-絶対復讐ロボ- オルガリオン

聖千選

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第六話「復讐心もてあそび」

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 宇宙の静寂の中でシーと言う男の復讐心は煮えたぎっていた。なぜここまで感情が昂るのかわからない。オルガリオンと交戦し、伸ばしたチェーンを相手がナイフで捌き火花を放つなか、これまでの光景が浮かび上がる。

 「隊を抜けたいというのか?」

 「ええ、今後は自分がやりたい事をしようと思いまして。」

 シーが上層部に進言したとき、目の前の将官と佐官は互いの顔を見合わせた。理由を聞いたときにシーは「一身上の都合」としか答えなかったが、その瞳には故郷の自然の光景がうかんでいた。とはいえ彼は故郷を知らない。オルガリオンでゲノミーとの戦いに明け暮れた日々を送っていたシーには平和というものがわからなかった。

 とある星にゲノミーが取り憑いた。オルガリオンによってその驚異を倒しその星を解放したとき、彼はその自然がもつ雄大な美しさを知った。他の星のパイロットであるエルとアールはその自然を懐かしんでいる。

 (こんな世界もあるのか・・・。)

 軍からシーの願いが承諾されて後任への引き継ぎやシステムの修正を行った。そして最後に惑星の地質調査の任務があった。人工開発した自然が運用されて半世紀がたったその土地はシーの両親がいるところと聞かさせれていたアクロポリアであった。

 探査用車両を牽引するトラックの操縦はシーにとっては不馴れなものであった。舗装された道なりをギリギリで進む車両は宇宙をかける自由とは違っていた。

 (アイツ本当にオルガリオンのパイロットか?)

 そんな疑念がほかの調査隊からも感じ取れるが、そんなことが気にならないほど、シーの気持ちは高揚していた。

 (あの先に父さんと母さんがいる。)

 「おい、あれってお前の乗っていたロボじゃないのか?」

 シーの想いを遮って調査隊がざわつく。トラックの窓からのぞくと一線の黒き機影がシーの前を追い越す。

 (オルガリオン?)

 シーにとってその機体をそとから眺めることは初めてのことだった。プラズマをまとう機体はそのエネルギーを一点に集中させて前方にある都市に向かって解き放った。都市は一瞬で焼失した。

 「なぜ?」という疑問をもつ前に車両を加速させた。信じたくない現実はトラックが街に近づくたびに本当のことだとかたちづくられる。

 両親がいると言われた居住所は両隣と同じ形態をしているようだったが、どの家も火災が続いている。

 「シー・・・かい?」

 家の瓦礫から声が聞こえた。あわてて瓦礫を除くとふたりの男女が横たわっている。初老の男に息はない穏やかな表情を残している。そばにいた女は震えためでシーをやさしい瞳で見つめている。

 「母さん。」

 「大きくなったね。」

 最初で最後の会話はそれで終わった。シーの悲しみの涙は周りの炎に囲まれて冷たさを感じなかった。

 怒りと悲しみの感情が混ざったなかで意識を失い、次にシーが目覚めたときジャイロのコックピットのなかにいた。機体に付着したゲノミー因子の洗浄を行っていた。その間の記憶が思い出せない。
 目の前には先日、襲撃したアクロポリアの映像が流されている。アクロポリアに潜伏したテロリストの殲滅が目的であった。襲撃したのはシーの後輩がジャイロで駆る初仕事であった。アクロポリアはいまも連合軍の捜索隊が任務についていて炎上と銃声がいまも続いている。

 (ゲノミーが見せた夢か・・・?)

 ゲノミーは星に取り憑きその情報を吸いとる性質があるという。歴戦を経てその身体の金属に付着した異生体を通して伝わる情報が、夢かと思われたシーの頭の中を真実にしていく。

 「そうか・・・そこに父さんも母さんもいたんだね。ならこの機体は俺のカタキダネ・・・。」

 語尾を震わせながらシーは座席から立ち上がった。そしてパイロットスーツのは打ちポケットに装備された接近戦用のコンバットナイフを抜き出して振り返りその座席を幾重にも切り刻んだ。それがシーの兵役として最後の日だった。

 そして、その敵を前にシーはいまも戦っている。


 「なんとかならないのか?」エルは焦り混じりにつぶやく。

 「仕方ないかもしれない、だってここに両親の復讐のカタキがいるのだから・・・。」エスもまたつぶやいた。

 「オイオイ、ヤツの復讐に同情するのか?」

 「当事者として言っている。あの時、先輩のアクロポリアを襲撃の任務についた私の責任としてね。」

 エスは唇をかみしめた。
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