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恋は迷路の中
サリバー家のパーティー 1
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ブラス主催の、エザリア救出感謝の会と銘打たれたパーティ当日。
「今日はいつものパーティとは違い、めちゃくちゃ飲み食いするに違いない。酒と料理はいつもの四倍くらいおかわり用意しておけよ。絶対に品切れなんてダメだ。トンプソン、差配を頼んだぞ」
家令に念入りに確認する。
勿論使用人たちも一致団結、エザリアを守り助けてくれた騎士や魔術師たちに精一杯の感謝の気持を込めて饗すつもりだ。
「四倍ってすごい量ですね」
手伝いのために早く来ていたモイトスが笑うと、
「それでも足りないかも知れないぞ」
真剣な顔でブラスが答えた。
土産に持たせるアミュレットペンダントの種類と数を確認する。
勿論土産はペンダントだけではない。サリバー商会の人気商品をぎっちぎちに詰め込んだ袋も用意していた。
エザリアがトラベルセットと呼ぶ、石鹸や肌触り最高のタオルの他、遠征が多い騎士や魔導師に役立ちそうな、風呂に入れないときに使うさっぱりするのにつっぱらない拭き取り水。
香り抑えめのフレグランスなど、一度手にしたらまた買いたくなるような物ばかり。
比較的裕福な暮らしをする者が多い騎士団、魔術師団のリピーターを見込んで、エザリアとブラスが選んだ土産が山と積まれていた。
「ようこそいらっしゃいました」
メイドたちの揃った声が聴こえてくる。
ブラスがエントランスに行くと、まず騎士団の面々が入って来た。
先頭はイグルスとジョル。その後から数十名の騎士たちがぞろぞろと続いている。
全員騎士服でビシっと決めており、メイドたちから感嘆の声が漏れた。
次にあらわれたのはチューグ率いる魔導師団。長いローブをはためかせるように歩いている。勿論ミヌークスもきょろきょろしながら集団に紛れていた。
中に執事のような黒ずくめのスーツを着た者が交じっているが、エザリアの捜索に当たったなら、それが例え調べ物であっても参加する権利がある。
文官を装いスーツで現れたのは、チューグに誘われたセメンティス以下、王家の影たちだ。勿論全員ではないが、偶々時間を空けられた者のみ数名が混じり込んでいた。
彼らは居心地が悪そうに落ち着きなく視線を彷徨わせているが、それも当然。本来表舞台に顔を出すことのない存在である。
所在なさげな黒服たちが広間に吸い込まれたあと、漸くスミルに連れられたセインが現れた。魔法医薬師を示すローブを羽織って。
「あっ!セイン見ろよ、エザリア様だ!」
スミルが指差す方を見ると、金髪を靡かせた美しいが勝ち気そうな令嬢が壇上に現れた。
「・・・・・・・」
「セイン、どうした?」
黙り込むセイン。
猫姿からは想像できないほど美しいエザリアが眩しく、どこか悲しくもあった。
スミルに覗き込まれ、まるで息も絶え絶えというように声を絞り出す。
「ん・・・。美人だ・・な」
「うむ!」と頷いたスミルが声を顰めた。
「だが騙されるなよ、怒ると鬼に変わる」
「ふっ」
スミルの冗談に思わず吹き出したセインは、白猫と同じ美しい水色のエザリアの瞳を見つめていた。
ふとエザリアが広間を見回す。
視線を感じた気がしたのだ。
ぐるりと顔を動かして、ぴたりと止まった先には、スミルとセインがいた!
「ちょっと失礼いたしますわ」
話をしていた父と文官を装ったセメンティスに告げ、満面の笑顔でセインに駆け寄る。
「セイン!来てくれたのね」
初めて聴くエザリアの声は、やわらかな日差しのようにセインに響いた。
「あ、あの、こ、こんに、ちは、エザリア・・さ・・サリバー令嬢」
白猫とのギャップが受け止めきれず、口籠りながらなんとか挨拶をしたセインだったが。
「ちょっとセイン!何故私をサリバー令嬢なんて呼ぶのよ!いつもみたいにエザリアと呼べばいいじゃない」
ぷぅっと赤く染まった頬が膨らむエザリアを見て、スミルが目をひん剥く。
(な、なんだよこの乙女ぶり!エザリア様ってもしかしてセインのこと?)
誰よりも早く、エザリアの気持ちに気づいてしまうスミルである。
「いや、そんな、貴族のご令嬢をそんな風には、よ、呼べませ」
「前はエザリアって呼んでたじやない!」
「そ、そうなんだけど」
エザリアに詰め寄られて、たじたじと言葉を返すセインは、白猫であっても貴族だったんだから様付けすればよかったと、遅すぎた後悔に苛まれている。
「ほらいいから、エザリアって呼んで」
「いや、あの、それはちょっと」
「ほおら!ほら!」
「え、エザリア・・・さま」
声が尻窄むセインを、面白そうにエザリアが睨む。
「サマはいらないの」
「いや、それはさすがにむ、むり」
ふたりのやりとりをスミルは半ば呆れながら見ていた。
熱量はエザリア99対セイン1くらいだろうか。いや100対0だと思い直して、気の毒そうにエザリアを見る。
(エザリア様の片思いってところだな)
スミルだけが冷静であった。
「今日はいつものパーティとは違い、めちゃくちゃ飲み食いするに違いない。酒と料理はいつもの四倍くらいおかわり用意しておけよ。絶対に品切れなんてダメだ。トンプソン、差配を頼んだぞ」
家令に念入りに確認する。
勿論使用人たちも一致団結、エザリアを守り助けてくれた騎士や魔術師たちに精一杯の感謝の気持を込めて饗すつもりだ。
「四倍ってすごい量ですね」
手伝いのために早く来ていたモイトスが笑うと、
「それでも足りないかも知れないぞ」
真剣な顔でブラスが答えた。
土産に持たせるアミュレットペンダントの種類と数を確認する。
勿論土産はペンダントだけではない。サリバー商会の人気商品をぎっちぎちに詰め込んだ袋も用意していた。
エザリアがトラベルセットと呼ぶ、石鹸や肌触り最高のタオルの他、遠征が多い騎士や魔導師に役立ちそうな、風呂に入れないときに使うさっぱりするのにつっぱらない拭き取り水。
香り抑えめのフレグランスなど、一度手にしたらまた買いたくなるような物ばかり。
比較的裕福な暮らしをする者が多い騎士団、魔術師団のリピーターを見込んで、エザリアとブラスが選んだ土産が山と積まれていた。
「ようこそいらっしゃいました」
メイドたちの揃った声が聴こえてくる。
ブラスがエントランスに行くと、まず騎士団の面々が入って来た。
先頭はイグルスとジョル。その後から数十名の騎士たちがぞろぞろと続いている。
全員騎士服でビシっと決めており、メイドたちから感嘆の声が漏れた。
次にあらわれたのはチューグ率いる魔導師団。長いローブをはためかせるように歩いている。勿論ミヌークスもきょろきょろしながら集団に紛れていた。
中に執事のような黒ずくめのスーツを着た者が交じっているが、エザリアの捜索に当たったなら、それが例え調べ物であっても参加する権利がある。
文官を装いスーツで現れたのは、チューグに誘われたセメンティス以下、王家の影たちだ。勿論全員ではないが、偶々時間を空けられた者のみ数名が混じり込んでいた。
彼らは居心地が悪そうに落ち着きなく視線を彷徨わせているが、それも当然。本来表舞台に顔を出すことのない存在である。
所在なさげな黒服たちが広間に吸い込まれたあと、漸くスミルに連れられたセインが現れた。魔法医薬師を示すローブを羽織って。
「あっ!セイン見ろよ、エザリア様だ!」
スミルが指差す方を見ると、金髪を靡かせた美しいが勝ち気そうな令嬢が壇上に現れた。
「・・・・・・・」
「セイン、どうした?」
黙り込むセイン。
猫姿からは想像できないほど美しいエザリアが眩しく、どこか悲しくもあった。
スミルに覗き込まれ、まるで息も絶え絶えというように声を絞り出す。
「ん・・・。美人だ・・な」
「うむ!」と頷いたスミルが声を顰めた。
「だが騙されるなよ、怒ると鬼に変わる」
「ふっ」
スミルの冗談に思わず吹き出したセインは、白猫と同じ美しい水色のエザリアの瞳を見つめていた。
ふとエザリアが広間を見回す。
視線を感じた気がしたのだ。
ぐるりと顔を動かして、ぴたりと止まった先には、スミルとセインがいた!
「ちょっと失礼いたしますわ」
話をしていた父と文官を装ったセメンティスに告げ、満面の笑顔でセインに駆け寄る。
「セイン!来てくれたのね」
初めて聴くエザリアの声は、やわらかな日差しのようにセインに響いた。
「あ、あの、こ、こんに、ちは、エザリア・・さ・・サリバー令嬢」
白猫とのギャップが受け止めきれず、口籠りながらなんとか挨拶をしたセインだったが。
「ちょっとセイン!何故私をサリバー令嬢なんて呼ぶのよ!いつもみたいにエザリアと呼べばいいじゃない」
ぷぅっと赤く染まった頬が膨らむエザリアを見て、スミルが目をひん剥く。
(な、なんだよこの乙女ぶり!エザリア様ってもしかしてセインのこと?)
誰よりも早く、エザリアの気持ちに気づいてしまうスミルである。
「いや、そんな、貴族のご令嬢をそんな風には、よ、呼べませ」
「前はエザリアって呼んでたじやない!」
「そ、そうなんだけど」
エザリアに詰め寄られて、たじたじと言葉を返すセインは、白猫であっても貴族だったんだから様付けすればよかったと、遅すぎた後悔に苛まれている。
「ほらいいから、エザリアって呼んで」
「いや、あの、それはちょっと」
「ほおら!ほら!」
「え、エザリア・・・さま」
声が尻窄むセインを、面白そうにエザリアが睨む。
「サマはいらないの」
「いや、それはさすがにむ、むり」
ふたりのやりとりをスミルは半ば呆れながら見ていた。
熱量はエザリア99対セイン1くらいだろうか。いや100対0だと思い直して、気の毒そうにエザリアを見る。
(エザリア様の片思いってところだな)
スミルだけが冷静であった。
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