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7.疾走する変態 〜幼馴染女子サイド〜
しおりを挟む翌日。
案の定、彼は学校には来なかった。放課後の遠ざかっていく喧騒を尻目に、私は一人で日直の放課後の仕事である教室の掃き掃除をこなしつつ、無人だった自分の席の隣で立ち止まって嘆息する。
失敗したなぁ……ほんとバカ。
昨日帰ってからずっと、頭の中は彼の家での出来事ばかり。興奮と後悔とが目まぐるしく回って、勉強なんて手に付きやしなかった。
目を瞑れば今でも鮮明に思い出せる。彼の柔和で、それでいて張り詰めた胸の感触と、小動物の子供の様な保護欲を擽られる声、そして男子とは程遠く、女子としては少し刺激的な汗の香り。
____くそぅ……私、完全に変態だよぉ……。
認めたくないが、認めよう。私は昨日、完全に奴に性癖を歪められたと。おっぱいの膨らんだ女の子みたいな男子に劣情を催す、ど変態女にされてしまったと。
加害者の癖に相手のせいにするクソみたいな言い草だけど、仕方ないじゃないか。そうでもなけりゃ、とてもじゃないけどしでかした事を受け入れられない。
確かに! 確かに可愛いんだよアイツ! 昔から可愛い系だったんだよ!
ちっこくてやわやわで。その辺の女の子よか全然可愛い奴だった。全然私の好みとは正反対だったけど、母性本能を擽る奴ではあった。
とはいえ、だ。性的な興奮とか恋愛感情からは極度に遠い位置にあった筈だ。私の好みは間違いなくステレオタイプな清楚系長身細マッチョイケメン。低くて安心感を与える様な艶のある低音ボイスがフェチであり、可愛い系はタイプじゃない。ましてや、おっぱい膨らんじゃうTS系男子なんて……創作上のカプなら萌えるジャンルだけど、正直自分が対面する事を想像して興奮する様な物では無かった。
……なんだが、やってしまったのだよおおおおおもおおおおおおおおおおおお!
幾ら言い訳しても現実に帰結する。してしまった事からは逃れられない。
一端の情はある。やっぱり、このままではいたくない。謝りたい。謝って、やり直したい。
……でも、ほんとどうしよう。私がアイツの立場だったら、もう学校になんて……。
「っ、っ……」
周りをキョロキョロ見回し誰も居ない事を確認した後、私はポケットからスマホを取り出して昨日撮影した写真を見る。
夢じゃ……ないんだもんなぁ……。
罪の意識に頭を抱えつつ、同時にこの期に及んで動画録れば良かったな、とか、股間の方どうなってるか確認出来て無かったな、などと畜生な発想が浮かんで思い出す。
____あっ、そういえば。スレって今どうなってんだろ。
現実をどうこうする事ばかり考えていたせいですっかり頭から抜け落ちていた。逃避も兼ねて私は当該の掲示板とタイトルを検索してページを開き、そして俄に目を見開いた。
「……あれ?」
明らかに番号が、というか関連スレ自体が増えている。しかも幾つかBANされて……その上で、乱立してる?
何か、胸騒ぎがする。私は最新のスレッド目掛けて画面をタップし、スワイプして内容を漁っていく____
__________________
236:名無しさん:20xx/09/02 17:10
ID:xxxxxxkJ
えっちすぎ💢
237:名無しさん:20xx/09/02 17:10
ID:xxxxxx21
こんなとこでやらないでライブチャットとかで稼げばいいのに、何がそこまで駆り立てたんだろ
268:名無しさん:20xx/09/02 17:10
ID:xxxxxxi3
またBANされてりゅうううう
269:名無しさん:20xx/09/02 17:10
ID:xxxxxxaf
ポ○ノハブでの活躍をお待ちしております
270:名無しさん:20xx/09/02 17:11
ID:xxxxxx70
消すと増えます
https://m.imgur.com/xxxxxSv.jpg
271:名無しさん:20xx/09/02 17:11
ID:xxxxxxgj
≫270
たすかる
272:名無しさん:20xx/09/02 17:11
ID:xxxxxxIs
≫270
おっp
273:名無しさん:20xx/09/02 17:11
ID:xxxxxx2o
≫270
これはアカン(確信)
(主)274:名無しさん:20xx/09/02 17:11
ID:xxxxxxBv
≫270
こんなもの張って!ダメじゃ無いか!
!aku270 ※アクセス禁止コード
275:名無しさん:20xx/09/02 17:11
ID:xxxxxx70
≫270
もうみた
何だこれ、滅茶苦茶流れが速い。そんなメインストリームに乗る様な話題じゃ無い筈なのにどんだけ盛り上がってんだこれ。
異様な熱気に気圧されつつ、丁度貼られたG I Fを開いて見る。
____あのバカっ。
そこに映っていた内容に私は度肝を抜かれ、居ても立ってもいられなくなった。
__________________
慌ててスマホをポケットにねじ込み、大急ぎで教室を後にした。理由は簡単。責任が背中を押し、彼を止めるべく身体を走らせたのだ。
別に、知らないままだったら……関わらないままだったのならどうって事は無い。スルーしていたと思う。でも、昨日の今日だ。無視は出来ない。
「はぁっ、ああああっ……、はぁっ……」
息を切らし、夕暮れの中を肺と気管支が焼けるペースで走った。人生の中で一番の全力だったと、そう胸を張れる程度に走った。走って、やっとの思いで彼の家の門戸に辿り着くと、それはもうしんどそうに肩で息をして、壁に手をつき汗水垂らし、俯きながらドアチャイムを押した。
ピンポーン。当該用途として一般的な音が鳴る。
「ーーっ……はぁああっ、はぁっ……」
返答は無い。聞こえるのは自分の五月蝿い心臓の音と呼吸だけ。
クソッ、これ、親御さん居なかったらまず出て来ないな。
彼の両親は共働きだ。この時間に家に居る可能性は正直かなり低いだろう。ただそれでも、と祈る様にもう一度、と押しかけた所で、「はーい」と、女性の声がスピーカーから出力された。良かったとホッとしつつ、モニター越しに挨拶する。
「こ、こんにちは?」
「あら、僕くんの……って、あなたもしかして」
応対してくれたのは、彼の母親だった。
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