「日本で伴侶を見つけるまで帰ってくるな」と言われた魔王子

いくつになっても中二病

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第12話 伴侶候補に戦闘の極意を教えてやろう

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「残りは何部隊だ?」

「恐らくいて二部隊かそこらだろう」

「間違いなくあの雑魚パーティは消えてるだろうな」

「あぁあ、俺らで潰してやりたかったが弱すぎて先に参っちまうとはな。まぁいい。とりあえず楓さんのチームの対策を練るぞ」

 油断している奴らのお出ましだ。それも何かと突っかかってくる三人組じゃないか。

 ふむ。練習相手としては都合がいい。

「よっと」

「おわっ!? お前!! おい! 外国人だ!!」

「まさか一人で残ってやがったのか!?」

「しぶとい奴が!! だがノコノコと姿を現したのが運の尽きだな!!」

 俺が姿を現した途端、周囲への警戒を怠る三人組。これじゃ練習相手にもならないか?

「どうした? 喋りはいいからかかってこい」

「て、てめぇ!!」

「おい! 遠距離魔法だ!!」

「わかった! 火球!!」

 無闇に距離を詰めずにまずは様子見か。まぁ悪くないだろう。
 だがそんな魔法、俺に当たると思うか?

「おいっ! 当たらないぞ!!」

「あいつ、あの場からほとんど動かずに回避してる!!」

「ちっ!! 俺が接近してあいつの隙を作る!! お前らは隙を見て攻撃しろ!!」

「お、おう!!」

「任せろ!!」

 お、一人が接近してくるみたいだ。だが——


 警戒心が甘いな。


 近距離で威力のある魔法を展開している。接近して俺の隙を生み出すつもりらしいが対魔法の準備が出来ていない。それでは不足の事態に対応できないぞ?

 やはり練習にもならないか。

 三人組の内の一人が、俺にあと三歩で辿り着こうというところで、迫って来た奴が上空に打ち上がる。

「な、なんだっ!?」

「おい!!」

「魔法か!?」

 慌てすぎだ。そんな慌てていてどうする? ここからが本番だぞ。

 上空に打ち上がった奴に対して、今度は地面に向けて風が吹く。それにより加速して地面に落下する。落下地点には既に土属性の魔法が展開されている。

 これは魔界でも割と知られていることだが、高いところから何かを落とすと威力が増すという現象が起こる。ソウタロウとサクはラッカウンドウ? とか言っていたがニホンでも知られているらしい。

 もちろんこの状況を生み出すのは容易くはないが、上手く状況を生み出せば相手を罠にかけるのは雑作もない。

 地面に展開された土魔法はそのまま上空に打ち出され、空中に浮いている奴に当たる。

 これにより普通に土魔法を放つよりもいい効果が期待出来る。

「ぐはぁっ!!」

「おい!!」

「くそ!! 罠だ!! こいつの魔法じゃない!!」

 気付くのが遅いな。だが手遅れだ。

 今の光景を見た奴らはこう考える。「どこかで俺たちを見ている奴が地面から魔法を仕掛けてくる」だ。
 もちろん目は自然と足元を警戒する。同じ手は食わないとはな。

 この時一番警戒が薄いのは——上だ。

「いっけぇぇぇぇ!!」

「おらぁぁぁぁぁ!!」

 ソウタロウとサクが残りの二人の上空から落ちて来て、手に展開した魔法を相手にぶつける。

「なっ!?」

「ぐおっ!?」

 ソウタロウとサクの攻撃を受けた二人組は、何が起きたのかわからないといった表情でそのまま倒れた。

 よし。HPを一撃で削り切れる威力であることも確認出来たな。

「ふぅ~やったな! サクちゃん!」

「だからちゃんはやめてって!! でも本当に! ドキドキしたよ!!」

 ふむ。二人にとっても自信に繋がったようで何よりだ。

「それにしてもリエン君の魔法すごいね!!」

「あぁ!! 汎用性を無くした特化型の風魔法と土魔法を生み出すのは応用でやれるとはいえすごかったけどよ、この魔弾? はびっくりしたぜ!! まさか無属性の魔法とはな!!」

「言っただろ? 魔力を属性に変換するのにはロスが大きいから、魔力をそのまま使うのが一番威力が高いって。ニホンにもこれくらいの魔法はあると思ったんだがな」

「まぁ確かにこの威力が出るならそのまま使ってる人もいそうなもんだけどな! でも魔力はどちらかというとエネルギーって認識が大きいから変換するのかもよ?」

「でもわざわざ属性に変換するのが根付いているのも不思議だよね……普通はそのまま魔力をどう使うか考えない?」

「確かにな。研究段階で属性に変換出来ることに気がついたからそれが主流になってるのか……あるいは」

 うむ。二人が何の話をしているのかは全くわからん。
 だが残念ながらお喋りの時間はないようだ。

「二人共、警戒しろ」

「どうした?」

「え?」

 まずは手頃な相手で訓練して実践に臨みたかったが、予定が狂ったな。
 まだ距離は離れていたが、戦闘の気配に気付いたのか急接近して俺達の戦いを見ていた奴がいる。

「出てこい。いるのはわかっている」

「流石ですね。気配は隠していたはずですが」

「東郷——」

「楓さん!?」

 物陰から姿を現したのは、トウゴウカエデだ。

「最後残ってるのがあなた達ですか。それにあなたは……先日のデュエル騒動の」

「リエンだ」

「最後っ!? ってことは俺達しか残ってないのか!?」

「あぁ。俺たちが魔法を生み出しているうちに随分と減っていたな」

「なんで教えてくれなかったのリエン君!?」

「余計な情報だと思って。教えた方がよかったか?」

「あのなぁ……まぁいいや。で、どうするんだ。本命とバッタリじゃ奇策は使えないぞ」

 そう。本来であれば先程の作戦はこのトウゴウカエデ用に準備した作戦だった。

 俺が接近戦で隙を生み出して二人の設置した罠へ導く。それで足りないようであれば上空からの奇襲。残る敵も同様に俺が注意を引いてその隙に二人の魔弾を打ち込む作戦。

 だがそれも相手に手の内が知れてしまってはどうしようもない。

 だが、一人でいるのが気になるな。

「仲間はどうした?」

「付いてこれなかったので置いて来ました。恐らくどこかで倒されているでしょう」

「そんな……」

「おいおいまじかよ……」

 ふむ、これは連携の訓練では無かったのか?

「訓練の趣旨とは反すると思うが?」

「足手まといは不要です。私一人で事足りますので」

 そうか。まぁ悪い判断ではないな。弱いものを連れているとそこを漬け込まれ隙が出来る。であれば最初から一人でいいというのも納得がいく。

「それはそうかもしれないですけど……」

「なんか気にくわねぇな」

「どう思われても構いません。あなた方にどう思われようと気にしませんので」

 ほう。我が強いという点も評価が高い。面白い女じゃないか。

「いいだろう。戦いというものを教えてやる」

「あなたが……私に……出来るものならば、やってみせなさい。東郷家が長女、楓。参ります!!」

 楓が腰から細い片刃の剣を抜いて叫ぶ。


 よし、伴侶候補に戦闘の極意を教えてやろう。
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