【完結】時戻り令嬢は復讐する

やまぐちこはる

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第1章

第35話 侯爵夫人は怒り心頭

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 納得がいかないリラを引いて、マーカスがユートリーの部屋の前に立つと、護衛騎士が扉を開けた。

 室内を見たリラは呆然と立ち尽くす。

「う、うそ!トリー!」

 ダダッと駆け寄って、立ち上がって手を振るユートリーを力いっぱい抱きしめる。

「マーカス!トリーが、トリーが治ったわ」

 泣きながら笑うリラに、ユートリーは感激して抱きしめ返している。

「父上、早く母上に本当のことを!時間がありませんよ」

 母娘の感激など気にもせずに、サルジャンが冷静な一言をかけた。

「う、うむ。リラよ聞いてくれ」
「ええ、ええ。何でも聞きますわ!ユートリーが治ったのですもの」
「違うんだよ、リラ」
「違わないわ、ほら」

 ユートリーをくるりと回して、にっこりと笑う。

「いや・・・私の話を落ち着いて聞いてくれ。実はトリーは最初から病気ではなかった」
「・・・・・え?」

 さすがにリラはポカンとした。

「実はな、トリーは最初から病気でもなんでもなかった。具合が悪いふりをしていたんだ」
「え?何言ってるのマーカス、ふり?」
「ああそうだ」

 リラはぶるぶると震え始めた。

「何を言っているの?言っていることの意味わかっているの?」
「えあ、もちろん。トリーは最初から病などではなかったんだ。騙してすまなかった」
「だっ、騙したですって!」

 いつも穏やかなリラの目がつり上がっていく。

「お母様!お母様お願い、お父様の話を聞いてください。大切なことなのです、遊びや冗談などではないから」

 ユートリーがリラに縋り付いて説得すると、リラは少しだけ、耳を向けてくれた。

「事の発端はナイジェルス殿下が襲われたことだと思われる。実はそれをトリーに話した日の夜、トリーの部屋に賊が忍び込んだ」
「え?本当なのっ?」

 驚愕の表情を見せたリラに、夫と子どもたちは揃って頷いた。

「ど、どうして私に教えてくれなかったの?」
「それは・・・犯人が屋敷の者だったから。知ったら隠しておけないだろう、リラはすぐ顔に出てしまう」

 マーカスに言われてそんなことはないと言おうとしたのだが、家族の視線はそうだよな!と問いかけており、反論しようとした言葉は口の中に消えてしまった。

「ねえ、本当にユートリーは無事だったのよね?」
「はいお母様」
「ああもう、どういうことなのよ」
「あの日私は疲れて横になり、灯りを消した部屋でナイジェルス様の無事を祈り続けていました。すると夜中に誰かが部屋に入って来て、私の水差しに何か入れたのです。その者が部屋から出てから、水差しの水を花瓶に入れ替えて翌朝お兄様に相談しました」

 名を呼ばれたサルジャンが、ユートリーに代わって話し出す。

「トリーの話を聞いてすぐ父上と相談し、護衛をつけてからその成分を調べさせました。結果がわかったのでうちの侍医を変え、マベル様に協力を願ったのです」
「まあ!マベル様も共犯だったの?」
「お母様ったらそんな人聞きの悪いこと、仰らないでください」

 ユートリーに注意をされたリラだが、部屋の端にちんまり座っていたマベルは頭を掻いた。

「鑑定の結果、その毒は飲んでからしばらく経つと体が動かなくなる、残酷な毒と呼ばれる物でした。瞼も動かせず、指先をぴくりともさせられなくなる、でも息が止まるまで意識はある」
「そんな・・・」

 リラは今度は恐怖からぶるぶると震えている。

「トリー本当にそれ飲まなかったのよね」

 ユートリーは母を安心させるように、ゆっくりと大きく頷いてみせた。
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