【完結】貧乏令嬢は自分の力でのし上がる!後悔?先に立たずと申しましてよ。

やまぐちこはる

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17話

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「ああっ!痛っ!!」

 店の奥にあるメーメの部屋から悲鳴が聞こえた。
 モニカが連れてきた医者がメーメの折れた足を固定していたのだ。また明日くるからと医者が帰ったあと、うめき声をあげるメーメにサラが薬を飲ませてやる。

「今日店を開けるのは無理ですわね」
「何を言っているんだ。ほとんどのものはサラも作れるだろう。店を開けなさい。ただデコレーションだけはダメだぞ」

 脂汗を額に浮かべながらメーメが指示を出す。

「そんな!私の作ったものでよろしいのですか?」
「今までだってサラも作っていたではないか」
「でも仕上げは、師匠が」

 メーメは眉を顰めながら、片頬を緩めて

「引っかかりおったな。ここしばらく、私はデコレーション以外の仕上げはしとらんよ。仕上げた振りはしたがな」
「ええっ?」

 サラが目を丸くしてポカンとするのを見て吹き出したメーメは、その衝撃が足を刺激したらしい。

「いったたた!」

 体を丸め、痛がっている。

「もう師匠ったら。悪さをされるからそういう目に遭うのですわ」

 そう言いつつサラは、赤い顔でエプロンをつけてスイーツ作りの支度を始めた。

「ああ、サラ。一つ頼みがあるんだが」
「なんでしょう?」
「紙とペンを。手紙を書くので、あとで手配してほしいのだ」

 頷いて、机の引き出しから便箋と封筒、羽根ペンとインクを持ってきて、ベッドのところにサイドテーブルを引っ張ってくるとその上に置いた。

「モニカ、エイジャ。悪いけど今日は屋敷に帰らずに師匠についていてほしいの」
「いや大丈夫だよ」
「ダメです。手が足りなくなったらモニカに手伝ってもらうつもりなんですから。それまでおとなしく面倒みてもらってくださいませ。ふたりともよろしくお願いしますね」

 そのあと、サラは開店時間までスイーツ作りに没頭した。

 鳩時計が時を知らせる。

「あら、もうそんな時間!大変だわ」

 モニカを呼び、店の掃除を頼むと焼き菓子やジュレを並べていく。
デコレーションケーキは今日はお休みし、フルーツクリームケーキやチョコレートケーキ、チーズケーキをメインに、一口サイズのショコラ。

「結構頑張ったわ、わたくしえらいっ!」

 一人で作ったとは思えないほどの量である。
自分で自分を褒めてうふふっと笑う。
メーメがここしばらく仕上げはしていなかったと言っていたが、それでもすべてをサラが作っていたわけではない。
 本当の意味で初めてすべてを作った記念日!満足気に顔を紅潮させた。
師匠は怪我をしたけれど。

「あ!師匠大丈夫かしら」

 予定時間前に開店準備が整ったのでメーメの部屋へ様子を見に行くと、御者のエイジャとメーメが世間話をして時間を潰していた。

「お加減はいかがですか?」
「痛み止めが効いて、なんとか我慢できている」
「お食事食べられそうでしたら、なにかお作りしますわよ」
「いや、買ってきてもらうからいい。あとこれの手配を彼に頼んでもいいだろうかね、サラ」

 メーメは、その手に手紙を持って振って見せる。

「もちろんですわ、エイジャお願いね」

 御者が頷いて手紙を受け取ると、上着の内ポケットに差し入れた。

「準備できたのなら店を開けなさい」

 師弟が視線を合わせ、頷きあうと

「今日も一日がんばりますわ!」

 伯爵令嬢のはずの弟子は、軽く拳を握ってみせた。

 その日はサラが作り、モニカがホールと販売を担当して、いつものメーメの店よりずっと華やかな雰囲気に、来る客も楽しそうだった。



「お疲れ様!モニカ、エイジャ今日はふたりがいなかったら大変だったわ。本当にありがとう」
「私からもお礼を言います、本当に助かりました」

 ベッドで上半身を起こしたメーメが頭を下げる。

「しばらくメーメ様は動けませんから、明日から当面私がお手伝いいたしますわ」

 モニカは誰がなんと言おうとやると決めているようだ。

「助かるわ、よろしくねモニカ」
「私も。力仕事はお任せください」

 エイジャもそう言って協力を約束した。


 翌日、いつもより早く店に着いた三人が、氷が届くのを待ち受けていると

「おはようございます!」

 氷を積んだ馬車からサラよりだいぶ年嵩の女性が下りてきて、サラを驚かせた。

 ─え?
この方が氷を運んでいらっしゃるの?
御者は別にいらっしゃる?
ではこの方は?─

「いつも父がお世話になっております、私エンデラ・メーメの娘、ローサ・メレンデラと申します」
「こちらこそ、私のほうが師匠にお世話になっておりますわ。・・・メレンデラさま・・・?あ!メレンデラ子爵様」

 サラのメーリア伯爵領とは少し方向が違うが、同じ北部に在する貴族だ。

「だから氷を」
「ええ、私の主人が父に毎日氷を送っておりますのよ」
「まあ!そうでしたか。それはありがとうございます」
「ご存知なかったのね、父も貴族家出身ですの。菓子作りに興じて、元々あまり爵位を継ぐことに熱心ではなくて。祖父が亡くなって代替わりする際に出奔して伯父に爵位を」

 サラ、モニカとエイジャはそれこそ目を丸くした。

「ずいぶん型破りなことをされる・・・」
「ええ。びっくりしましたけど、早くに母も亡くなっておりましたし、私は子爵を継いだ伯父の養女となりましたので、丸くおさまりましたのよ」

 ほほほと笑うが、この女性もなかなか腹の座った人だとエイジャは感じていた。

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