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イーデス子爵家では、メーリア伯爵からの先触れを受けて夫妻で到着を待ち受けていた。
「本当にこれでよかったのかしら?心変わりしたから婚約を解消するなんて。我が家の有責でもサラ嬢には婚約解消されたという傷がついてしまうわ」
「わかっているが、しかたなかろう。フェルナンドはサラ嬢より深く想い合う相手が現れた。先延ばしにするほどサラ嬢の傷はより深くなる、今しかないんだよ」
ブルワリー・イーデス子爵はため息交じりに答える。
サラの父デード・メーリア伯爵はもともと領地経営力が高く、真面目で領民思いと高く評価されている。たまたま不測の自然災害に打ちのめされているが、有能な領主ならいつか立て直すだろうと支援する貴族も多い。
そうして集められた資金は伯爵家の生活に流用されることは一切なく、すべて領地復興に回している。故に今の伯爵一家は質素な食事に流行遅れの服を身に纏い、清貧を貫かざるを得ないのだ。
社交界はその理由から伯爵一家を暖かく見守り、その姿を馬鹿にするような者は間違いなく蔑まれた。
そのメーリア伯爵家の令嬢をこのタイミングで婚約解消するというのは、世間的には金の切れ目は縁の切れ目とイーデス子爵家が判断したと思われることだろう。それはイーデス子爵家にとっても不本意極まりないのだが。
実はイーデス子爵ブルワリーは妻カイラにも秘密にしているのだが、フェルナンドが想い人と通じ合ったのは気持ちだけではない。
使用人からの忠言でそれを知ったブルワリーは、フェルナンドを張り飛ばし、その子爵令嬢と結婚させるしかないと決断した。
サラとは婚約期間が長いため、慰謝料はかなりなものになる、しかも17歳という年齢の令嬢に傷をつけてしまうのだ。
政略結婚であればより早い時期に、そうでなくともそろそろ正式に婚約をという相手がいるものだ。
今相手がいないのは何か問題があると見做される。フェルナンドは勝手にも自分の愚行でサラにそのレッテルを貼ろうとしているのである。
仮にサラ本人の資質を知り、良い令嬢だと判断されたとしても釣り合う相手がいなければどうにもならない。
フェルナンドがしたのは、それほどにサラとメーリア伯爵家、イーデス子爵家に重大な影響を与えることであった。
ブルワリーはフェルナンドにはまだ言っていないが、今回の不始末により廃嫡とし、一つ下の次男バローを嫡男に据えるつもりだ。
バローにもすでに婚約者がいる。すげかえることもできない以上、せめてその分も上乗せしてメーリア伯爵に頭を下げるしかない。
本当にため息しか出て来なかった。
デード・メーリア伯爵がイーデス子爵家にやって来ると、イーデス子爵夫妻は深々と頭を下げて謝罪と、すでに用意していた慰謝料を差し出した。
「ずいぶん用意がいいのだな。いつからだ?いつからこうなるとわかっていた?サラは傷つき真っ赤な目で帰ってきて、食事もとらずに寝込んでいる」
淡々とした口調だが、怒りが深く溜め込まれているのを感じさせる。
「我がイーデス家は、メーリア伯爵家の皆様に詫びることしかできません。此度のことはすべて我が家に非があると認めます。まだ本人には話しておりませんが、フェルナンドは廃嫡いたします」
「廃嫡?想い人ができただけにしては処分が重いのではないか?・・・まさか」
デードは子爵夫妻がすべての事情を話していないのではと疑い、顔を顰めた。
「いえ、サラ様との婚約期間の長さとこちらが有責であること、サラ様がこれから新たな婚約を結ぶ困難さを鑑みて、謝罪と反省以上の気持ちを示さねばならないと考えてのことです」
ブルワリーは真実を一つだけ隠したまま、ひたすら頭を下げ続けた。
「フェルナンドは?本人も頭を下げるべきではないのかね」
「はい、只今連れて参りますので」
きれいな顔をしたフェルナンドが侍女を伴って現れた。
デードにギロリと睨まれて、身をすくませると
「この度は、申し訳ございませんでした」
そう頭を下げたが。
「口先だけ謝り、金で済まそうと言うのかね?」
「いえ、とんでもございません。さっき申し上げたようにフェルナンドにも償わせますのでどうか」
ブルワリーの言葉に、フェルナンドが反応した。
「えっ?私が償う?」
「当たり前だ。サラ様とメーリア伯爵家に与える損害と、我が家が受ける誹りをお前以外の誰が償えるというのだ!まさか己だけ想い人と幸せに結婚してイーデス子爵家を継げるなどと思ってやしないだろうな?」
え・・・
口が開いたままのフェルナンドが立ちつくす。
「おまえは想い人と勝手に結婚すればよいが、我が子爵家からは廃嫡する」
「えっ?そ、そんな嘘ですよね」
「相手の家に転がりこもうが勝手だが、相手の家にも当然、婚約を解消させた咎でサラ嬢に慰謝料を払わせる。おまえたちにはさぞ厳しい対応を取られることだろうな」
「そんな、タイリユ子爵家にはまったく関係ないことです」
「馬鹿かっ!貴族家であれば、ちょっと調べればおまえとサラ嬢の婚約なんてだれにでも簡単にわかることだ!不貞で他家の婚約を解消させる原因になったら賠償しなければならない。そんなのは常識だぞフェルナンド」
ブルワリーは呆れ果てた視線をフェルナンドに向け、今日何度目かの大きなため息をついた。
「本当にこれでよかったのかしら?心変わりしたから婚約を解消するなんて。我が家の有責でもサラ嬢には婚約解消されたという傷がついてしまうわ」
「わかっているが、しかたなかろう。フェルナンドはサラ嬢より深く想い合う相手が現れた。先延ばしにするほどサラ嬢の傷はより深くなる、今しかないんだよ」
ブルワリー・イーデス子爵はため息交じりに答える。
サラの父デード・メーリア伯爵はもともと領地経営力が高く、真面目で領民思いと高く評価されている。たまたま不測の自然災害に打ちのめされているが、有能な領主ならいつか立て直すだろうと支援する貴族も多い。
そうして集められた資金は伯爵家の生活に流用されることは一切なく、すべて領地復興に回している。故に今の伯爵一家は質素な食事に流行遅れの服を身に纏い、清貧を貫かざるを得ないのだ。
社交界はその理由から伯爵一家を暖かく見守り、その姿を馬鹿にするような者は間違いなく蔑まれた。
そのメーリア伯爵家の令嬢をこのタイミングで婚約解消するというのは、世間的には金の切れ目は縁の切れ目とイーデス子爵家が判断したと思われることだろう。それはイーデス子爵家にとっても不本意極まりないのだが。
実はイーデス子爵ブルワリーは妻カイラにも秘密にしているのだが、フェルナンドが想い人と通じ合ったのは気持ちだけではない。
使用人からの忠言でそれを知ったブルワリーは、フェルナンドを張り飛ばし、その子爵令嬢と結婚させるしかないと決断した。
サラとは婚約期間が長いため、慰謝料はかなりなものになる、しかも17歳という年齢の令嬢に傷をつけてしまうのだ。
政略結婚であればより早い時期に、そうでなくともそろそろ正式に婚約をという相手がいるものだ。
今相手がいないのは何か問題があると見做される。フェルナンドは勝手にも自分の愚行でサラにそのレッテルを貼ろうとしているのである。
仮にサラ本人の資質を知り、良い令嬢だと判断されたとしても釣り合う相手がいなければどうにもならない。
フェルナンドがしたのは、それほどにサラとメーリア伯爵家、イーデス子爵家に重大な影響を与えることであった。
ブルワリーはフェルナンドにはまだ言っていないが、今回の不始末により廃嫡とし、一つ下の次男バローを嫡男に据えるつもりだ。
バローにもすでに婚約者がいる。すげかえることもできない以上、せめてその分も上乗せしてメーリア伯爵に頭を下げるしかない。
本当にため息しか出て来なかった。
デード・メーリア伯爵がイーデス子爵家にやって来ると、イーデス子爵夫妻は深々と頭を下げて謝罪と、すでに用意していた慰謝料を差し出した。
「ずいぶん用意がいいのだな。いつからだ?いつからこうなるとわかっていた?サラは傷つき真っ赤な目で帰ってきて、食事もとらずに寝込んでいる」
淡々とした口調だが、怒りが深く溜め込まれているのを感じさせる。
「我がイーデス家は、メーリア伯爵家の皆様に詫びることしかできません。此度のことはすべて我が家に非があると認めます。まだ本人には話しておりませんが、フェルナンドは廃嫡いたします」
「廃嫡?想い人ができただけにしては処分が重いのではないか?・・・まさか」
デードは子爵夫妻がすべての事情を話していないのではと疑い、顔を顰めた。
「いえ、サラ様との婚約期間の長さとこちらが有責であること、サラ様がこれから新たな婚約を結ぶ困難さを鑑みて、謝罪と反省以上の気持ちを示さねばならないと考えてのことです」
ブルワリーは真実を一つだけ隠したまま、ひたすら頭を下げ続けた。
「フェルナンドは?本人も頭を下げるべきではないのかね」
「はい、只今連れて参りますので」
きれいな顔をしたフェルナンドが侍女を伴って現れた。
デードにギロリと睨まれて、身をすくませると
「この度は、申し訳ございませんでした」
そう頭を下げたが。
「口先だけ謝り、金で済まそうと言うのかね?」
「いえ、とんでもございません。さっき申し上げたようにフェルナンドにも償わせますのでどうか」
ブルワリーの言葉に、フェルナンドが反応した。
「えっ?私が償う?」
「当たり前だ。サラ様とメーリア伯爵家に与える損害と、我が家が受ける誹りをお前以外の誰が償えるというのだ!まさか己だけ想い人と幸せに結婚してイーデス子爵家を継げるなどと思ってやしないだろうな?」
え・・・
口が開いたままのフェルナンドが立ちつくす。
「おまえは想い人と勝手に結婚すればよいが、我が子爵家からは廃嫡する」
「えっ?そ、そんな嘘ですよね」
「相手の家に転がりこもうが勝手だが、相手の家にも当然、婚約を解消させた咎でサラ嬢に慰謝料を払わせる。おまえたちにはさぞ厳しい対応を取られることだろうな」
「そんな、タイリユ子爵家にはまったく関係ないことです」
「馬鹿かっ!貴族家であれば、ちょっと調べればおまえとサラ嬢の婚約なんてだれにでも簡単にわかることだ!不貞で他家の婚約を解消させる原因になったら賠償しなければならない。そんなのは常識だぞフェルナンド」
ブルワリーは呆れ果てた視線をフェルナンドに向け、今日何度目かの大きなため息をついた。
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