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呪われたエザリア
ツィカの買い物
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ツィカとワリューンは馬を走らせていた。
目指すミリュースは二つ先の町だが、山を越えて遠回りで行かねばならないため、直線距離をまっすぐ行くより時間がかかる。
勾配がきつくなり、馬をゆっくり歩かせてやると突然目の前が明るく開けた。
「うわぁ」
「眩しいっ!」
ミリュースは海に面し、漁業が盛んだ。
鮮度の良い海産物が取引されている中、魚貝をオイル漬けにして売る店がある。
ツィカたちはその店を目指していた。
「港の端だったと思うんだがな」
きょろきょろしながらも目当ての店を見つけたツィカ。
「あれだ!」
叫ぶように言うと走り出す。
店に飛び込むと店番の老婆はうたた寝をしていた。
気にせずにツィカは魔石で冷やされた棚に近寄ると、籠を手に取り、瓶詰めを選び出した。
「こんなに種類があったか?」
オイル漬けだが、レモン汁やハーブが入ったものもあり、どれもとても美味しそうだ。
ツィカはそれを片っ端から籠に放り込んでいく。
「おいツィカ、それ全部買うつもりか?」
ワリューンは苦笑しているが、ツィカは気にすることもなく。
「これを頼む!」
ドスンと籠が置かれた音で老婆が目を覚ました。
「あ、は、はい」
よほどよく眠っていたらしい。
籠にてんこ盛りの瓶詰めに目を見張った。
「これ全部ですか」
「ダメですか?」
「いえとんでもない!ありがとうございます」
急にシャキッとした老婆は、瓶詰めを割れないように一瓶ごと紙を巻き、代金を暗算していく。
─へえ、さすがこんな小さな店でも商人だけあるな─
ツィカは伸ばしてもまだ背中が曲がったままの老婆を見て、感心していた。
計算を終えた老婆は瓶を布袋に詰め、氷魔石を一つ入れる。
「魔石はサービスです」
ツィカは金を払いながら訊いてみた。
「この瓶詰め、まとめて仕入れたいと言ったらどれ位の単位にしてもらえますか」
「まとめて仕入れ?これを?へえ!おにいさん商人かい?」
「ああ。今、次の商材を探しているんですよ。うちの商会長が気に入ったら、そのへん聞かれると思うんで」
「そうかい!ぜひお願いしたいね。これはすごく日保ちするから売れ残りも心配ないからね。買ってくれるなら、一種類十個一纏めで7掛け、二十個にしてくれたら6掛けでもいいよ」
さり気なく多く買うなら安くしてやってもいいと言っているが、サリバー商会の仕入れは最低でも6掛け以下の交渉が基本だ。
しかし支店全部に置くなら一種二十個では足りないので、まったく問題なくいけそうだとツィカは計算した。
ぬるい視線でツィカを見ていたワリューンも、自分の分を籠に山盛りにして老婆の前に置いた。
「なんだ、おまえも買うんじゃないか!」
「まあな」
馬に括り付けられた鞄に瓶詰めを収納する。
サリバー商会御用達のアイテムバッグで、老婆は一個づつ紙で包んでくれたが、実は瓶が割れる心配は不要だった。
「さあ、ブラス様の元へ急ごう!」
ゆっくり往復しても明日の夕方には余裕で戻れるが、ツィカたちは行けるところまで戻って、なるべく早く合流するつもりだ。
コルクスと同じように、自分たちの働きでブラスとエザリア、男爵家とサリバー商会を守るのだと決めていたから。
目指すミリュースは二つ先の町だが、山を越えて遠回りで行かねばならないため、直線距離をまっすぐ行くより時間がかかる。
勾配がきつくなり、馬をゆっくり歩かせてやると突然目の前が明るく開けた。
「うわぁ」
「眩しいっ!」
ミリュースは海に面し、漁業が盛んだ。
鮮度の良い海産物が取引されている中、魚貝をオイル漬けにして売る店がある。
ツィカたちはその店を目指していた。
「港の端だったと思うんだがな」
きょろきょろしながらも目当ての店を見つけたツィカ。
「あれだ!」
叫ぶように言うと走り出す。
店に飛び込むと店番の老婆はうたた寝をしていた。
気にせずにツィカは魔石で冷やされた棚に近寄ると、籠を手に取り、瓶詰めを選び出した。
「こんなに種類があったか?」
オイル漬けだが、レモン汁やハーブが入ったものもあり、どれもとても美味しそうだ。
ツィカはそれを片っ端から籠に放り込んでいく。
「おいツィカ、それ全部買うつもりか?」
ワリューンは苦笑しているが、ツィカは気にすることもなく。
「これを頼む!」
ドスンと籠が置かれた音で老婆が目を覚ました。
「あ、は、はい」
よほどよく眠っていたらしい。
籠にてんこ盛りの瓶詰めに目を見張った。
「これ全部ですか」
「ダメですか?」
「いえとんでもない!ありがとうございます」
急にシャキッとした老婆は、瓶詰めを割れないように一瓶ごと紙を巻き、代金を暗算していく。
─へえ、さすがこんな小さな店でも商人だけあるな─
ツィカは伸ばしてもまだ背中が曲がったままの老婆を見て、感心していた。
計算を終えた老婆は瓶を布袋に詰め、氷魔石を一つ入れる。
「魔石はサービスです」
ツィカは金を払いながら訊いてみた。
「この瓶詰め、まとめて仕入れたいと言ったらどれ位の単位にしてもらえますか」
「まとめて仕入れ?これを?へえ!おにいさん商人かい?」
「ああ。今、次の商材を探しているんですよ。うちの商会長が気に入ったら、そのへん聞かれると思うんで」
「そうかい!ぜひお願いしたいね。これはすごく日保ちするから売れ残りも心配ないからね。買ってくれるなら、一種類十個一纏めで7掛け、二十個にしてくれたら6掛けでもいいよ」
さり気なく多く買うなら安くしてやってもいいと言っているが、サリバー商会の仕入れは最低でも6掛け以下の交渉が基本だ。
しかし支店全部に置くなら一種二十個では足りないので、まったく問題なくいけそうだとツィカは計算した。
ぬるい視線でツィカを見ていたワリューンも、自分の分を籠に山盛りにして老婆の前に置いた。
「なんだ、おまえも買うんじゃないか!」
「まあな」
馬に括り付けられた鞄に瓶詰めを収納する。
サリバー商会御用達のアイテムバッグで、老婆は一個づつ紙で包んでくれたが、実は瓶が割れる心配は不要だった。
「さあ、ブラス様の元へ急ごう!」
ゆっくり往復しても明日の夕方には余裕で戻れるが、ツィカたちは行けるところまで戻って、なるべく早く合流するつもりだ。
コルクスと同じように、自分たちの働きでブラスとエザリア、男爵家とサリバー商会を守るのだと決めていたから。
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