19 / 75
19
しおりを挟む
ドアランを断ってはみたものの、新しい設計士には心当たりもなく。
パルティアは手当り次第、まわりに聞いて回り始めたそんな時。
「パーチィ!」
「まあ!お久しぶりねメラルー」
いつも約束なしにふらりと遊びに来てしまう、自由人の従兄弟メラロニアス・メンデバーが手を振っている。
「婚約の話、聞いたぞ。隣国に出ていてすぐに来てやれなくてすまなかった。もう大丈夫なのか?」
彼にしては珍しく、怒りを隠さない。
「心配かけてごめんなさいねメラルー!もう大丈夫よ。新しいことも始めたところだし」
「新しいことって?」
「静養する施設を作って、平民の女性たちの仕事を増やして働いてもらおうと思って」
珍しもの好きのメラロニアスは眉を上げた。
「それ、どこから思いついたんだ?」
「エルシドって知ってるかしら?そこで静養していたときに、平民の女性たちと親しくなったのよ」
「その者たちは仕事がないのか?」
「あるにはあるけれど、俸給がとても少なかったり、不安定だったりするそうだから私がやってみようと思って」
「何故自分で?」
矢継ぎ早に訊いてくるメラロニアスに、一つ一つ丁寧に答えていく。
「そうね、一つは恩返し。彼女たちにとても支えられたから」
「他にも?」
「この忌々しき慰謝料を持っていたくなくて、なにか良いことに使いたかったのよ」
真剣な顔で言うパルティアに、メラロニアスが吹く。
「笑い事ではないわ。所謂あぶく銭を持つと金目当ての者が寄ってくるでしょう?」
「まあ、そうだが」
「使い切ったほうが変なのも来なくて清々するし、どうせなら人の役に立つ使い方がいいでしょう?」
「それで全部を使うと?パーチィ、なんか変わったな。潔いというか・・・勇ましくなった?」
「レディに勇ましいなんて、いやあね」
そう言いながらパルティアは、満更でもなさそうにくすりと笑って見せた。
「私に何か手伝えることはあるかな?」
「お気持ちは有り難いのだけど、共同出資くださる方がいるから」
「共同出資?どこの誰だ?変なやつじゃないだろうな?叔父上はご存知なのか」
ころころとパルティアが笑い出す。
「そんなに一度に訊かないで。
共同出資してくださる方はセリアズ公爵ご令息アレクシオス様よ。お父さまはもちろんご存知」
「アレクシオス・セリアズ?セリアズ公爵家だと?叔父上はいいと?」
「もう、メラルーってば!一つ一つって言ったでしょ」
「ああ、ごめん、驚きすぎて。だってセリアズって言ったらエンダラインとは犬猿の仲で有名だろう?」
「そうね、でもなぜ犬猿だったのかも、いまとなってはわからないわ。セリアズ公爵様ともお会いしたけれど、とってもお優しくて素敵な方だもの」
そう言うと、メラロニアスにアレクシオスとの出会いを話して聞かせた。
パルティアは手当り次第、まわりに聞いて回り始めたそんな時。
「パーチィ!」
「まあ!お久しぶりねメラルー」
いつも約束なしにふらりと遊びに来てしまう、自由人の従兄弟メラロニアス・メンデバーが手を振っている。
「婚約の話、聞いたぞ。隣国に出ていてすぐに来てやれなくてすまなかった。もう大丈夫なのか?」
彼にしては珍しく、怒りを隠さない。
「心配かけてごめんなさいねメラルー!もう大丈夫よ。新しいことも始めたところだし」
「新しいことって?」
「静養する施設を作って、平民の女性たちの仕事を増やして働いてもらおうと思って」
珍しもの好きのメラロニアスは眉を上げた。
「それ、どこから思いついたんだ?」
「エルシドって知ってるかしら?そこで静養していたときに、平民の女性たちと親しくなったのよ」
「その者たちは仕事がないのか?」
「あるにはあるけれど、俸給がとても少なかったり、不安定だったりするそうだから私がやってみようと思って」
「何故自分で?」
矢継ぎ早に訊いてくるメラロニアスに、一つ一つ丁寧に答えていく。
「そうね、一つは恩返し。彼女たちにとても支えられたから」
「他にも?」
「この忌々しき慰謝料を持っていたくなくて、なにか良いことに使いたかったのよ」
真剣な顔で言うパルティアに、メラロニアスが吹く。
「笑い事ではないわ。所謂あぶく銭を持つと金目当ての者が寄ってくるでしょう?」
「まあ、そうだが」
「使い切ったほうが変なのも来なくて清々するし、どうせなら人の役に立つ使い方がいいでしょう?」
「それで全部を使うと?パーチィ、なんか変わったな。潔いというか・・・勇ましくなった?」
「レディに勇ましいなんて、いやあね」
そう言いながらパルティアは、満更でもなさそうにくすりと笑って見せた。
「私に何か手伝えることはあるかな?」
「お気持ちは有り難いのだけど、共同出資くださる方がいるから」
「共同出資?どこの誰だ?変なやつじゃないだろうな?叔父上はご存知なのか」
ころころとパルティアが笑い出す。
「そんなに一度に訊かないで。
共同出資してくださる方はセリアズ公爵ご令息アレクシオス様よ。お父さまはもちろんご存知」
「アレクシオス・セリアズ?セリアズ公爵家だと?叔父上はいいと?」
「もう、メラルーってば!一つ一つって言ったでしょ」
「ああ、ごめん、驚きすぎて。だってセリアズって言ったらエンダラインとは犬猿の仲で有名だろう?」
「そうね、でもなぜ犬猿だったのかも、いまとなってはわからないわ。セリアズ公爵様ともお会いしたけれど、とってもお優しくて素敵な方だもの」
そう言うと、メラロニアスにアレクシオスとの出会いを話して聞かせた。
219
あなたにおすすめの小説
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
【完】王妃の座を愛人に奪われたので娼婦になって出直します
112
恋愛
伯爵令嬢エレオノールは、皇太子ジョンと結婚した。
三年に及ぶ結婚生活では一度も床を共にせず、ジョンは愛人ココットにうつつを抜かす。
やがて王が亡くなり、ジョンに王冠が回ってくる。
するとエレオノールの王妃は剥奪され、ココットが王妃となる。
王宮からも伯爵家からも追い出されたエレオノールは、娼婦となる道を選ぶ。
(完結)あなたが婚約破棄とおっしゃったのですよ?
青空一夏
恋愛
スワンはチャーリー王子殿下の婚約者。
チャーリー王子殿下は冴えない容姿の伯爵令嬢にすぎないスワンをぞんざいに扱い、ついには婚約破棄を言い渡す。
しかし、チャーリー王子殿下は知らなかった。それは……
これは、身の程知らずな王子がギャフンと言わされる物語です。コメディー調になる予定で
す。過度な残酷描写はしません(多分(•́ε•̀;ก)💦)
それぞれの登場人物視点から話が展開していく方式です。
異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定ご都合主義。タグ途中で変更追加の可能性あり。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた
奏千歌
恋愛
[ディエム家の双子姉妹]
どうして、こんな事になってしまったのか。
妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
【完結済】自由に生きたいあなたの愛を期待するのはもうやめました
鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
伯爵令嬢クラウディア・マクラウドは長年の婚約者であるダミアン・ウィルコックス伯爵令息のことを大切に想っていた。結婚したら彼と二人で愛のある家庭を築きたいと夢見ていた。
ところが新婚初夜、ダミアンは言った。
「俺たちはまるっきり愛のない政略結婚をしたわけだ。まぁ仕方ない。あとは割り切って互いに自由に生きようじゃないか。」
そう言って愛人らとともに自由に過ごしはじめたダミアン。激しくショックを受けるクラウディアだったが、それでもひたむきにダミアンに尽くし、少しずつでも自分に振り向いて欲しいと願っていた。
しかしそんなクラウディアの思いをことごとく裏切り、鼻で笑うダミアン。
心が折れそうなクラウディアはそんな時、王国騎士団の騎士となった友人アーネスト・グレアム侯爵令息と再会する。
初恋の相手であるクラウディアの不幸せそうな様子を見て、どうにかダミアンから奪ってでも自分の手で幸せにしたいと考えるアーネスト。
そんなアーネストと次第に親密になり自分から心が離れていくクラウディアの様子を見て、急に焦り始めたダミアンは─────
(※※夫が酷い男なので序盤の数話は暗い話ですが、アーネストが出てきてからはわりとラブコメ風です。)(※※この物語の世界は作者独自の設定です。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる