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76話
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王妃のコンテストに出品する作品作りに打ち込んでいる間に、ミヒアがトリュースと出会い、ドレインが仲間から外されそうになっているとは知らなかったナミリアは、足りなくなった材料を調達しに商会を訪れて、見かけない黒髪の男と出くわした。
「こんにちは」
商会の二階には関係者しか出入りが許されていないため、知らぬ相手でもとりあえずそう声をかける。
小鳥が鳴いたのかと思うほど可愛らしい声に、トリュースは相手を二度見した。
長い髪をハーフアップにした品の良い令嬢は、あたたかみを感じさせる若草色の瞳でトリュースを見上げている。
「こんにちは」
瞳に魅入られたように令嬢から目が離せなくなったトリュースは、自分に驚いていた。
復讐のために身分を捨て、ただひたすらそのために生きている。恋も未来もすべて手放し、誰かに感情が動くことなどもう無いと思っていたのだ。
「あ、トニー!」
顔馴染の使用人を見つけたナミリアは、小さく会釈して通り過ぎて行った。
甘やかな残り香を漂わせながら。
振り返るとミヒアの部屋へ入って行く。
「トニー、今のご令嬢は」
「ナミリア様ですよ」
「ナミリア様?レンラ子爵家の?」
「そうです」
「そうか、あの方が」
トリュースはドレインから話を持ちかけられたときにナミリアのことも勿論調べたのだが、その頃ナミリアは王妃のコンテストの作品作りに入っていて、屋敷に籠もっており、その姿に出会うことはなかった。
「そうか・・彼女が」
トリュースの脳裏にナミリアの笑顔が刷り込まれ、その日以来忘れることができなくなった。
「ミヒア様」
「ナミリアさん!お久しぶりね。調子はどう?」
「あと少しなのですけど、差し色でちょっと色味を変えたらどうかと思いついて」
「上手くいくといいわね、応援してるわ」
「ありがとうございます!さっき見慣れぬ黒髪の方がいらしたのですが、新しい方ですか」
「ああ、会ったのね。彼はそう、新しく雇った調査員よ」
にこにこしながらミヒアがナミリアを見つめた。
今は黒髪に染め、眼鏡で地味に作り替えているトリュースだが、元は伯爵家の令息だ。現当主に問題があることが明らかになればトリュース、いやホングレイブ伯爵家のトリスタンとしてゲイザードに成り代わり、伯爵となることも不可能ではない。
いくら復讐のためとはいえ、つまらぬ裏稼業で手を汚させることなく、いつかあるべきところに戻してやりたい。
ミヒアはトリュースにディルーストを重ねていた。親を亡くしたこどもと、息子を亡くした母。引き合うものがあったのだ。
本懐を遂げさせてやりたいが、トリュースのように捨て身ではその後が悲惨だと人生経験豊富なミヒアにはわかる。
だからこそ、自分が後ろ盾となり、トリュースを守ってやろうと。
そして・・・
トリュースの隣にナミリアを立たせてみてはどうか、直感だがそんな風にも思っていた。
「こんにちは」
商会の二階には関係者しか出入りが許されていないため、知らぬ相手でもとりあえずそう声をかける。
小鳥が鳴いたのかと思うほど可愛らしい声に、トリュースは相手を二度見した。
長い髪をハーフアップにした品の良い令嬢は、あたたかみを感じさせる若草色の瞳でトリュースを見上げている。
「こんにちは」
瞳に魅入られたように令嬢から目が離せなくなったトリュースは、自分に驚いていた。
復讐のために身分を捨て、ただひたすらそのために生きている。恋も未来もすべて手放し、誰かに感情が動くことなどもう無いと思っていたのだ。
「あ、トニー!」
顔馴染の使用人を見つけたナミリアは、小さく会釈して通り過ぎて行った。
甘やかな残り香を漂わせながら。
振り返るとミヒアの部屋へ入って行く。
「トニー、今のご令嬢は」
「ナミリア様ですよ」
「ナミリア様?レンラ子爵家の?」
「そうです」
「そうか、あの方が」
トリュースはドレインから話を持ちかけられたときにナミリアのことも勿論調べたのだが、その頃ナミリアは王妃のコンテストの作品作りに入っていて、屋敷に籠もっており、その姿に出会うことはなかった。
「そうか・・彼女が」
トリュースの脳裏にナミリアの笑顔が刷り込まれ、その日以来忘れることができなくなった。
「ミヒア様」
「ナミリアさん!お久しぶりね。調子はどう?」
「あと少しなのですけど、差し色でちょっと色味を変えたらどうかと思いついて」
「上手くいくといいわね、応援してるわ」
「ありがとうございます!さっき見慣れぬ黒髪の方がいらしたのですが、新しい方ですか」
「ああ、会ったのね。彼はそう、新しく雇った調査員よ」
にこにこしながらミヒアがナミリアを見つめた。
今は黒髪に染め、眼鏡で地味に作り替えているトリュースだが、元は伯爵家の令息だ。現当主に問題があることが明らかになればトリュース、いやホングレイブ伯爵家のトリスタンとしてゲイザードに成り代わり、伯爵となることも不可能ではない。
いくら復讐のためとはいえ、つまらぬ裏稼業で手を汚させることなく、いつかあるべきところに戻してやりたい。
ミヒアはトリュースにディルーストを重ねていた。親を亡くしたこどもと、息子を亡くした母。引き合うものがあったのだ。
本懐を遂げさせてやりたいが、トリュースのように捨て身ではその後が悲惨だと人生経験豊富なミヒアにはわかる。
だからこそ、自分が後ろ盾となり、トリュースを守ってやろうと。
そして・・・
トリュースの隣にナミリアを立たせてみてはどうか、直感だがそんな風にも思っていた。
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