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第11話 王妃の叱咤
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普段、独身の王子の独身の側近たちは各王子の部屋の近くに部屋を与えられて、寝食をともにしている。
そのため、実家に帰宅するのでも職務を離れる場合はいちいち届け出を出さなければならない。
「マイラは元気?よろしく伝えてね」
里帰りの話を聞きつけ、元乳母への伝言を預けた王妃パリスが話しを続ける。
「待ってテューダー。エルロールの婚約者候補はどうなっているのかしら」
「はっ、はあ」
「まだあの、好きな人じゃなきゃ嫌っていうおとぎ話を追いかけているの?」
「はっ、はあ」
「早く夢から覚めてくれないと困るわね」
「はっ、はあ」
何を問いかけても同じことしか言わないテューダーを、パリス王妃は問い詰めるような視線でじっと見つめる。
「あの、まだ少しお時間をいただきたいのです。デリケートなところでございまして」
「何か悩んでいるらしいのは聞いているわ、誰か見つけたのかしら。わたくしにも話せないことなの?」
「はあ。・・・お話し申し上げて、王妃陛下がそれならと手段を行使されたら今の問題は簡単に解決するのですが、それをエルロール殿下が良しとされないのでございます」
パリスの眉尻が上がる。
「また、バカ正直なことを言っているのかしら?」
「そんなところでございます」
「問題って何?」
わかっていて聞いていると理解しているテューダーは言葉を選ぶ。
「家格、爵位が低い家門の方なのです」
「そんなの養女になればすぐに解決でしょ!
はあ・・・。正攻法しか選ばない正直さはあの子の美徳だけれど、国王になれば短所ともなるわ。だからこそ力強い後ろ盾となる家門出身の婚約者を自分で見つけ出し、自力で話をまとめるというのはとても大切で、王となるための最初の試練なのよ。この機会に少しくらい狡く立ち回ることを覚えてもらいたいわね。
・・・自分の子にこう言うのはなんだけど、正直双子たちは国王の器ではないわ。あれらが国王になったら煽てに乗って貴族たちに利用されるだけ。テューダーも想像できるでしょう?」
「は・・・い」
「だからといって、先祖代々受け継がれてきた王太子選択の慣例をエルロールのために変えることもできないの。わかっているわよね?」
テューダーはぎゅううっと押し潰されるような圧力を感じていた。顔が上げられない。
「半年の婚約期間を持ち、成年式で婚姻するなら・・・これという令嬢を既に見つけているならそうね、5ヶ月待ちましょう。それで決められないなら、国のためにもエルロールにはわたくしが決めた令嬢と婚約してもらうわ。どうしてもその令嬢がいいなら、5ヶ月の間に死ぬ気でなんとかしろとおまえがハッパをかけなさい」
王妃との謁見が済んだとき、テューダーのシャツは絞ればぽたぽたと水滴が落ちるほど汗をかいていた。
「まったくエルのせいで寿命が縮んだぞ!」
エルロールに恨めしい気持ちが向くが、これも側近の仕事だから飲み込むしかない。
早く家に戻り、のんびり過ごしているだろう母に相談したい、なんとか突破口を見つけたいと逸る気持ちを抑えて、厩舎で馬を借りると城を後にしたのだった。
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お読み頂きありがとうございます。
明日から通常更新、7時と19時の更新です。よろしくお願い致します。
そのため、実家に帰宅するのでも職務を離れる場合はいちいち届け出を出さなければならない。
「マイラは元気?よろしく伝えてね」
里帰りの話を聞きつけ、元乳母への伝言を預けた王妃パリスが話しを続ける。
「待ってテューダー。エルロールの婚約者候補はどうなっているのかしら」
「はっ、はあ」
「まだあの、好きな人じゃなきゃ嫌っていうおとぎ話を追いかけているの?」
「はっ、はあ」
「早く夢から覚めてくれないと困るわね」
「はっ、はあ」
何を問いかけても同じことしか言わないテューダーを、パリス王妃は問い詰めるような視線でじっと見つめる。
「あの、まだ少しお時間をいただきたいのです。デリケートなところでございまして」
「何か悩んでいるらしいのは聞いているわ、誰か見つけたのかしら。わたくしにも話せないことなの?」
「はあ。・・・お話し申し上げて、王妃陛下がそれならと手段を行使されたら今の問題は簡単に解決するのですが、それをエルロール殿下が良しとされないのでございます」
パリスの眉尻が上がる。
「また、バカ正直なことを言っているのかしら?」
「そんなところでございます」
「問題って何?」
わかっていて聞いていると理解しているテューダーは言葉を選ぶ。
「家格、爵位が低い家門の方なのです」
「そんなの養女になればすぐに解決でしょ!
はあ・・・。正攻法しか選ばない正直さはあの子の美徳だけれど、国王になれば短所ともなるわ。だからこそ力強い後ろ盾となる家門出身の婚約者を自分で見つけ出し、自力で話をまとめるというのはとても大切で、王となるための最初の試練なのよ。この機会に少しくらい狡く立ち回ることを覚えてもらいたいわね。
・・・自分の子にこう言うのはなんだけど、正直双子たちは国王の器ではないわ。あれらが国王になったら煽てに乗って貴族たちに利用されるだけ。テューダーも想像できるでしょう?」
「は・・・い」
「だからといって、先祖代々受け継がれてきた王太子選択の慣例をエルロールのために変えることもできないの。わかっているわよね?」
テューダーはぎゅううっと押し潰されるような圧力を感じていた。顔が上げられない。
「半年の婚約期間を持ち、成年式で婚姻するなら・・・これという令嬢を既に見つけているならそうね、5ヶ月待ちましょう。それで決められないなら、国のためにもエルロールにはわたくしが決めた令嬢と婚約してもらうわ。どうしてもその令嬢がいいなら、5ヶ月の間に死ぬ気でなんとかしろとおまえがハッパをかけなさい」
王妃との謁見が済んだとき、テューダーのシャツは絞ればぽたぽたと水滴が落ちるほど汗をかいていた。
「まったくエルのせいで寿命が縮んだぞ!」
エルロールに恨めしい気持ちが向くが、これも側近の仕事だから飲み込むしかない。
早く家に戻り、のんびり過ごしているだろう母に相談したい、なんとか突破口を見つけたいと逸る気持ちを抑えて、厩舎で馬を借りると城を後にしたのだった。
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