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メルディ国編
リジーさんの怒涛(?)の日々だヨ②
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気を取り直して、まずはトキの中からこの部屋に元々あった物を取り出し、置かれていた通りに置き直す。トキにこの辺等と指示すると、指示した通りの場所に指示した通りに出してくれるから滅茶苦茶楽だった。
次に――再び下の段のベッドに腰掛け、自分の現状についておさらいしてみる。現状、あたしに必要な事ってなんだろう?
「買い戻し交渉は……時間を決めておこう。その時間以外は受け付けないって事にして、面倒事を避ける意味でも兵舎にいない方がいいよね」
傲慢な人なら、こちらの都合なんてお構いなしで勝手な行動をするのは間違いない。そんなのに付き合おうとは思わないから、時間とか立会人とか最低限必要な条件を決めて、こちらの条件を守れないのはパスと宣言しておくのがベストだろう。
で、交渉となっても、やっぱり傲慢なのは傲慢だろうから、たたんで捨てる必要性も出てくるかもしれない。
「ああ……じゃあ、ネスに戦い方を教えてもらおう」
闘神の加護のお蔭で身体は勝手に動くけれど、自分でも意識して動けるようになっておけば、これ以上の闘神等の干渉を防げる……筈。
しかも、敵対行動を取る奴には容赦しないと見せ付けておけば、今後が楽になる可能性もある。
そうと決まれば、後でネスに頼んでみよう。
「そうだ。冒険者ギルドにも顔を出して、回収した冒険者の物と思われる品を渡さないと」
この品を持っていた人達がどうなったのか、あたしは知らない。ただ回収した品物を捜索等、何かしらの足掛かりにする事は可能だ。
ギルド証明書――所謂ギルドカードも回収した物の中にあるから、ルチタンのギルド長がまともなら十分な気がする。
「ついでに、もし可能なら討伐依頼を受けて、魔物退治の訓練もしておこう」
あたしがこれまでに遭遇したのは野良オオカミのみ。しかも、何となく出来ちゃった風魔法で吹き飛ばしただけ。他はルベルが消し炭に、ゴーレム馬が喜々として蹴り飛ばしていたから戦闘なんてしていない。これじゃ今後がマズイよね、多分。
特に異世界物語のテンプレ、人型の魔物への忌避感とか、実際どんなものか早々に経験しておいた方がいいだろう。現実は物語とは違うが、考えられるマイナス要素はひとつでも消すに限る。
「後は……ああ、夜に時間を見付けてマルにこの世界の常識とか魔法の事とか教えてもらわないと」
『分かりました。その時はお任せ下さい』
「わ!? あれ、いたの?」
『いました』
……ん? ヘルプ機能に対し『いた』という表現はおかしい? いや、昨夜は突然消えたから、『いた』という表現で間違いないか。
「マル。あたしが遣っておいた方が良い事って他にある?」
『神々からの贈り物の中を確認しておいた方がいいのではないでしょうか』
「ああ……それがあったか……」
神にとって不要な物を押し付けられたのだ。できれば見たくない気持ちもあるけど、ただ放置しておくのも問題あるか……。
「他には?」
『一気に色々と詰め込み過ぎても問題ありますので、その他は追々覚えていくのが良いと思います』
「確かに……じゃあ夜のお勉強は、最低限知っておいた方がいい事を優先的にお願い」
『分かりました』
さて。これで行動が決まった。
じゃあ、ネス達の所にご飯をどうするか確認がてら行って、ついでに決めた事を伝えましょうかねー。
「……という訳で。ネス、戦い方を教えてね」
ネス達の部屋を訪ね、あたしのと同じ作りの部屋に入った途端、先程考えた事を順番に説明。すると、ネスもルベルもポカンとしてしまった。
「……リジー、戦えるが?」
「え?」
「カウンター。見事、だった」
「ああ……」
我に返ったネスがポツポツと呟く。
その言葉を聞き、戦えるの意味があたしの意図するものと違うのに気付く。どうしよう? ああ、そうだ。
「体は危険に反応して勝手に動くよ。でも、あたしってば自力で戦った事ないから、戦えているのかどうか知らないんだよね」
「……え?」
「どういう事かのぉ?」
えーと……確か、神々の設定によると……。
「赤ん坊の時から自力で食料調達が出来るようになるまでの幼少期は、基本的にルベルが狩りとかしてたでしょうが」
「うむ。そうじゃのぉ」
おおお! 違和感なくルベルがあたしの言葉を受け入れている! 本当に設定を刷り込んであるんだ。
「独り立ちした後は、その辺で出会う獣とかは魔法で吹き飛ばしていたし、魔物は……なぜか全く遭遇しなかったから、あたしの動きは基本的に野生のカン頼り。戦いじゃない」
嘘を信じて貰うには、本当の事の中に嘘を混ぜておくと良いと言う。
設定自体は嘘だけど、獣を魔法で吹き飛ばしたのも、魔物に遭遇しなかったのも、動きは加護任せの為、野生のカンの様なものである事も、戦った事がないのも本当。だから、自分自身、これが嘘だと分かっている筈なのに、妙にリアルに感じてしまう。
「野生のカン……リジー、野生児?」
「山に住んでたからね」
「なるほど」
唖然としていたネスも納得している。こんな時でも凄いな。『山に変人あり』の都市伝説(?)は。
というか、幼少期はルベルに育てられたという寝耳に水な設定すらあっさり受け入れるネスも凄いか……。
「そういう事なら、分かった。明日、魔物退治、行く」
「うん、よろしく。ついでに冒険者ギルドに行って、回収品を渡したり、討伐依頼でも受けられないか確認したい」
「分かった」
「ワシもそれでいいのじゃ」
「じゃあ、決まりという事で」
さくさくっと決まったなー。
なにより、「面倒な奴等と会いたくないから、交渉可能時間を決めておいて、それ以外の時間は外出する!」と言った時、ネスもルベルも揃って頷いたからなぁ……。この辺の意見が一致したのが大きいか。
「交渉の事とかをモンド隊長かサージット隊長に伝えて、夕飯を食べに……ってダメだ。ルベルの食べる量が半端じゃない。伝えたら戻ってきて、夕飯を作って食べよう」
「賛成なのじゃー」
ネスがうんうんと頷き、ルベルがニコニコしながら手を上げる。
なんか……妙に可愛らしいんだよね、2人共。この際、餌付けでも――って無理だ。あたしの料理スキルは凡人レベルより下。基本的に食べられればいいって人だから、美味しい物を期待されても困る。その辺はきっちり念押ししてから作らないと。
……量さえあればいいと言われたら、それもそれで微妙だけど……。
まあいい。
さて。次はモンド隊長かサージット隊長を探しますか。
次に――再び下の段のベッドに腰掛け、自分の現状についておさらいしてみる。現状、あたしに必要な事ってなんだろう?
「買い戻し交渉は……時間を決めておこう。その時間以外は受け付けないって事にして、面倒事を避ける意味でも兵舎にいない方がいいよね」
傲慢な人なら、こちらの都合なんてお構いなしで勝手な行動をするのは間違いない。そんなのに付き合おうとは思わないから、時間とか立会人とか最低限必要な条件を決めて、こちらの条件を守れないのはパスと宣言しておくのがベストだろう。
で、交渉となっても、やっぱり傲慢なのは傲慢だろうから、たたんで捨てる必要性も出てくるかもしれない。
「ああ……じゃあ、ネスに戦い方を教えてもらおう」
闘神の加護のお蔭で身体は勝手に動くけれど、自分でも意識して動けるようになっておけば、これ以上の闘神等の干渉を防げる……筈。
しかも、敵対行動を取る奴には容赦しないと見せ付けておけば、今後が楽になる可能性もある。
そうと決まれば、後でネスに頼んでみよう。
「そうだ。冒険者ギルドにも顔を出して、回収した冒険者の物と思われる品を渡さないと」
この品を持っていた人達がどうなったのか、あたしは知らない。ただ回収した品物を捜索等、何かしらの足掛かりにする事は可能だ。
ギルド証明書――所謂ギルドカードも回収した物の中にあるから、ルチタンのギルド長がまともなら十分な気がする。
「ついでに、もし可能なら討伐依頼を受けて、魔物退治の訓練もしておこう」
あたしがこれまでに遭遇したのは野良オオカミのみ。しかも、何となく出来ちゃった風魔法で吹き飛ばしただけ。他はルベルが消し炭に、ゴーレム馬が喜々として蹴り飛ばしていたから戦闘なんてしていない。これじゃ今後がマズイよね、多分。
特に異世界物語のテンプレ、人型の魔物への忌避感とか、実際どんなものか早々に経験しておいた方がいいだろう。現実は物語とは違うが、考えられるマイナス要素はひとつでも消すに限る。
「後は……ああ、夜に時間を見付けてマルにこの世界の常識とか魔法の事とか教えてもらわないと」
『分かりました。その時はお任せ下さい』
「わ!? あれ、いたの?」
『いました』
……ん? ヘルプ機能に対し『いた』という表現はおかしい? いや、昨夜は突然消えたから、『いた』という表現で間違いないか。
「マル。あたしが遣っておいた方が良い事って他にある?」
『神々からの贈り物の中を確認しておいた方がいいのではないでしょうか』
「ああ……それがあったか……」
神にとって不要な物を押し付けられたのだ。できれば見たくない気持ちもあるけど、ただ放置しておくのも問題あるか……。
「他には?」
『一気に色々と詰め込み過ぎても問題ありますので、その他は追々覚えていくのが良いと思います』
「確かに……じゃあ夜のお勉強は、最低限知っておいた方がいい事を優先的にお願い」
『分かりました』
さて。これで行動が決まった。
じゃあ、ネス達の所にご飯をどうするか確認がてら行って、ついでに決めた事を伝えましょうかねー。
「……という訳で。ネス、戦い方を教えてね」
ネス達の部屋を訪ね、あたしのと同じ作りの部屋に入った途端、先程考えた事を順番に説明。すると、ネスもルベルもポカンとしてしまった。
「……リジー、戦えるが?」
「え?」
「カウンター。見事、だった」
「ああ……」
我に返ったネスがポツポツと呟く。
その言葉を聞き、戦えるの意味があたしの意図するものと違うのに気付く。どうしよう? ああ、そうだ。
「体は危険に反応して勝手に動くよ。でも、あたしってば自力で戦った事ないから、戦えているのかどうか知らないんだよね」
「……え?」
「どういう事かのぉ?」
えーと……確か、神々の設定によると……。
「赤ん坊の時から自力で食料調達が出来るようになるまでの幼少期は、基本的にルベルが狩りとかしてたでしょうが」
「うむ。そうじゃのぉ」
おおお! 違和感なくルベルがあたしの言葉を受け入れている! 本当に設定を刷り込んであるんだ。
「独り立ちした後は、その辺で出会う獣とかは魔法で吹き飛ばしていたし、魔物は……なぜか全く遭遇しなかったから、あたしの動きは基本的に野生のカン頼り。戦いじゃない」
嘘を信じて貰うには、本当の事の中に嘘を混ぜておくと良いと言う。
設定自体は嘘だけど、獣を魔法で吹き飛ばしたのも、魔物に遭遇しなかったのも、動きは加護任せの為、野生のカンの様なものである事も、戦った事がないのも本当。だから、自分自身、これが嘘だと分かっている筈なのに、妙にリアルに感じてしまう。
「野生のカン……リジー、野生児?」
「山に住んでたからね」
「なるほど」
唖然としていたネスも納得している。こんな時でも凄いな。『山に変人あり』の都市伝説(?)は。
というか、幼少期はルベルに育てられたという寝耳に水な設定すらあっさり受け入れるネスも凄いか……。
「そういう事なら、分かった。明日、魔物退治、行く」
「うん、よろしく。ついでに冒険者ギルドに行って、回収品を渡したり、討伐依頼でも受けられないか確認したい」
「分かった」
「ワシもそれでいいのじゃ」
「じゃあ、決まりという事で」
さくさくっと決まったなー。
なにより、「面倒な奴等と会いたくないから、交渉可能時間を決めておいて、それ以外の時間は外出する!」と言った時、ネスもルベルも揃って頷いたからなぁ……。この辺の意見が一致したのが大きいか。
「交渉の事とかをモンド隊長かサージット隊長に伝えて、夕飯を食べに……ってダメだ。ルベルの食べる量が半端じゃない。伝えたら戻ってきて、夕飯を作って食べよう」
「賛成なのじゃー」
ネスがうんうんと頷き、ルベルがニコニコしながら手を上げる。
なんか……妙に可愛らしいんだよね、2人共。この際、餌付けでも――って無理だ。あたしの料理スキルは凡人レベルより下。基本的に食べられればいいって人だから、美味しい物を期待されても困る。その辺はきっちり念押ししてから作らないと。
……量さえあればいいと言われたら、それもそれで微妙だけど……。
まあいい。
さて。次はモンド隊長かサージット隊長を探しますか。
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