされよ。うちはどこもかしこも男ばかりだからなあ」

 そう言うと、ヨノイ・テルドはニヤッ。

 ─ん?何この笑い─

 シューラがヨノイの視線の先を見ると、派手さはないが整った顔立ちの青年が末席にいた。
気のせいか、顔が赤い。
 その中で透明感のある草色の瞳が印象的だった。

 ─きれいな瞳・・・草色?─

 シューラはふと自分の足元を見た。

 テルド伯爵がプレゼントしてくれたのは、スカートの部分が明るい草色のオーガンジーとライトグリーンのシルクの二枚仕立てのドレスで、歩くたびにオーガンジーが光を透し、涼やかな印象を残す。

 もう一度青年を見た。

「気がついたかい?ふふっ」

 今更だが、悪戯っ子のように嬉しそうに笑うテルド伯爵とボルトン・ノルズはそっくりだった。

「あー、その、なんだ」

 マイクスが切り出す。

「改めて紹介しましょう、我がレインスルの嫡子シューラです」

 ヨノイが鷹揚に頷くと、ボルトン・ノルズが青年を紹介した。

「こちらはノルズ家の次男スタイスと申します」
「シューラ、彼が預り業の責任者を務められるのだ」
「まあ!優秀でいらっしゃるのですね」

 一応褒めてみたシューラに、スタイスはまた頬を赤らめる。

「シューラ嬢、気づいているかもしれないが、このスタイスが新しい婚約者だ」

 ─ああ、やっぱり!─

 父たちのそわそわした雰囲気とスタイスの瞳色のドレスで、シューラもそうではないかと思ったが、見たところ浮ついた様子のないスタイスの第一印象は悪くなかった。


 実にうれしそうにヨノイは秘密を打ち明ける。

「シューラ嬢には私から話したかったのだよ、何しろ孫の嫁さんになるんだからな」

 唐突なヨノイに反応できず、ボー然としたシューラの様子に、ボルトンが話を切り替えてスタイスに庭を案内するよう勧めてやると、ヨノイ以外は皆、ホッとしたような顔を浮かべるのだった。



「ご案内します、こちらにどうぞ」

 スタイスが申し訳無さそうに声をかけてきた。

「いろいろ申し訳ございません。驚かれたでしょう?」
「え、ええ」
「あの。婚約の件も申し訳ございません。私のような平民などご令嬢の婚約者など畏れ多いと思っておりますが、家長の定めた事ゆえ何卒お許し頂けないでしょうか」

「え?」

■□■

いつもお読み頂き、ありがとうございます。
次話で本編完結です。
外伝ズーミーその後編が数話続きます。
強烈なざまぁがお好きな方には物足りないかもしれない、ゆるい話ですが(^_^;)


新作「婚約者は偽物でした!傷物令嬢は自分で商売始めます」も明日から公開です。
こちらもよろしくお願い致します。
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