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第13話 魔力の支配
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「はぁぁぁ!!」
よっ。いい剣筋だな。
「せぁぁ!!」
うむ。これも悪く無い。
だがその程度では当たらないぞ。
「身のこなしだけは一人前のようですね」
「カエデも悪く無い剣筋じゃないか」
「……あなたに呼び捨てにされる筋合いはありません!!」
おっと、今のは気迫が乗りすぎだ。そんなにまずいことを言ったか?
だがこの程度で動揺が剣筋に現れてしまうのはまだまだ甘い証拠だな。
だが俺も避けているだけではカエデの隙を生み出せない。
剣術か。武器に頼るのはあまり好きでは無いのだがな。
武器は脆い。俺の攻撃の威力に耐えられないからだ。それこそ魔神級の魔具でもない限りは使う意味がない。
逆にいえば相手の武器も俺の肉体の前にはほとんど意味をなさない。
だが今回に関しては剣をこの身で受けることは出来ないから仕方あるまい。俺自身が痛くなくてもHPとやらが減ってしまえば負けのようだし。
であれば……これでいいか。
「何のつもりですか?」
「ん? いや、俺も剣術で対抗しようと思ってな」
「そんな道端の棒切れで……ですか?」
俺はたまたま近くに落ちていた木の棒を拾い、構える。
ここは廃墟が立ち並んだ場所だから武器として代用できる物には事欠かない。
「悪いか?」
「舐められたものですね……切り落として差し上げましょう」
そう言った途端、眼前まで迫り横薙ぎを繰り出すカエデ。
俺は木の棒で受ける。
「なっ!? 何故!?」
「切れないことに驚いてるか? 技量の差があれば難しくないぞ?」
「あなたの剣技が私より優れていると?」
「圧倒的にな。それよりもいいのか?」
「??」
剣と木の棒を重ね合わせている間に、こちらの準備も整ったぞ?
「サクちゃん! 今だ!」
「だからサクちゃんじゃなぁぁぁい!! 風昇!!」
サクが発動した魔法により、俺とカエデは上空に打ち上げられる。
本来は俺に接近するタイミングでこれを使えればベストだが、カエデはそんな罠に引っかかる相手では無い。
二人には俺の元に接近させた場合は俺ごと吹き飛ばすように言っていたが、うまく判断してくれたようだ。
「そのまま落ちて!! 風降!!」
「俺もいくぜ! 岩球!!」
「甘く見られたものです。天翔」
そのまま俺とカエデは上から吹く風の勢いで落下し、打ち上げられてくる岩魔法に激突する予定だったが、カエデは上空で魔法を発動し魔法の効果範囲から脱した。
俺はもちろんそのまま落ちているが、木の棒で岩の魔法を打ち砕いて着地する。
「な、空中で移動したぞ!」
「まさか楓さんが天翔を使えるなんて……あれは空中に足場を生み出して移動する上位の風魔法だったはずです!」
「狙いは悪くありませんが、二度は受けません。あなた方の秘策としている奇妙な魔法も接近してこそ発揮できる物。であれば、近づかなければいいだけのことです!!」
「ちっ!! やっぱり魔弾も見られていたか……どうするリエン!!」
「魔法が来ます!!」
一度剣を腰の鞘に収めて構えるカエデ。
「翔燕斬——」
魔法名を口にし、剣を高速で抜きながら横薙ぎを繰り出すカエデ。
その動作から風の斬撃がいくつも飛来する。
俺は一瞬でソウタロウとサクの前に移動し、迫り来る斬撃を木の棒で切り落とす。
「リエン!!」
「次の魔法が!!」
そうしているうちにカエデは新たな魔法の準備をしていた。
全ての斬撃を切り落としたところでその魔法も発動される。
「十刀舞斬——」
カエデが魔法を発動すると、俺達を囲むようにして上空に十本の魔法剣が現れる。
そしてそれらが魂を持ったように襲いかかって来た。
狙いは防ぐ術のないソウタロウとサクだ。10人の剣士と同時に対峙している感覚だが、それぞれが別の意思で動いているわけではないので連携が取れている。
なるほど面白い技を使うな。
「これで終わりです。絶翔斬、極——」
10本の剣を俺が捌いている時に、カエデは決め手である魔法を繰り出して来た。
先程の飛来する数々の斬撃とは違い、一つの巨大で高威力な斬撃だ。
なるほど。一番強いというのも頷ける。
相手の弱点を見極めてそこを突き、有無を言わせない攻撃を畳み掛ける。
力も申し分無いし、勝ちまでの道筋も完璧だ。
だがカエデ。お前にはまだ足りて無いものがある。
「リエン!! すまねぇ!!」
「僕たちが足手まといに!!」
二人にも見せてやるか。本当の戦いとは——
空間を支配することが勝敗を分けるということを。
「なっ!?」
「あ、あれ?」
「ん? 魔法が……消えた?」
何が起きているか理解出来ないか。
俺は今、空間を支配した。正確には、ここ一帯の魔力を支配した。
それにより、カエデの10本の剣の魔法も巨大な斬撃も消え去った。
「何をしたのですか……」
「正直甘く見ていた。ここまでする必要は無いと思っていたがな」
本来はソウタロウとサクとの連携で勝利を掴みたかったがな。そこはカエデが上手だったと思うことにしよう。
「まだ終わりでは! ——?」
「気付いたか? 魔法を発動できないことに」
「え? あれ、僕もだ!」
「俺もだ!! 一体何したんだリエン?」
「なに、ここ一体の魔力を支配しただけだ」
「魔力を……支配?」
やはり知らないか。ソウタロウとサクが魔力で索敵出来ることを知らなかった時点で薄々気付いてはいた。
本来の魔法戦は、空間の魔力をどれだけ支配出来るかが鍵になる。
自分が支配した分相手は魔力が使えなくなるからだ。魔力操作とは本来自身の内に取り込んだ魔力ではなく、自分の外側の魔力を操ることを指す。
魔力を辿って相手の位置を把握するなどは初歩だ。一帯の魔力を掌握していれば自分の位置を魔力を介して探られるなんてことにはならない。
ちなみに星術の考え方はこの魔力の支配と似ている。
「そんなことが……可能なのですか?」
「俺も聞いたことはないぞ?」
「僕もです」
「さて、魔力を支配されれば勝負の行く末は決まったようなものなのだが、あいにく俺は魔法を使えない理由がある。まだ続けてもいいがどうする?」
俺はカエデに問う。正直これで勝っても嬉しくはないが、魔法を奪ってしまってはもう戦いにすらならないだろう。
「……私もまだまだ知らないことが多いということでしょうか。いいでしょう。この戦いは私の負けでいいです。ですが——あなたとはいずれ決着をつけさせて頂きます」
「もちろんだ。俺もこれで勝ったとは思っていない」
「では……私はお先に失礼します」
「あぁ」
そう言って振り返り歩き出すカエデ。右の拳は強く握りすぎて血が滴っていた。
相当悔しいのだろうな。悪いことをしたか。
「リ、リエン君!!」
「お、俺達……勝ったのか?」
「ちょっと卑怯な手ではあったがな。だが本来空間の魔力を支配出来なければ戦いにもならないことを考えれば、いい機会になっただろう」
「それだけどよ、本当に何が何だかわかんねぇよ……」
「ひょっとしてリエン君って……とんでもない人?」
俺はただの魔王子だ。
それにしても……カエデを見ると母上のことを思い出して切ない気持ちになるな。
よっ。いい剣筋だな。
「せぁぁ!!」
うむ。これも悪く無い。
だがその程度では当たらないぞ。
「身のこなしだけは一人前のようですね」
「カエデも悪く無い剣筋じゃないか」
「……あなたに呼び捨てにされる筋合いはありません!!」
おっと、今のは気迫が乗りすぎだ。そんなにまずいことを言ったか?
だがこの程度で動揺が剣筋に現れてしまうのはまだまだ甘い証拠だな。
だが俺も避けているだけではカエデの隙を生み出せない。
剣術か。武器に頼るのはあまり好きでは無いのだがな。
武器は脆い。俺の攻撃の威力に耐えられないからだ。それこそ魔神級の魔具でもない限りは使う意味がない。
逆にいえば相手の武器も俺の肉体の前にはほとんど意味をなさない。
だが今回に関しては剣をこの身で受けることは出来ないから仕方あるまい。俺自身が痛くなくてもHPとやらが減ってしまえば負けのようだし。
であれば……これでいいか。
「何のつもりですか?」
「ん? いや、俺も剣術で対抗しようと思ってな」
「そんな道端の棒切れで……ですか?」
俺はたまたま近くに落ちていた木の棒を拾い、構える。
ここは廃墟が立ち並んだ場所だから武器として代用できる物には事欠かない。
「悪いか?」
「舐められたものですね……切り落として差し上げましょう」
そう言った途端、眼前まで迫り横薙ぎを繰り出すカエデ。
俺は木の棒で受ける。
「なっ!? 何故!?」
「切れないことに驚いてるか? 技量の差があれば難しくないぞ?」
「あなたの剣技が私より優れていると?」
「圧倒的にな。それよりもいいのか?」
「??」
剣と木の棒を重ね合わせている間に、こちらの準備も整ったぞ?
「サクちゃん! 今だ!」
「だからサクちゃんじゃなぁぁぁい!! 風昇!!」
サクが発動した魔法により、俺とカエデは上空に打ち上げられる。
本来は俺に接近するタイミングでこれを使えればベストだが、カエデはそんな罠に引っかかる相手では無い。
二人には俺の元に接近させた場合は俺ごと吹き飛ばすように言っていたが、うまく判断してくれたようだ。
「そのまま落ちて!! 風降!!」
「俺もいくぜ! 岩球!!」
「甘く見られたものです。天翔」
そのまま俺とカエデは上から吹く風の勢いで落下し、打ち上げられてくる岩魔法に激突する予定だったが、カエデは上空で魔法を発動し魔法の効果範囲から脱した。
俺はもちろんそのまま落ちているが、木の棒で岩の魔法を打ち砕いて着地する。
「な、空中で移動したぞ!」
「まさか楓さんが天翔を使えるなんて……あれは空中に足場を生み出して移動する上位の風魔法だったはずです!」
「狙いは悪くありませんが、二度は受けません。あなた方の秘策としている奇妙な魔法も接近してこそ発揮できる物。であれば、近づかなければいいだけのことです!!」
「ちっ!! やっぱり魔弾も見られていたか……どうするリエン!!」
「魔法が来ます!!」
一度剣を腰の鞘に収めて構えるカエデ。
「翔燕斬——」
魔法名を口にし、剣を高速で抜きながら横薙ぎを繰り出すカエデ。
その動作から風の斬撃がいくつも飛来する。
俺は一瞬でソウタロウとサクの前に移動し、迫り来る斬撃を木の棒で切り落とす。
「リエン!!」
「次の魔法が!!」
そうしているうちにカエデは新たな魔法の準備をしていた。
全ての斬撃を切り落としたところでその魔法も発動される。
「十刀舞斬——」
カエデが魔法を発動すると、俺達を囲むようにして上空に十本の魔法剣が現れる。
そしてそれらが魂を持ったように襲いかかって来た。
狙いは防ぐ術のないソウタロウとサクだ。10人の剣士と同時に対峙している感覚だが、それぞれが別の意思で動いているわけではないので連携が取れている。
なるほど面白い技を使うな。
「これで終わりです。絶翔斬、極——」
10本の剣を俺が捌いている時に、カエデは決め手である魔法を繰り出して来た。
先程の飛来する数々の斬撃とは違い、一つの巨大で高威力な斬撃だ。
なるほど。一番強いというのも頷ける。
相手の弱点を見極めてそこを突き、有無を言わせない攻撃を畳み掛ける。
力も申し分無いし、勝ちまでの道筋も完璧だ。
だがカエデ。お前にはまだ足りて無いものがある。
「リエン!! すまねぇ!!」
「僕たちが足手まといに!!」
二人にも見せてやるか。本当の戦いとは——
空間を支配することが勝敗を分けるということを。
「なっ!?」
「あ、あれ?」
「ん? 魔法が……消えた?」
何が起きているか理解出来ないか。
俺は今、空間を支配した。正確には、ここ一帯の魔力を支配した。
それにより、カエデの10本の剣の魔法も巨大な斬撃も消え去った。
「何をしたのですか……」
「正直甘く見ていた。ここまでする必要は無いと思っていたがな」
本来はソウタロウとサクとの連携で勝利を掴みたかったがな。そこはカエデが上手だったと思うことにしよう。
「まだ終わりでは! ——?」
「気付いたか? 魔法を発動できないことに」
「え? あれ、僕もだ!」
「俺もだ!! 一体何したんだリエン?」
「なに、ここ一体の魔力を支配しただけだ」
「魔力を……支配?」
やはり知らないか。ソウタロウとサクが魔力で索敵出来ることを知らなかった時点で薄々気付いてはいた。
本来の魔法戦は、空間の魔力をどれだけ支配出来るかが鍵になる。
自分が支配した分相手は魔力が使えなくなるからだ。魔力操作とは本来自身の内に取り込んだ魔力ではなく、自分の外側の魔力を操ることを指す。
魔力を辿って相手の位置を把握するなどは初歩だ。一帯の魔力を掌握していれば自分の位置を魔力を介して探られるなんてことにはならない。
ちなみに星術の考え方はこの魔力の支配と似ている。
「そんなことが……可能なのですか?」
「俺も聞いたことはないぞ?」
「僕もです」
「さて、魔力を支配されれば勝負の行く末は決まったようなものなのだが、あいにく俺は魔法を使えない理由がある。まだ続けてもいいがどうする?」
俺はカエデに問う。正直これで勝っても嬉しくはないが、魔法を奪ってしまってはもう戦いにすらならないだろう。
「……私もまだまだ知らないことが多いということでしょうか。いいでしょう。この戦いは私の負けでいいです。ですが——あなたとはいずれ決着をつけさせて頂きます」
「もちろんだ。俺もこれで勝ったとは思っていない」
「では……私はお先に失礼します」
「あぁ」
そう言って振り返り歩き出すカエデ。右の拳は強く握りすぎて血が滴っていた。
相当悔しいのだろうな。悪いことをしたか。
「リ、リエン君!!」
「お、俺達……勝ったのか?」
「ちょっと卑怯な手ではあったがな。だが本来空間の魔力を支配出来なければ戦いにもならないことを考えれば、いい機会になっただろう」
「それだけどよ、本当に何が何だかわかんねぇよ……」
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