魔法世界の綺沙羅

みちづきシモン

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綺沙羅続き(仮)

12。新たな先生と魔力学

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 そうして病院を後にした一行は、先生に送られて帰宅した。綺沙羅は家に着いてから、神羅の書を開いた。
「わっショーい! どうしたでショか?綺沙羅ショま」
「妖精さんなら知ってるんじゃないかと思って。魔力の上げ方」
「簡単でショ。沢山質の高い魔力を放出するでショ。そうやって、魔力を少しずつ洗練していくんでショ」
「質の高い魔力? 上級魔法を沢山使うということ?」
「説明が難しいでショ。大切なのは良い師を見つけることでショ」
「そっか、洋文先生の紹介してくれる先生に頼むしかなさそうだね」
 次の日学校へ行くと生徒達がザワついていた。なんでも新しく赴任する先生がいるとのことだった。
「昨日洋文先生が言ってた人みたいだね」
「どんな人なんだろな」
「ふん、強くなれりゃどうでもいい」
「ウチは女の先生がええなぁ」
「ふふふ、いい先生だといいね」
 綺沙羅達は席に着いて待っていた。チャイムが鳴る。一人の女性が教室に入ってきた。その教師は水着だった。肌は褐色、眼鏡をかけている。幼女とも言える幼い顔に似合わないほどグラマラスな胸。
「真那先生!服を着てください!」
後から追いかけてきた教師が上着を持ってくる。
「ちゃんときてるお☆ これがあたいの正装だお」
「そんな格好では生徒に示しがつきません! せめてこれ羽織ってください!」
「うるさいお! あたいがこの格好でいいと言ってるんだお! 文句があるのかお?」
「あるに決まってるでしょう! そんな格好で彷徨くなら教員免許剥奪しますよ?」
「むぅ! 仕方ないお。それを羽織ってやるお」
 そんなやり取りの後、先生は前を向いて言った。
「今日からこの教室の担当に赴任した真那だお☆ 皆よろぴくね」
「前の担任の先生はどうなったんですか?」
 生徒の一人が尋ねる。
「別の担当になったお。とにかくあたいが、皆をビシバシ鍛えていくお」
 そうしてホームルームが始まり真那先生は簡単に自己紹介した。水魔法使いの彼女は魔力学という今までなかった学問の担当だった。魔法言語などの授業が少しずつ削られて入れられたこのクラスのみの特別講師だと言う。
「そんなの受け入れられるわけない!」
 生徒達はブーイングを起こした。だが、綺沙羅達は顔を見合わせ頷く。
「先生!もし魔力学を学べば、今まで使えなかった魔法も使えますか?」
「そういうことだお。人一人の限界を超えるのが魔力学だお」
 やっぱり、と綺沙羅達は納得した。
「そんな馬鹿な!俺は嫌だよ!クラス替えを希望する!」
「勿論いいお。前の担任である有都先生の元へ希望する人はそうするお」
 先程真那先生に上着を羽織らせた先生が「別の教室へ案内する」という。
 生徒達はゾロゾロと教室を後にした。残ったのは綺沙羅達五人のみだった。
「だから言ったんですよ、魔力学なんて無謀だって」
「それでも残った生徒がいるお」
「私達、魔力をあげたいんです!」
「綺沙羅王子殿下、否、王女様。激ヤバたんだお!」
「いや、なんなんだよ」
「書の妖精に近いものを感じるね」
「ふん、こんなガキになにができるんだ?」
「ウチらよりは年上やろ」
 そんな事をしているとホームルームが終わったチャイムが鳴る。
「まぁ話は後だお。今は決められた学業をこなすお」
 そうしてその日は魔法歴史から始まった。魔法が生まれた頃の歴史を学ぶというもの。先生は語る。
「皆さんはもう知っているでしょうが、この世界には神羅様という神様が実在しました」
 神羅は、初めて魔法を覚えた原初の人。そして、人々に魔力を与え魔法を広めた人。
「魔法を広めた当初、争いも起きました」
差別による争いは激化し、内紛にまでなったという。
「神羅様は嘆き、人々の真ん中に立って言いました。そんなに誰かを傷つけたければ私に向けなさい、と」
 人々は八つ当たりの魔法を神羅様に当て続けた。だが、血を流しても倒れぬ神羅に自分がしてきた罪を悔い改め崇め奉った。
「そんな神羅様にも寿命がきます。最後まで慈愛に満ちた神羅様は、皆永劫仲良く暮らしなさいと言いました」
 そして、最期の時を迎えた神羅は、安らかに眠る。だが、神羅を失った悲しみに人々は他人を責め始める。誰のせいで神羅を救えなかったのかと。それを一人の少女が制した。
「神羅様の娘、巫羅様は言いました。誰が母様を救えなかったのかは知りませんが、母様の遺言を殺すのは貴方達でしょう、と」
 巫羅は、その後戦争があった末、ごく日常にあった魔法と強力な魔法を分けた。強力な魔法を魔法世界という、神羅が作った世界に封印し、神羅の残したオーブと神羅が書き記した神羅の書を血縁者に受け継がせるようその頃作られた天園王国に王族制を作ったという。
「今はある程度魔導書という形で、強力な魔法も受け継がれているけど、最初は神羅の書のみでした。王族がその時に応じて魔法を解放していったんです」
 神羅のオーブと書は王族に引き継がれていく。奇跡的に王族が途絶えなかったためだ。
だが、そのまま続くとはいかなかった。
「ある王族が、天園王国の王族のみに力を集中するのは危険過ぎると言いました。そのため、力のある王族が神羅様のオーブを七つに分けたのです。一つは天園王国の王族が継ぐ力の半減した神羅様のオーブ。後六つは、火のオーブ、水のオーブ、雷のオーブ、木のオーブ、光のオーブ、そして闇のオーブ」
 そのうちの神羅のオーブと闇のオーブは今この国にある、と先生は言った。
「他のオーブは何処にあるんですか?」
「各国のトップシークレットなので、私も知りません。ですが、綺沙羅様はいずれ知ることになるとは思います。元々闇のオーブもこの国では所持していませんでしたから」
 歴史を学んでいるうちに、現代の話も織り交ぜていく先生。
「巫羅様の後の後継者は属性は様々ですが、とてつもない力を示した事で有名なんですよ。ちなみに神羅様は唯一無二の全属性魔法使い。巫羅様は光魔法使いでした。」
「お、ウチと同じなんやな」
「ふん、てめーよりもっと凄かったんだろ」
「そらそうやろけど、そんな言い方ないやん」
「もー、喧嘩しないの。来夢ちゃんも陸也君も。来夢ちゃんが光魔法使いなのは珍しいことだと思うよ」
 先生は頷き、光魔法と闇魔法について語る。
「光魔法の巫羅様の子は、闇魔法使いでした。血筋に滲みこんだ様々な魔法が派生していったんですが、光魔法と闇魔法は、なかなか生まれない非常に稀有な魔法だったんです」
 その中でも、特質して闇魔法特化の血筋の家柄や光魔法特化の血筋の家柄もあるという。逆にそういう家に生まれてその家柄の魔法が使えないと落ちこぼれ扱いもされたとか。今ではなくなったそうだが。
「神羅様と巫羅様の血を引く王族は、色んな魔法使いがいるんですか?」
「様々な魔法使いがいていずれの方々も強力な魔法使いですよ。その辺はまた次回話しましょう」
 チャイムが鳴る。次の時間は魔法文学など、午前中をみっちり過ごした。
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