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第4話 伴侶候補その3、南川 柊奈
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しまった。
キョウシツへの戻り方がわからない。
建物に入ったはいいものの、ここに来るまでは三人組に付いて来ただけなのでどうやって来たかわからなくなってしまった。
ここの建物は無駄に構造がややこしいのが悪い。
階段を下って来たので上であることは間違いないな。うん。
とりあえず適当に上に行くか。
確かジュギョウの始まりと終わりには音が鳴るとスミレが言っていた。先程ゴゼンのジュギョウの終わりに流れていた音と同じ音が流れたのでもしかしたらジュギョウが始まってしまっているかもしれない。
だからなんだということなのだが、初日から集団行動の出来ない奴だと思われるのも癪だな。
と思っていたら女を発見した。あいつも迷っているのか? だが明確にどこかを目指して歩いている。
少なくとも俺よりはここについては詳しいだろう。とりあえずあいつに聞けばどうにかなりそうだ。
「おい、キョウシツへの戻り方がわからん。教えてくれ」
女の後をおって近づいたところで声をかけるが、女は振り向かないまま歩き続ける。ん? 聞こえなかったか?
そう思って次は女の進行を妨げるように前に出て声をかけた。
「聞こえなかったか? キョウシツへの戻り方がわからん。お前はここに詳しいか?」
すると、女はこちらの目を見て一言。
「何? 邪魔……」
と言って俺を避けて再び歩き出した。
ふむ。邪魔と言われてしまったな。
だがこの程度で折れるわけにはいかない。お前がその気なら——
どこまでも付いていって必ず吐かせてやる。俺のキョウシツの場所を——
そこから始まったのは俺と女の無言の競争だ。
俺が付いて来ていることを勘づいて女の足も早くなる。もちろん俺も早くなる。
階段を上り通路を歩き、どんどん知らない場所へと向かっていく。もう完全に俺はどこにいるのかがわからない。
ここまで来たら本当に教えてもらえないと困る。もはやこいつに俺の命を委ねていると言っても過言では無い。
と考えていた時、とある扉の前で女の足が止まる。
「どこまで……付いてくるつもり?」
「キョウシツを教えて貰うまでだ」
「……知らない」
といって扉を開ける女。
扉の先はどうやら外のようだ。こんな場所はあるんだな。
そのまま女に付いていき外に出る。どうやらここは建物の屋上のようだ。
「邪魔しないで」
「お前が俺のキョウシツを教えてくれるならばな」
そう言いながら屋上の中央へと歩いていく女。俺は扉の付近で待つ。
どうやら女はここに用があったみたいだ。
すると、女に魔力が集まるのがわかる。だがこれは……なるほど、星術か。
魔力とは星が持っているエネルギーだ。それはどの星も持っている。生き物はその魔力をうまいこと使っているだけに過ぎない。例外として自身で魔力を生み出す高位な存在もいるがな。
星術は他の星のエネルギーを使って魔法を行使する技だ。
星のエネルギーは強大だから他の星のエネルギーを使うことも原理的には不可能では無い。だがそれを人間が行うとはな。
他の星のエネルギーの扱いは非常に困難だ。簡単にいうならば慣れていない。
普段触れている魔力とは全く別物であるが故に扱い方も全く異なる。
それをわざわざ使ってまで何をするつもりだ?
と思っていると、女は広範囲に影響を及ぼす魔法を発動した。
これは……対魔獣障壁か。
なるほど。この近辺は人間の住処が多い。このテリトリーに魔獣が入ってこないように障壁を張っているのか。だが見たことがない複雑な魔法だな。それに効果範囲も尋常じゃ無い。この女が扱える魔法としては桁が外れている。
何か魔法の構築に仕組みがあるのか……あるいは星の力が俺の世界とは異なるのか。
どちらにせよ面白い。まさか魔王の息子である俺が面白いと思える魔法が存在するとはな。自分で言うことでは無いが俺の魔法は魔界でも群を抜いている自負がある。
この世界は魔力も薄く強者には期待できなかったが、その分技術などで工夫していると感じられる。ベントウやホレイザイなども俺の知らないことばかりだった。
少し興味が湧いて来たな。この世界に。
「面白い魔法じゃないか。星術を使うとはな」
「……星術なんて初めて聞いた」
「そうなのか? それじゃニホンでは何と言うんだ」
「興味ない……これもただ言われたとおりにやっているだけ……」
ふむ。自分がやっていることの凄さを理解していないのか、それとも当たり前なのか。
「あ、こんなところにいた。サボっちゃダメだよリエン君」
女について思考を巡らせていた時、扉の方から声をかけられた。
声の主はスミレだ。
「サボ? すまない道に迷ってしまってな。この女に付いて来たらここに辿り着いたのだ」
「この女って……南川 柊奈さん?」
「……勝手に付いて来た……早く連れてって」
「ミナミカワ ヒナというのか。覚えたぞ」
俺の言葉を聞くこともせず去っていくヒナ。
「ここで何してたの?」
スミレが俺に尋ねてくる。
「わからん。星術を使ってたな」
「星術? ん~と、多分魔除けの儀式かな?」
「魔除けの儀式?」
「そう。柊奈さんは由緒ある魔除けの一族の長女で、確かお昼頃にこうして毎日魔除けの儀式をしてるんだったかな?」
毎日これをか。
ふむ。どうしたものか。
「星術のリスクを理解しているのか?」
「魔除けのリスク? う~ん、どうなんだろ? 何か問題があるの?」
星術のリスクはあまり知られていないようだな。
「星術は、他の星の魔力を自身の体内に集める術だ。多用すると、他の星の魔力が蓄積して早死にするぞ」
「え……?」
人知れず住処を守る女。ミナミカワ ヒナか。
面白い。
キョウシツへの戻り方がわからない。
建物に入ったはいいものの、ここに来るまでは三人組に付いて来ただけなのでどうやって来たかわからなくなってしまった。
ここの建物は無駄に構造がややこしいのが悪い。
階段を下って来たので上であることは間違いないな。うん。
とりあえず適当に上に行くか。
確かジュギョウの始まりと終わりには音が鳴るとスミレが言っていた。先程ゴゼンのジュギョウの終わりに流れていた音と同じ音が流れたのでもしかしたらジュギョウが始まってしまっているかもしれない。
だからなんだということなのだが、初日から集団行動の出来ない奴だと思われるのも癪だな。
と思っていたら女を発見した。あいつも迷っているのか? だが明確にどこかを目指して歩いている。
少なくとも俺よりはここについては詳しいだろう。とりあえずあいつに聞けばどうにかなりそうだ。
「おい、キョウシツへの戻り方がわからん。教えてくれ」
女の後をおって近づいたところで声をかけるが、女は振り向かないまま歩き続ける。ん? 聞こえなかったか?
そう思って次は女の進行を妨げるように前に出て声をかけた。
「聞こえなかったか? キョウシツへの戻り方がわからん。お前はここに詳しいか?」
すると、女はこちらの目を見て一言。
「何? 邪魔……」
と言って俺を避けて再び歩き出した。
ふむ。邪魔と言われてしまったな。
だがこの程度で折れるわけにはいかない。お前がその気なら——
どこまでも付いていって必ず吐かせてやる。俺のキョウシツの場所を——
そこから始まったのは俺と女の無言の競争だ。
俺が付いて来ていることを勘づいて女の足も早くなる。もちろん俺も早くなる。
階段を上り通路を歩き、どんどん知らない場所へと向かっていく。もう完全に俺はどこにいるのかがわからない。
ここまで来たら本当に教えてもらえないと困る。もはやこいつに俺の命を委ねていると言っても過言では無い。
と考えていた時、とある扉の前で女の足が止まる。
「どこまで……付いてくるつもり?」
「キョウシツを教えて貰うまでだ」
「……知らない」
といって扉を開ける女。
扉の先はどうやら外のようだ。こんな場所はあるんだな。
そのまま女に付いていき外に出る。どうやらここは建物の屋上のようだ。
「邪魔しないで」
「お前が俺のキョウシツを教えてくれるならばな」
そう言いながら屋上の中央へと歩いていく女。俺は扉の付近で待つ。
どうやら女はここに用があったみたいだ。
すると、女に魔力が集まるのがわかる。だがこれは……なるほど、星術か。
魔力とは星が持っているエネルギーだ。それはどの星も持っている。生き物はその魔力をうまいこと使っているだけに過ぎない。例外として自身で魔力を生み出す高位な存在もいるがな。
星術は他の星のエネルギーを使って魔法を行使する技だ。
星のエネルギーは強大だから他の星のエネルギーを使うことも原理的には不可能では無い。だがそれを人間が行うとはな。
他の星のエネルギーの扱いは非常に困難だ。簡単にいうならば慣れていない。
普段触れている魔力とは全く別物であるが故に扱い方も全く異なる。
それをわざわざ使ってまで何をするつもりだ?
と思っていると、女は広範囲に影響を及ぼす魔法を発動した。
これは……対魔獣障壁か。
なるほど。この近辺は人間の住処が多い。このテリトリーに魔獣が入ってこないように障壁を張っているのか。だが見たことがない複雑な魔法だな。それに効果範囲も尋常じゃ無い。この女が扱える魔法としては桁が外れている。
何か魔法の構築に仕組みがあるのか……あるいは星の力が俺の世界とは異なるのか。
どちらにせよ面白い。まさか魔王の息子である俺が面白いと思える魔法が存在するとはな。自分で言うことでは無いが俺の魔法は魔界でも群を抜いている自負がある。
この世界は魔力も薄く強者には期待できなかったが、その分技術などで工夫していると感じられる。ベントウやホレイザイなども俺の知らないことばかりだった。
少し興味が湧いて来たな。この世界に。
「面白い魔法じゃないか。星術を使うとはな」
「……星術なんて初めて聞いた」
「そうなのか? それじゃニホンでは何と言うんだ」
「興味ない……これもただ言われたとおりにやっているだけ……」
ふむ。自分がやっていることの凄さを理解していないのか、それとも当たり前なのか。
「あ、こんなところにいた。サボっちゃダメだよリエン君」
女について思考を巡らせていた時、扉の方から声をかけられた。
声の主はスミレだ。
「サボ? すまない道に迷ってしまってな。この女に付いて来たらここに辿り着いたのだ」
「この女って……南川 柊奈さん?」
「……勝手に付いて来た……早く連れてって」
「ミナミカワ ヒナというのか。覚えたぞ」
俺の言葉を聞くこともせず去っていくヒナ。
「ここで何してたの?」
スミレが俺に尋ねてくる。
「わからん。星術を使ってたな」
「星術? ん~と、多分魔除けの儀式かな?」
「魔除けの儀式?」
「そう。柊奈さんは由緒ある魔除けの一族の長女で、確かお昼頃にこうして毎日魔除けの儀式をしてるんだったかな?」
毎日これをか。
ふむ。どうしたものか。
「星術のリスクを理解しているのか?」
「魔除けのリスク? う~ん、どうなんだろ? 何か問題があるの?」
星術のリスクはあまり知られていないようだな。
「星術は、他の星の魔力を自身の体内に集める術だ。多用すると、他の星の魔力が蓄積して早死にするぞ」
「え……?」
人知れず住処を守る女。ミナミカワ ヒナか。
面白い。
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