【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる

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 ドアランを断ってはみたものの、新しい設計士には心当たりもなく。
パルティアは手当り次第、まわりに聞いて回り始めたそんな時。

「パーチィ!」
「まあ!お久しぶりねメラルー」

 いつも約束なしにふらりと遊びに来てしまう、自由人の従兄弟メラロニアス・メンデバーが手を振っている。

「婚約の話、聞いたぞ。隣国に出ていてすぐに来てやれなくてすまなかった。もう大丈夫なのか?」

 彼にしては珍しく、怒りを隠さない。

「心配かけてごめんなさいねメラルー!もう大丈夫よ。新しいことも始めたところだし」
「新しいことって?」
「静養する施設を作って、平民の女性たちの仕事を増やして働いてもらおうと思って」

 珍しもの好きのメラロニアスは眉を上げた。

「それ、どこから思いついたんだ?」
「エルシドって知ってるかしら?そこで静養していたときに、平民の女性たちと親しくなったのよ」
「その者たちは仕事がないのか?」
「あるにはあるけれど、俸給がとても少なかったり、不安定だったりするそうだから私がやってみようと思って」
「何故自分で?」

 矢継ぎ早に訊いてくるメラロニアスに、一つ一つ丁寧に答えていく。

「そうね、一つは恩返し。彼女たちにとても支えられたから」
「他にも?」
「この忌々しき慰謝料を持っていたくなくて、なにか良いことに使いたかったのよ」

 真剣な顔で言うパルティアに、メラロニアスが吹く。

「笑い事ではないわ。所謂あぶく銭を持つと金目当ての者が寄ってくるでしょう?」
「まあ、そうだが」
「使い切ったほうが変なのも来なくて清々するし、どうせなら人の役に立つ使い方がいいでしょう?」
「それで全部を使うと?パーチィ、なんか変わったな。潔いというか・・・勇ましくなった?」
「レディに勇ましいなんて、いやあね」

 そう言いながらパルティアは、満更でもなさそうにくすりと笑って見せた。

「私に何か手伝えることはあるかな?」
「お気持ちは有り難いのだけど、共同出資くださる方がいるから」
「共同出資?どこの誰だ?変なやつじゃないだろうな?叔父上はご存知なのか」

 ころころとパルティアが笑い出す。

「そんなに一度に訊かないで。
共同出資してくださる方はセリアズ公爵ご令息アレクシオス様よ。お父さまはもちろんご存知」
「アレクシオス・セリアズ?セリアズ公爵家だと?叔父上はいいと?」
「もう、メラルーってば!一つ一つって言ったでしょ」
「ああ、ごめん、驚きすぎて。だってセリアズって言ったらエンダラインとは犬猿の仲で有名だろう?」
「そうね、でもなぜ犬猿だったのかも、いまとなってはわからないわ。セリアズ公爵様ともお会いしたけれど、とってもお優しくて素敵な方だもの」

 そう言うと、メラロニアスにアレクシオスとの出会いを話して聞かせた。

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