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第1章
第27話 ミイヤと護衛騎士
ソイスト侯爵家で長女ユートリーが倒れてから四日。
漸く歩けるようになったリラ夫人が、ミイヤを伴い見舞いに訪れたが。
「奥様しかお入りいただけません」
「なぜ?」
リラの眉尻が上がり、護衛に詰め寄る。
「マベル医師が、感染する病かもしれないからとおっしゃいまして、お若い女性のミイヤお嬢様は念のためにと伺っております」
「感染?しないわよ、するわけないじゃない!あっ、ほらタラは問題ないじゃない!」
病などではないと知るミイヤはムキになって強い口調になったが。
「タラはそれが専属侍女の努めだと申しまして、決死の覚悟をしております。もしお嬢様から病を貰われても本望だと述べたそうでございますから。それにサルジャン様の面会も禁止されております。とにかく医師の指示をお守りくださいとしか私からは申し上げられません」
もちろん事情を知っている護衛騎士は、きっぱりと断った。
不快な顔をしていたリラだが、そう言われたら仕方ない。
「ミイヤ、止めなさい。マベル様はお医者様なのですから、私たちは彼の言うことを聞くべきです。では私だけ、ミイヤは部屋に戻っていなさいな」
「そんな!」
リラに言われては、引くしかない。ミイヤはユートリーがどれほど弱っているのかを一目見たかったのにと、俯いて悔しそうな顔をした。
─死の間際に立つお姉様の青白い顔を見たかったのに─
しかし、護衛騎士は扉を開けるとリラだけを素早く通し、ミイヤが部屋を覗くことすら許さなかった。
「ちっ」
その舌打ちは護衛騎士の耳にも入り、思わず目を瞠る。
─マーカス様から聞いた時はまさかと思ったが、真実だったか─
リラが部屋から出てくるまでの時間、そして出てくる瞬間に扉が開く僅かな時間でも、絶対ミイヤに覗かせまいと護衛騎士は胸を張った。
ものの数分。
カチャっという音とともに、涙を拭きながらリラが出てくる。ミイヤはなんとか覗こうとしたが、またも護衛騎士はそれを許さず、さらに泣き崩れたリラに抱きつかれてそれを支えねばならなくなったミイヤは、わかりやすく顔を歪めた。
─なんという顔をするのだ、まったく今のその顔を鏡で見せてやりたいものだな─
そのことがマーカスに報告された時、騎士の怒りの大きさにマーカスの方が驚かされたほど。
「命に変えてもユートリー様をお守りいたします」
決意を新たにしたように宣言し、カチッと音がなるほど強く踵を合わせて敬礼した騎士は、まるで使命感に燃え立つ炎を背負っているかのように肩を怒らせて、ユートリーの部屋へ戻って行った。
マーカスは本当のことを知らずに胸を痛める妻を思い、家族を裏切るどころか害そうとまでするミイヤに憤りながら、護衛騎士の背中に願いをかける。
「頼むな、トリーをミイヤたちから守ってやってくれ」
漸く歩けるようになったリラ夫人が、ミイヤを伴い見舞いに訪れたが。
「奥様しかお入りいただけません」
「なぜ?」
リラの眉尻が上がり、護衛に詰め寄る。
「マベル医師が、感染する病かもしれないからとおっしゃいまして、お若い女性のミイヤお嬢様は念のためにと伺っております」
「感染?しないわよ、するわけないじゃない!あっ、ほらタラは問題ないじゃない!」
病などではないと知るミイヤはムキになって強い口調になったが。
「タラはそれが専属侍女の努めだと申しまして、決死の覚悟をしております。もしお嬢様から病を貰われても本望だと述べたそうでございますから。それにサルジャン様の面会も禁止されております。とにかく医師の指示をお守りくださいとしか私からは申し上げられません」
もちろん事情を知っている護衛騎士は、きっぱりと断った。
不快な顔をしていたリラだが、そう言われたら仕方ない。
「ミイヤ、止めなさい。マベル様はお医者様なのですから、私たちは彼の言うことを聞くべきです。では私だけ、ミイヤは部屋に戻っていなさいな」
「そんな!」
リラに言われては、引くしかない。ミイヤはユートリーがどれほど弱っているのかを一目見たかったのにと、俯いて悔しそうな顔をした。
─死の間際に立つお姉様の青白い顔を見たかったのに─
しかし、護衛騎士は扉を開けるとリラだけを素早く通し、ミイヤが部屋を覗くことすら許さなかった。
「ちっ」
その舌打ちは護衛騎士の耳にも入り、思わず目を瞠る。
─マーカス様から聞いた時はまさかと思ったが、真実だったか─
リラが部屋から出てくるまでの時間、そして出てくる瞬間に扉が開く僅かな時間でも、絶対ミイヤに覗かせまいと護衛騎士は胸を張った。
ものの数分。
カチャっという音とともに、涙を拭きながらリラが出てくる。ミイヤはなんとか覗こうとしたが、またも護衛騎士はそれを許さず、さらに泣き崩れたリラに抱きつかれてそれを支えねばならなくなったミイヤは、わかりやすく顔を歪めた。
─なんという顔をするのだ、まったく今のその顔を鏡で見せてやりたいものだな─
そのことがマーカスに報告された時、騎士の怒りの大きさにマーカスの方が驚かされたほど。
「命に変えてもユートリー様をお守りいたします」
決意を新たにしたように宣言し、カチッと音がなるほど強く踵を合わせて敬礼した騎士は、まるで使命感に燃え立つ炎を背負っているかのように肩を怒らせて、ユートリーの部屋へ戻って行った。
マーカスは本当のことを知らずに胸を痛める妻を思い、家族を裏切るどころか害そうとまでするミイヤに憤りながら、護衛騎士の背中に願いをかける。
「頼むな、トリーをミイヤたちから守ってやってくれ」
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