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呪われたエザリア
罵倒する女
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ジョルが店に向かうと、背中から「にゃっ」と声がかかった。
もう一度「にゃっ」
ジョルが振り向くと、エザリアが前足で文字盤を叩いている。
『あのひと きらい』
これは仕方がない。
猫の姿で我慢を強いられているエザリアに、あの物言いはさぞ腹ただしいだろうとジョルでもわかる。
宥めるようにセインがエザリアの頭を撫でてやると、ピシピシとテーブルを叩いていた尻尾がふわんふわんと動くようになり、ただ撫でられるだけで機嫌が直るエザリアの猫化がますます進んでいるのでは?と、ジョルは不安を感じたのだった。
さて。
茶を飲んで落ち着きを取り戻したセインとエザリアを残し、ジョルはミクスとイーブィ、シュメーンの元へ。
イーブィは剥れており、シュメーンがおろおろと慰めている。
反省など微塵も見られない様子にジョルは告げた。
「キズリ、君は魔導師団に戻りたまえ」
「ええ、言われなくても帰るわよ!何なのあいつら、人を騙してふざけるなっっていうのよ!隊長直々に警護の仕事を下されたっていうのに、なんなのよ」
ジョルは既にイーブィに興味がなくなっているが。
「イゾルもそう考えているのか?」
「え?あー、いや、どうなっているのかまだ事情を聞いていないから判断がつかなくて」
よかったとジョルは青年魔導師の肩をポンポンと叩き、座らせる。
イーブィにはわざと椅子を勧めなかった。
「ではその事情を話そう。まあここに来る前に、団長とチューグ・ジュラール魔導団長によく聞いておくべきだったがな」
嫌味を言ったあと、眉尻を上げてふたりを見るもイーブィは相変わらず剥れている。
対してシュメーンとミクスはちんまりと足を揃えて座り、畏まった様子だ。
「まずさっきそこの魔導師が罵倒した白猫は、本当にサリバー男爵家のエザリア嬢が呪いをかけられ、姿を変えたものだ」
「「ハッ?」」
「信じられないだろうな。私も信じられるようになるまで時間がかかった。ちなみに騎士団長イグルス・ベイトリールも猫のエザリア嬢に会って話をし、彼女が本当に姿を変えられた男爵令嬢だと認めている」
「うそ?騎士団長まで?皆あったまおかしいわ!騙されてるのに気づかないなんて」
「あったまおかしいのは君の方だ。これだけ言ってもまだそんなことを言うとはな。
騎士団長がなんの証拠もなく認めたと思うのか?」
「いや、イグルス様は現実的な方だ。余程納得いく証拠がなければ、絶対に認めんぞ」
青褪めたミクスが呟く。
「ハア・・・。騎士団ってトップからバカばかりなのね」
「おいおまえ!人が下でに出ていれば。騎士団は魔導師団に正式に抗議する。覚えておけよ」
「覚えておくのはそっちのほうよ!証拠?猫がなんの証拠を見せられるっていうのよ。アレが喋れるの?ニャアしか言えないじゃない」
イーブィはエザリアを傷つけ続ける。
「ふん。エザリア嬢は猫の姿をしているだけだ、頭まで猫になったわけじゃない。あの白猫は文字盤を指して会話ができる。訊けば何でも答えることができるんだぞ!
騎士団をバカだというなら、赤髪の魔女を都市伝説と言って笑い、恐ろしいほどの危険がまったく認識できない方が愚かじゃないか」
怒りに任せ、怒鳴りつけたジョルに、イーブィは「バッカじゃないの!やってられないわっ」と罵ると、店の扉を開けて出ていってしまった。
バタン!とものすごく大きな音を立て、乱暴にドアを叩きつけて。
「んっだよ!あの女!魔導師団長にこてんぱんにされやがれってんだっ!」
ジョルも捨て台詞を忘れない。
「おい、おまえたちも疑ってるんだろ?」
「あ、いや・・・」
「いいんだよ。団長だって最初は俺の頭がおかしくなったくらいに言ってたからな。もう一度エザリア嬢に会わせるから、おまえらが自分の目で確認しろ」
■□■
いつもありがとうございます。
週末だけ4回更新していますが、余力がありましたので、本日4/14~4/17の間は一日4回更新します。
というわけで、今日はこのあと21時も更新がありますので、よろしくお願いいたします(ΦωΦ)
もう一度「にゃっ」
ジョルが振り向くと、エザリアが前足で文字盤を叩いている。
『あのひと きらい』
これは仕方がない。
猫の姿で我慢を強いられているエザリアに、あの物言いはさぞ腹ただしいだろうとジョルでもわかる。
宥めるようにセインがエザリアの頭を撫でてやると、ピシピシとテーブルを叩いていた尻尾がふわんふわんと動くようになり、ただ撫でられるだけで機嫌が直るエザリアの猫化がますます進んでいるのでは?と、ジョルは不安を感じたのだった。
さて。
茶を飲んで落ち着きを取り戻したセインとエザリアを残し、ジョルはミクスとイーブィ、シュメーンの元へ。
イーブィは剥れており、シュメーンがおろおろと慰めている。
反省など微塵も見られない様子にジョルは告げた。
「キズリ、君は魔導師団に戻りたまえ」
「ええ、言われなくても帰るわよ!何なのあいつら、人を騙してふざけるなっっていうのよ!隊長直々に警護の仕事を下されたっていうのに、なんなのよ」
ジョルは既にイーブィに興味がなくなっているが。
「イゾルもそう考えているのか?」
「え?あー、いや、どうなっているのかまだ事情を聞いていないから判断がつかなくて」
よかったとジョルは青年魔導師の肩をポンポンと叩き、座らせる。
イーブィにはわざと椅子を勧めなかった。
「ではその事情を話そう。まあここに来る前に、団長とチューグ・ジュラール魔導団長によく聞いておくべきだったがな」
嫌味を言ったあと、眉尻を上げてふたりを見るもイーブィは相変わらず剥れている。
対してシュメーンとミクスはちんまりと足を揃えて座り、畏まった様子だ。
「まずさっきそこの魔導師が罵倒した白猫は、本当にサリバー男爵家のエザリア嬢が呪いをかけられ、姿を変えたものだ」
「「ハッ?」」
「信じられないだろうな。私も信じられるようになるまで時間がかかった。ちなみに騎士団長イグルス・ベイトリールも猫のエザリア嬢に会って話をし、彼女が本当に姿を変えられた男爵令嬢だと認めている」
「うそ?騎士団長まで?皆あったまおかしいわ!騙されてるのに気づかないなんて」
「あったまおかしいのは君の方だ。これだけ言ってもまだそんなことを言うとはな。
騎士団長がなんの証拠もなく認めたと思うのか?」
「いや、イグルス様は現実的な方だ。余程納得いく証拠がなければ、絶対に認めんぞ」
青褪めたミクスが呟く。
「ハア・・・。騎士団ってトップからバカばかりなのね」
「おいおまえ!人が下でに出ていれば。騎士団は魔導師団に正式に抗議する。覚えておけよ」
「覚えておくのはそっちのほうよ!証拠?猫がなんの証拠を見せられるっていうのよ。アレが喋れるの?ニャアしか言えないじゃない」
イーブィはエザリアを傷つけ続ける。
「ふん。エザリア嬢は猫の姿をしているだけだ、頭まで猫になったわけじゃない。あの白猫は文字盤を指して会話ができる。訊けば何でも答えることができるんだぞ!
騎士団をバカだというなら、赤髪の魔女を都市伝説と言って笑い、恐ろしいほどの危険がまったく認識できない方が愚かじゃないか」
怒りに任せ、怒鳴りつけたジョルに、イーブィは「バッカじゃないの!やってられないわっ」と罵ると、店の扉を開けて出ていってしまった。
バタン!とものすごく大きな音を立て、乱暴にドアを叩きつけて。
「んっだよ!あの女!魔導師団長にこてんぱんにされやがれってんだっ!」
ジョルも捨て台詞を忘れない。
「おい、おまえたちも疑ってるんだろ?」
「あ、いや・・・」
「いいんだよ。団長だって最初は俺の頭がおかしくなったくらいに言ってたからな。もう一度エザリア嬢に会わせるから、おまえらが自分の目で確認しろ」
■□■
いつもありがとうございます。
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