【完結】時戻り令嬢は復讐する

やまぐちこはる

文字の大きさ
24 / 80
第1章

第24話 ナイジェルスとサルジャン

しおりを挟む
 ニイズと無事に合流したナイジェルスは、森深くに隠されたソイスト侯爵家の別邸に匿われた。
遅れて着いてきた侍従や彼らが乗ってきた馬たちも欠けることなく回収されて。
早速話をしようと意気込んだサルジャンに、ナイジェルスが
手を合わせて頼み込んだ。

「頼むジャン!まずは湯浴みを、湯をかぶるだけでもいいからさせてくれ」





「ああ、やっと一息つけたよサルジャン」

 数日ぶりの湯浴みを終え、さっぱりした顔のナイジェルスに、サルジャンはいくつかわかっている事実を告げることにした。

「実はトリーも襲われました」
「なにっ!トリーは無事なのか?」
「はい、未然に防ぐことができましたので」
「よかったっ!トリーにもしものことがあったらと思ったら心臓が止まるかと思った」

 ナイジェルスが落ち着かせるようにとんとんと、自分の胸を叩いている。

「言葉が足りず、申し訳ございません」
「いや、トリーが無事ということさえわかればいいんだ。それで犯人はわかっているのか?」


 避けることはできない、当たり前の、しかしとても答え難い質問を投げかけられ、サルジャンは息を呑んだ。


「はい・・・。トリーに毒を盛ったのは」
「毒っ?無事だと言ったが、飲んではいないのか」
「はい、賊はトリーが寝ていると思って水差しに毒を仕込んだのですが、当のトリーはまだ寝ておらず、侵入者に気づいて寝たふりを装い、現場を見ていたのです。故にほんの一滴も口にはしておりません」
「なんと!運がよかった。例え解毒ができても後遺症が残ることがあるからな。しかし寝たふりか・・・刃物などで襲われなくてよかったよ。ではトリーがその犯人を見たのか?」

 こくんと、サルジャンが頷いて。

「実行犯を目撃しましたので、その者に指示をした者も調査の上確認済です」
「私の知る者か?」

 躊躇いがちに、またこくんとサルジャンが頷く。

「・・・」

 王子にミイヤの名を出したら、ミイヤにはもう助かる術はない。
 親を亡くしたばかりの七歳のミイヤが、リラに手を引かれて屋敷に連れられてきた時のことを思い出して、ほんの一瞬サルジャンはぼんやりとした。

「ジャン?」

 ナイジェルスに愛称を呼ばれて、サルジャンは意識が散漫だったことに気がつく。

「も、申し訳こざいません」
「いや。屋敷の中の者なのか?」
「・・・はい。・・・・ミイヤです」
「なにっ?ミイヤ嬢だと?何かの間違いではないのか?ちゃんと調べたのか?」
「はい、もちろんでございます。残念ながらトリーに関してはミイヤで間違いございません」

 ナイジェルスは自身の額に手を当て、何故なんだと呻いている。

「ミイヤが使った毒がこの国では入手しずらい非常に珍しいものだと判明致しまして、それをミイヤが入手することは至難。黒幕は別にいると見て探っております」
「なあジャン、本当に本当にトリーは大丈夫なのか?」

 珍しい毒と聞くと王子はまた不安になる。

「そこは大丈夫です、ほんの少しも飲んでいません。それに今トリーにはソイスト暗部の護衛をつけて、全方向から警護させていますからご安心ください。それより殿下は大丈夫だったのですか」
「ああ。まあ際どかったが。虫の知らせでもあったのか、兄上が出発直前に護衛を増やしてくれていたのだよ、お陰で全員返り討ちにしてやることができた」

 はははと笑ったナイジェルスは、久しぶりに熱く美味い茶を口にした。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

魔法のせいだから許して?

ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。 どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。 ──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。 しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり…… 魔法のせいなら許せる? 基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。

さようなら、私の愛したあなた。

希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。 ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。 「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」 ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。 ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。 「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」 凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。 なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。 「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」 こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。

真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください

LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。 伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。 真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。 (他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…) (1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

婚約破棄されました。

まるねこ
恋愛
私、ルナ・ブラウン。歳は本日14歳となったところですわ。家族は父ラスク・ブラウン公爵と母オリヴィエ、そして3つ上の兄、アーロの4人家族。 本日、私の14歳の誕生日のお祝いと、婚約者のお披露目会を兼ねたパーティーの場でそれは起こりました。 ド定番的な婚約破棄からの恋愛物です。 習作なので短めの話となります。 恋愛大賞に応募してみました。内容は変わっていませんが、少し文を整えています。 ふんわり設定で気軽に読んでいただければ幸いです。 Copyright©︎2020-まるねこ

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

【完結】もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜

あまぞらりゅう
恋愛
キアラ・リグリーア伯爵令嬢は、同じ人生を繰り返していた。 彼女の最期はいつも処刑台の上。 それは婚約者のダミアーノ・ヴィッツィオ公爵令息の陰謀だった。 死んだら、また過去に戻ってくる。 その度に彼女は婚約者のことを激しく憎んで、もう愛さないと強く胸に誓っていた。 でも、何度回帰しても彼女は彼を愛してしまって、最後は必ず破滅を迎えてしまう。 キアラはもうダミアーノを愛したくなかったし、愛なんてものは信じていなかった。 ――そして七回目の人生で、彼女は真実を知る。 ★元サヤではありません!(ヒーローは別にいます!) ★不快になるような残酷な描写があります! ★他サイト様にも投稿しています!

処理中です...