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第四話「平穏とはなにか?」
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チェーンは再び動き出し一箇所に集まると鎧を纏って元の白い機体に姿を変えた。それでも所々に破損箇所が火花を散らしており、右手で左上腕部を支えていた。機体はそのまま飛び立ち消え去る。
オルガリオンの勝利だ。そのはずだった。一人を除いては・・・。
この戦いで一度も体を動かさなかった機体があることをエスは気になってしまう。
「アール大丈夫?このままいける?」
アールの震えはコントロールパネルを操作できないほどになっていた。研ぎ澄まされた感覚は彼の想像を超えると恐怖になる。かつてのパイロットが襲いかかる光景。自分の知らない他星のナイフ状のウェポン。三位一体となっているはずだが、いつかはそれらからナイフで打ち抜かれる未来しか想像できなくなる。
(いつか誰かに殺される!)
アールは合体を強制解除するとそのまま飛びさってきえる。エスはコックピットを開けて逆光の中、その機影を追うがすでに手遅れであった。風だけが心地よく草原をかけ抜ける。
「で、これからどうする?勢いよく飛び出した割にはアールは逃走してロボにもなれない。村人からは厄介者あつかい。かつての先輩は敵になって襲ってくる始末、詰んでるだろ?これ・・・。」
「そうね・・・。」とエルに茶化されてエスは人差し指で鼻下を少しこすると、あたりを見回した。ゲノミーが蒸発した砂漠の砂は風に飛ばされながらもこの星の広大な森の茂みと川のせせらぎが日の光に反射してキラキラと輝いていた。
(もしかして、ここって既に平和な世界なの?)
エスはヘルメットを脱いで茶色い髪をそよ風にさらした。エスにとってパイロット養成機関に所属し外との世界を数年間遮断した日々を送っていた。周りには100名を超える同期生と争う日々。
全ては平和の維持のためと教わっていたが、ここまで不穏を叫ぶのは人間ばかりだ。髪をなびかせて自然と一体化した気持ちになってみる。
「おーい、とうするんだよー。」エルは悦に浸る少女の戯れに呆れたため息をつく。
「それならそれでも出来ることをしましょう。」
エスの結論が出た。さいわいこのビークル状態でも機体は大気内のイオンから無限のエネルギーをとることができた。
エスは自分の機体をエンジンルームをこじ開けて透明なアクリルで覆われたケースを抱えだした。中には球状のカプセルのようなものがケースの半分ほどを占めて内包されている。ケースからは20本ほどの導線が延びていた。
「これをあの川に下ろしてくれる?」
エルはエスの指示どおりに河川に導線を配置する。河川は一部、ゲノミーの浸食作用が影響していて赤く錆びた箇所が流れていた。エルが汚染された川への配線を完了させたのを確認しエスがコントロールパネルを操作する。線に電極が流れそれに反応して川の水がボコボコと沸きあがる。
はじめは不安そうにみていたエルやエス本人も川の水が電解されサラサラと水の流れが穏やかになると驚きと感嘆の声を上げた。
「これは君が考えたことではないな?」エスは尋ねた。
「まぁね。アールに教えてもらえて。」
最初の村に訪れる際にエスは熱心にメモを取るアールに声をかけた。アールにはオルガリオンのタブレットではなく紙のメモに残している記録があった。それはオルガリオンの戦闘以外での活用方法であった。
「あいつは優しいからな。この世界で生き残れないことを悟ったんだろう。」
エルはアールの敏感な精神を持つ性格の不憫さを憂いた。そんな中、川の水の色が変わったことに気づき、いつのまにか村の子供達が流水に飛び込んではしゃいでいた。
「それで、次はどうするつもりだ?」
「決まってる。迎えに行こう、アールを!」
エスはエルの言葉を待っていたかのように笑みを浮かべた。
オルガリオンの勝利だ。そのはずだった。一人を除いては・・・。
この戦いで一度も体を動かさなかった機体があることをエスは気になってしまう。
「アール大丈夫?このままいける?」
アールの震えはコントロールパネルを操作できないほどになっていた。研ぎ澄まされた感覚は彼の想像を超えると恐怖になる。かつてのパイロットが襲いかかる光景。自分の知らない他星のナイフ状のウェポン。三位一体となっているはずだが、いつかはそれらからナイフで打ち抜かれる未来しか想像できなくなる。
(いつか誰かに殺される!)
アールは合体を強制解除するとそのまま飛びさってきえる。エスはコックピットを開けて逆光の中、その機影を追うがすでに手遅れであった。風だけが心地よく草原をかけ抜ける。
「で、これからどうする?勢いよく飛び出した割にはアールは逃走してロボにもなれない。村人からは厄介者あつかい。かつての先輩は敵になって襲ってくる始末、詰んでるだろ?これ・・・。」
「そうね・・・。」とエルに茶化されてエスは人差し指で鼻下を少しこすると、あたりを見回した。ゲノミーが蒸発した砂漠の砂は風に飛ばされながらもこの星の広大な森の茂みと川のせせらぎが日の光に反射してキラキラと輝いていた。
(もしかして、ここって既に平和な世界なの?)
エスはヘルメットを脱いで茶色い髪をそよ風にさらした。エスにとってパイロット養成機関に所属し外との世界を数年間遮断した日々を送っていた。周りには100名を超える同期生と争う日々。
全ては平和の維持のためと教わっていたが、ここまで不穏を叫ぶのは人間ばかりだ。髪をなびかせて自然と一体化した気持ちになってみる。
「おーい、とうするんだよー。」エルは悦に浸る少女の戯れに呆れたため息をつく。
「それならそれでも出来ることをしましょう。」
エスの結論が出た。さいわいこのビークル状態でも機体は大気内のイオンから無限のエネルギーをとることができた。
エスは自分の機体をエンジンルームをこじ開けて透明なアクリルで覆われたケースを抱えだした。中には球状のカプセルのようなものがケースの半分ほどを占めて内包されている。ケースからは20本ほどの導線が延びていた。
「これをあの川に下ろしてくれる?」
エルはエスの指示どおりに河川に導線を配置する。河川は一部、ゲノミーの浸食作用が影響していて赤く錆びた箇所が流れていた。エルが汚染された川への配線を完了させたのを確認しエスがコントロールパネルを操作する。線に電極が流れそれに反応して川の水がボコボコと沸きあがる。
はじめは不安そうにみていたエルやエス本人も川の水が電解されサラサラと水の流れが穏やかになると驚きと感嘆の声を上げた。
「これは君が考えたことではないな?」エスは尋ねた。
「まぁね。アールに教えてもらえて。」
最初の村に訪れる際にエスは熱心にメモを取るアールに声をかけた。アールにはオルガリオンのタブレットではなく紙のメモに残している記録があった。それはオルガリオンの戦闘以外での活用方法であった。
「あいつは優しいからな。この世界で生き残れないことを悟ったんだろう。」
エルはアールの敏感な精神を持つ性格の不憫さを憂いた。そんな中、川の水の色が変わったことに気づき、いつのまにか村の子供達が流水に飛び込んではしゃいでいた。
「それで、次はどうするつもりだ?」
「決まってる。迎えに行こう、アールを!」
エスはエルの言葉を待っていたかのように笑みを浮かべた。
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