34 / 80
第1章
第34話 決行の日
しおりを挟む
その朝、浅い眠りだったせいか、マーカスはいつになく早い時間に目が覚め、隣に眠るリラをぼんやりと見つめていた。
ユートリーの蝋人形ほどではないが、リラも酷くやつれて目の下にクマが出ている。
本当のことを話したらどれほど怒るだろうと不安もあるが、ユートリーを守るためには仕方がなかったときっとわかってくれる。そうすべてうまく行くと信じて、ベッドから起き出すと窓辺で神に祈りを捧げた。
マーカスとは違い、サルジャンはやるべきことはやったと心配せずによく眠った。
目覚めもすっきり、気力は満ち溢れていて、きっと上手くいくと自信を持つことができた。
ミイヤが出かけたらすぐ、屋敷に残ったミイヤの侍女たちも使いに出す。茶会からミイヤが帰るまで何かを気取られて、連絡などされては困るから。
そこは侍女長と相談済だ。
─大丈夫、上手くいくから心配するなよ。やりきるんだサルジャン!─
次期侯爵は、絶対に失敗できない重大な任務に自分を鼓舞していた。
その日ミイヤはいつになく丁寧に髪を巻いてもらった。
今日は「あと少しですべてうまくいく」と、トローザー殿下に話す日なのだ。
─きっとすごく喜んでくださるわ!姉様、いえユートリーが死ねば、いよいよ私は王子の婚約者!─
意気揚々と馬車に乗り込む姿をサルジャンはその目で確かめた。
「よしっ、行ったな」
あとは侍女長がミイヤについている侍女とメイドを使いに出せば。
「では頼みますよ。あ、そうだわ。ミイヤ様もお出かけされていることだし、いつも頑張ってくれているから夜までに帰ってくればいいわ。ミイヤ様のお帰りも遅いそうだし。でも他の者たちには秘密よ」
そう言って侍女長が侍女とメイドを裏口から送り出している。
「ルイーサ、手筈はどうだ?」
「サルジャン様もう大丈夫ですわ。日暮れまでは戻りません」
「よし、では母上をトリーの部屋へお連れしてくれ」
いつもは屋敷の中を走るなんてとんでもないと口うるさい侍女長ルイーサが、スカートを摘んで走り出し、リラの部屋の扉をノックした。
「リラ様、よろしいでしょうか!至急ご対応頂きたいことがございます」
「どうぞ」と返事が聞こえると、部屋に飛び込む。
「ルイーサ、どうしたの?そんなに慌てて、まさかユートリーに何か?」
「ユートリー様は大丈夫ですがリラ様、本当に時間がないのです、お急ぎ下さいまし」
不審げなリラを座り心地の良いソファから引きずり出すようにして着替をさせ、髪を手早くまとめて薄く化粧を施すと手を引くように廊下に出す。
「ねえ、ルイーサってばどうしたの!」
「いいから私を信じてついてきてください!時間がないのですよリラ様」
ずんずんと先を歩くルイーサに仕方なくついていくと、途中、マーカスの執務室に寄ってユートリーの部屋へと誘った。
「おお、リラ!今行く」
「貴方、一体どうなっているの!ねえトリーに何か」
「詳しいことはトリーの部屋で話すから、今は急ごう」
マーカスまで急げ急げとリラを追い立てる。
「ねえっ!トリーは本当に大丈夫なの?」
パニックを起こしたリラが立ち止まって叫ぶと、マーカスも足を止めた。
「トリーは本当に無事だ、会えばわかる。しかし時間がないのも本当だ。重大なことが起きているんだよ、頼むから急いでくれ」
ユートリーの蝋人形ほどではないが、リラも酷くやつれて目の下にクマが出ている。
本当のことを話したらどれほど怒るだろうと不安もあるが、ユートリーを守るためには仕方がなかったときっとわかってくれる。そうすべてうまく行くと信じて、ベッドから起き出すと窓辺で神に祈りを捧げた。
マーカスとは違い、サルジャンはやるべきことはやったと心配せずによく眠った。
目覚めもすっきり、気力は満ち溢れていて、きっと上手くいくと自信を持つことができた。
ミイヤが出かけたらすぐ、屋敷に残ったミイヤの侍女たちも使いに出す。茶会からミイヤが帰るまで何かを気取られて、連絡などされては困るから。
そこは侍女長と相談済だ。
─大丈夫、上手くいくから心配するなよ。やりきるんだサルジャン!─
次期侯爵は、絶対に失敗できない重大な任務に自分を鼓舞していた。
その日ミイヤはいつになく丁寧に髪を巻いてもらった。
今日は「あと少しですべてうまくいく」と、トローザー殿下に話す日なのだ。
─きっとすごく喜んでくださるわ!姉様、いえユートリーが死ねば、いよいよ私は王子の婚約者!─
意気揚々と馬車に乗り込む姿をサルジャンはその目で確かめた。
「よしっ、行ったな」
あとは侍女長がミイヤについている侍女とメイドを使いに出せば。
「では頼みますよ。あ、そうだわ。ミイヤ様もお出かけされていることだし、いつも頑張ってくれているから夜までに帰ってくればいいわ。ミイヤ様のお帰りも遅いそうだし。でも他の者たちには秘密よ」
そう言って侍女長が侍女とメイドを裏口から送り出している。
「ルイーサ、手筈はどうだ?」
「サルジャン様もう大丈夫ですわ。日暮れまでは戻りません」
「よし、では母上をトリーの部屋へお連れしてくれ」
いつもは屋敷の中を走るなんてとんでもないと口うるさい侍女長ルイーサが、スカートを摘んで走り出し、リラの部屋の扉をノックした。
「リラ様、よろしいでしょうか!至急ご対応頂きたいことがございます」
「どうぞ」と返事が聞こえると、部屋に飛び込む。
「ルイーサ、どうしたの?そんなに慌てて、まさかユートリーに何か?」
「ユートリー様は大丈夫ですがリラ様、本当に時間がないのです、お急ぎ下さいまし」
不審げなリラを座り心地の良いソファから引きずり出すようにして着替をさせ、髪を手早くまとめて薄く化粧を施すと手を引くように廊下に出す。
「ねえ、ルイーサってばどうしたの!」
「いいから私を信じてついてきてください!時間がないのですよリラ様」
ずんずんと先を歩くルイーサに仕方なくついていくと、途中、マーカスの執務室に寄ってユートリーの部屋へと誘った。
「おお、リラ!今行く」
「貴方、一体どうなっているの!ねえトリーに何か」
「詳しいことはトリーの部屋で話すから、今は急ごう」
マーカスまで急げ急げとリラを追い立てる。
「ねえっ!トリーは本当に大丈夫なの?」
パニックを起こしたリラが立ち止まって叫ぶと、マーカスも足を止めた。
「トリーは本当に無事だ、会えばわかる。しかし時間がないのも本当だ。重大なことが起きているんだよ、頼むから急いでくれ」
34
あなたにおすすめの小説
【完結】もう、あなたを愛したくありません〜ループを越えた物質主義の令嬢は形のない愛を求める〜
あまぞらりゅう
恋愛
キアラ・リグリーア伯爵令嬢は、同じ人生を繰り返していた。
彼女の最期はいつも処刑台の上。
それは婚約者のダミアーノ・ヴィッツィオ公爵令息の陰謀だった。
死んだら、また過去に戻ってくる。
その度に彼女は婚約者のことを激しく憎んで、もう愛さないと強く胸に誓っていた。
でも、何度回帰しても彼女は彼を愛してしまって、最後は必ず破滅を迎えてしまう。
キアラはもうダミアーノを愛したくなかったし、愛なんてものは信じていなかった。
――そして七回目の人生で、彼女は真実を知る。
★元サヤではありません!(ヒーローは別にいます!)
★不快になるような残酷な描写があります!
★他サイト様にも投稿しています!
もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
魔法のせいだから許して?
ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。
どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。
──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。
しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり……
魔法のせいなら許せる?
基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
さようなら、私の愛したあなた。
希猫 ゆうみ
恋愛
オースルンド伯爵家の令嬢カタリーナは、幼馴染であるロヴネル伯爵家の令息ステファンを心から愛していた。いつか結婚するものと信じて生きてきた。
ところが、ステファンは爵位継承と同時にカールシュテイン侯爵家の令嬢ロヴィーサとの婚約を発表。
「君の恋心には気づいていた。だが、私は違うんだ。さようなら、カタリーナ」
ステファンとの未来を失い茫然自失のカタリーナに接近してきたのは、社交界で知り合ったドグラス。
ドグラスは王族に連なるノルディーン公爵の末子でありマルムフォーシュ伯爵でもある超上流貴族だったが、不埒な噂の絶えない人物だった。
「あなたと遊ぶほど落ちぶれてはいません」
凛とした態度を崩さないカタリーナに、ドグラスがある秘密を打ち明ける。
なんとドグラスは王家の密偵であり、偽装として遊び人のように振舞っているのだという。
「俺に協力してくれたら、ロヴィーサ嬢の真実を教えてあげよう」
こうして密偵助手となったカタリーナは、幾つかの真実に触れながら本当の愛に辿り着く。
断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます
紅城えりす☆VTuber
恋愛
*完結済み、ハッピーエンド
「今まで役に立ってくれてありがとう。もう貴方は要らないわ」
人生をかけて尽くしてきた優しい継母。
彼女の正体は『邪魔者は全て排除。常に自分が一番好かれていないと気が済まない』帝国史上、最も邪悪な女であった。
継母によって『魔女』に仕立てあげられ、処刑台へ連れて行かれることになったメアリー。
メアリーが居なくなれば、帝国の行く末はどうなってしまうのか……誰も知らずに。
牢の中で処刑の日を待つ彼女の前に、怪しげな男が現れる。
「俺が力を貸してやろうか?」
男は魔法を使って時間を巻き戻した。
「もう誰にも屈しないわ。私は悪逆令嬢になって、失った幸せを取り戻すの!」
家族を洗脳して手駒にする貴族。
罪なき人々を殺める魔道士。
そして、私を散々利用した挙句捨てたお義母様。
人々を苦しめる悪党は全て、どんな手を使ってでも悪逆令嬢である私が、断罪、断罪、断罪、断罪、断罪するのよ!
って、あれ?
友人からは頼りにされるし、お兄様は急に過保護。公爵様からも求婚されて……。
悪女ムーブしているのに、どうして回帰前より皆様に好かれているのかしら???
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
〇約十一万文字になる予定です。
もし「続きが読みたい!」「スカッとした」「面白い!」と思って頂けたエピソードがありましたら、♥コメントで反応していただけると嬉しいです。
読者様から頂いた反応は、今後の執筆活動にて参考にさせていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる