【完結】貧乏令嬢は自分の力でのし上がる!後悔?先に立たずと申しましてよ。

やまぐちこはる

文字の大きさ
2 / 44

2話

しおりを挟む
 イーデス子爵家では、メーリア伯爵からの先触れを受けて夫妻で到着を待ち受けていた。

「本当にこれでよかったのかしら?心変わりしたから婚約を解消するなんて。我が家の有責でもサラ嬢には婚約解消されたという傷がついてしまうわ」
「わかっているが、しかたなかろう。フェルナンドはサラ嬢より深く想い合う相手が現れた。先延ばしにするほどサラ嬢の傷はより深くなる、今しかないんだよ」

 ブルワリー・イーデス子爵はため息交じりに答える。

 サラの父デード・メーリア伯爵はもともと領地経営力が高く、真面目で領民思いと高く評価されている。たまたま不測の自然災害に打ちのめされているが、有能な領主ならいつか立て直すだろうと支援する貴族も多い。
そうして集められた資金は伯爵家の生活に流用されることは一切なく、すべて領地復興に回している。故に今の伯爵一家は質素な食事に流行遅れの服を身に纏い、清貧を貫かざるを得ないのだ。
 社交界はその理由から伯爵一家を暖かく見守り、その姿を馬鹿にするような者は間違いなく蔑まれた。
 そのメーリア伯爵家の令嬢をこのタイミングで婚約解消するというのは、世間的には金の切れ目は縁の切れ目とイーデス子爵家が判断したと思われることだろう。それはイーデス子爵家にとっても不本意極まりないのだが。

 実はイーデス子爵ブルワリーは妻カイラにも秘密にしているのだが、フェルナンドが想い人と通じ合ったのは気持ちだけではない。
使用人からの忠言でそれを知ったブルワリーは、フェルナンドを張り飛ばし、その子爵令嬢と結婚させるしかないと決断した。
サラとは婚約期間が長いため、慰謝料はかなりなものになる、しかも17歳という年齢の令嬢に傷をつけてしまうのだ。
 政略結婚であればより早い時期に、そうでなくともそろそろ正式に婚約をという相手がいるものだ。
 今相手がいないのは何か問題があると見做される。フェルナンドは勝手にも自分の愚行でサラにそのレッテルを貼ろうとしているのである。
 仮にサラ本人の資質を知り、良い令嬢だと判断されたとしても釣り合う相手がいなければどうにもならない。
 フェルナンドがしたのは、それほどにサラとメーリア伯爵家、イーデス子爵家に重大な影響を与えることであった。


 ブルワリーはフェルナンドにはまだ言っていないが、今回の不始末により廃嫡とし、一つ下の次男バローを嫡男に据えるつもりだ。
バローにもすでに婚約者がいる。すげかえることもできない以上、せめてその分も上乗せしてメーリア伯爵に頭を下げるしかない。
 本当にため息しか出て来なかった。




 デード・メーリア伯爵がイーデス子爵家にやって来ると、イーデス子爵夫妻は深々と頭を下げて謝罪と、すでに用意していた慰謝料を差し出した。

「ずいぶん用意がいいのだな。いつからだ?いつからこうなるとわかっていた?サラは傷つき真っ赤な目で帰ってきて、食事もとらずに寝込んでいる」

 淡々とした口調だが、怒りが深く溜め込まれているのを感じさせる。

「我がイーデス家は、メーリア伯爵家の皆様に詫びることしかできません。此度のことはすべて我が家に非があると認めます。まだ本人には話しておりませんが、フェルナンドは廃嫡いたします」
「廃嫡?想い人ができただけにしては処分が重いのではないか?・・・まさか」

 デードは子爵夫妻がすべての事情を話していないのではと疑い、顔を顰めた。

「いえ、サラ様との婚約期間の長さとこちらが有責であること、サラ様がこれから新たな婚約を結ぶ困難さを鑑みて、謝罪と反省以上の気持ちを示さねばならないと考えてのことです」

 ブルワリーは真実を一つだけ隠したまま、ひたすら頭を下げ続けた。

「フェルナンドは?本人も頭を下げるべきではないのかね」
「はい、只今連れて参りますので」

 きれいな顔をしたフェルナンドが侍女を伴って現れた。
デードにギロリと睨まれて、身をすくませると

「この度は、申し訳ございませんでした」

 そう頭を下げたが。

「口先だけ謝り、金で済まそうと言うのかね?」
「いえ、とんでもございません。さっき申し上げたようにフェルナンドにも償わせますのでどうか」

 ブルワリーの言葉に、フェルナンドが反応した。

「えっ?私が償う?」
「当たり前だ。サラ様とメーリア伯爵家に与える損害と、我が家が受ける誹りをお前以外の誰が償えるというのだ!まさか己だけ想い人と幸せに結婚してイーデス子爵家を継げるなどと思ってやしないだろうな?」

 え・・・
口が開いたままのフェルナンドが立ちつくす。

「おまえは想い人と勝手に結婚すればよいが、我が子爵家からは廃嫡する」
「えっ?そ、そんな嘘ですよね」
「相手の家に転がりこもうが勝手だが、相手の家にも当然、婚約を解消させた咎でサラ嬢に慰謝料を払わせる。おまえたちにはさぞ厳しい対応を取られることだろうな」
「そんな、タイリユ子爵家にはまったく関係ないことです」
「馬鹿かっ!貴族家であれば、ちょっと調べればおまえとサラ嬢の婚約なんてだれにでも簡単にわかることだ!不貞で他家の婚約を解消させる原因になったら賠償しなければならない。そんなのは常識だぞフェルナンド」

 ブルワリーは呆れ果てた視線をフェルナンドに向け、今日何度目かの大きなため息をついた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【完結】20あなたが思っている通りにはいきませんわ。

華蓮
恋愛
ユリアスとオリンピアは、もうすぐ結婚式を挙げる。 幸せな生活が続くはずだったのに、隣国から要請により、人質になることになった。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

妹のために愛の無い結婚をすることになりました

バンブー竹田
恋愛
「エミリー、君との婚約は破棄することに決まった」 愛するラルフからの唐突な通告に私は言葉を失ってしまった。 婚約が破棄されたことはもちろんショックだけど、それだけじゃない。 私とラルフの結婚は妹のシエルの命がかかったものでもあったから・・・。 落ちこむ私のもとに『アレン』という大金持ちの平民からの縁談が舞い込んできた。 思い悩んだ末、私は会ったこともない殿方と結婚することに決めた。

【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない

かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、 それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。 しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、 結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。 3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか? 聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか? そもそも、なぜ死に戻ることになったのか? そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか… 色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、 そんなエレナの逆転勝利物語。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

星屑を紡ぐ令嬢と、色を失った魔法使い

希羽
恋愛
子爵令嬢のルチアは、継母と義姉に虐げられ、屋根裏部屋でひっそりと暮らしていた。彼女には、夜空に輝く星屑を集めて、触れた者の心を癒す不思議な力を持つ「銀色の糸」を紡ぎ出すという、秘密の能力があった。しかし、その力で生み出された美しい刺繍の手柄は、いつも華やかな義姉のものとされていた。 一方、王国には「灰色の魔法使い」と畏れられる英雄、アークライト公爵がいた。彼はかつて国を救った代償として、世界の色彩と感情のすべてを失い、孤独な日々を送っている。 ある夜会で、二人の運命が交差する。義姉が手にしたルチアの刺繍にアークライトが触れた瞬間、彼の灰色だった世界に、一瞬だけ鮮やかな色彩が流れ込むという奇跡が起きた。 その光の本当の作り手を探し出したアークライトは、ルチアを自身の屋敷へと迎え入れる。「私のために刺繍をしろ」──その強引な言葉の裏にある深い孤独を知ったルチアは、戸惑いながらも、初めて自分の力を認められたことに喜びを感じ、彼のために星屑を紡ぎ始める。 彼女の刺繍は、凍てついていた公爵の心を少しずつ溶かし、二人の間には静かな絆が芽生えていく。 しかし、そんな穏やかな日々は長くは続かない。ルチアの持つ力の価値に気づいた過去の人々が、彼女を再び絶望へ引き戻そうと、卑劣な陰謀を企てていた。

今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。

ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」 書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。 今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、 5年経っても帰ってくることはなかった。 そして、10年後… 「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…

【完結済】冷血公爵様の家で働くことになりまして~婚約破棄された侯爵令嬢ですが公爵様の侍女として働いています。なぜか溺愛され離してくれません~

北城らんまる
恋愛
**HOTランキング11位入り! ありがとうございます!** 「薄気味悪い魔女め。おまえの悪行をここにて読み上げ、断罪する」  侯爵令嬢であるレティシア・ランドハルスは、ある日、婚約者の男から魔女と断罪され、婚約破棄を言い渡される。父に勘当されたレティシアだったが、それは娘の幸せを考えて、あえてしたことだった。父の手紙に書かれていた住所に向かうと、そこはなんと冷血と知られるルヴォンヒルテ次期公爵のジルクスが一人で住んでいる別荘だった。 「あなたの侍女になります」 「本気か?」    匿ってもらうだけの女になりたくない。  レティシアはルヴォンヒルテ次期公爵の見習い侍女として、第二の人生を歩み始めた。  一方その頃、レティシアを魔女と断罪した元婚約者には、不穏な影が忍び寄っていた。  レティシアが作っていたお守りが、実は元婚約者の身を魔物から守っていたのだ。そんなことも知らない元婚約者には、どんどん不幸なことが起こり始め……。 ※ざまぁ要素あり(主人公が何かをするわけではありません) ※設定はゆるふわ。 ※3万文字で終わります ※全話投稿済です

処理中です...