精霊に誘われて異世界で魔女をやってます

美緒

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 名前を付けた事によって起こった、今までにない変化。
 流石のマナも事態の急展開に暫し呆然とする……が。
 ここが異世界である事から、何が起こっても不思議ではないと妙に達観し、溜め息一つで早々に割り切ってしまった。

「取り敢えず、サーシュが知っている事、洗い浚い話して」

 据わった黒曜石の瞳に射貫かれ、精霊王は一瞬身震いし(顔が赤いのは無視する)。
 ゆっくり深呼吸すると、ポツポツと話し始めた。

 曰く、精霊王と契約できるのは、全ての精霊に認められた者だけである。精霊王と契約すれば、全ての精霊魔法が使えるので、王魔法が使える様になる。
 だが、マナは最初から王魔法が使えたので精霊王との契約は一種の世界との契約みたいなもので、名前を付けていない精霊ともつながりを持てるようになるので捜索は楽になる……筈。

 話を聞き、マナは呆れる。その『筈』ってなんだ、『筈』って! 断言せんかい!
 と、サーシュに言った所で無意味なのでツッコミを封印し、やれやれと天を仰ぐ。

「名前のない精霊ともつながりがあるなら、わざわざ人の世界に行く必要ないよね?」
「いえ。流石に、会った事もない精霊の捜索は感覚だけでは難しいです。その精霊が司っていたモノや場所に行って気配を追うのが一番楽だと思いますよ」

 それから……と、サーシュは名前について説明してきた。
 曰く、精霊の名前を呼べるのは契約した者か、精霊自身が名前を呼ぶ事を承諾した者だけ。名前を呼べる者が精霊の紹介をしても、精霊が承諾しない限り呼ぶ事は不可能。
 つまり、現時点で精霊達の名前を呼べるのは、世界中でマナ唯一人ただひとりという事になる。

「クー達は、自分から人間に名前を教えれば呼んでもらえるようになるって事?」
「そうですね。最も、私はマナ以外に呼んでもらうつもりはないので、教える気は皆無ですが」
『うんうん』

 サーシュの言葉に、精霊達が一斉に頷く。妙な所で気が合っている。

「あれ? 精霊同士なら名前呼べるの?」
「いえ。こちらも精霊自身が教えなければ呼ぶ事は出来ません」
「精霊王様は、僕達にも名前呼びさせるつもりないようだから、僕達は精霊王様の名前を呼ぶ事は出来ないよ」
「他の精霊は、マナに名前を付けてもらえて嬉しくて、自慢ついでに教えちゃったから呼べるだけ~」
「教えてない精霊は私達の名前を呼べないにゃ~」

 マナの疑問に、サーシュ、クー、ドリー、ルルーが順に回答する。精霊王は、本気でマナ以外に名前を呼ばせる気がないようだ。
 妙な独占欲(?)だなぁと思いつつもスルーし、マナはアルフレッドとイクシオンを見た。

「ねえ。精霊達の名前、呼べる?」
「え?」
「あ……」

 アルフレッドもイクシオンも、何度も聞いている精霊の名前を呼ぼうとするが何故か口が固まり動かなくなる。
 二人が困惑のままマナを見ると、「よーく分かった!」とマナが頷き精霊達にイイ笑顔を向けた。

「彼等にも呼ばせるつもりはないと?」
「「「ない!」」にゃ!」

 取り敢えず、現時点で彼等は精霊のお眼鏡には適っていないようだ。頑張れ。あ、でも。イクシオンは頑張っても無理っぽそう。

「名前の事、契約の事、精霊の事とか、まあ分かったから、精霊を助ける為に現地へ行ってみますか」

 軽~くマナが言うと。

「一緒に行く!」
「僕も!」
「当然にゃ!」
「ふふふ。離れるつもりはありませんよ」

 クー、ドリー、ルルーが元気よく宣言する横でサーシュがニコリと笑い、その場に居る人間、精霊全てにドン引きされ。

「早まった。ずぅえっっったい! 早まったっ!!」

 マナは数分前の自分の決断と行動を思いっ切り反省するが既に後の祭り。
 人間、こうなったら諦めるが肝心。負けるが勝ち(違う)。
 一人悶々と葛藤する目の前で、クーがズビシッと精霊王であるサーシュに指を突き付けた。

「精霊王様! たとえ精霊王様でも、マナに面倒を掛けるなら、この森に住む全ての精霊の力を持ってして森に縛り付けるからねっ!!」
「面倒なんて……」
「掛けてるにゃっ! マナをドン引きさせるような発言はマナの心に良くないにゃ! だから、禁止にゃっ!!」
「ドン引き……」
「マナがツッコミ入れられない時点で、その発言はNGだよ~」
「……えぬじー?」
「良くないとか、ダメとか、そんな感じのマナ用語」
「……、……こんなタイミングで、マナとの親密度をあぴーるしなくても……」
「「「このタイミングがベスト!!」」にゃ!」
「……」

 マナの苦悩(?)を読み取ったのか、長三人衆が精霊王に釘を差している。まさに、出る杭は打たれる状態?
 まあ、ちゃっかり自分達の方がマナと仲良いアピールをしているが、それはさておき。
 沈黙でもって善処する事を示したサーシュに長達は満足そうに頷き。
 そんな精霊達の遣り取りを唖然と見ていたマナは首を傾げる。

「精霊王を森に縛り付けるとか出来るの?」
「出来るよ~」
「えっと……『個』としては精霊王様の力が精霊では最強だけど、他の精霊が力を合わせれば、精霊王様を何とかする事が出来るよ」
「それが出来にゃければ、万が一、精霊王様が暴走した時に止められないからにゃ~」
「マナという例外はあるけれど、結局のところ『個』は『全』に敵わないって事っ!」
「私は例外扱いですか……」
「「「当然!」」にゃ」

 断言されてしまった。
 元の世界に居た時は、至って普通の女子高生だったのに……。どうしてこうも規格外というか例外というか、常識の埒外らちがい扱いされる様になってしまったのだろう。
 若干黄昏そうになりながらも顔を上げ、マナはキッと空を睨み拳を握り締めた。

「……何やってるの、マナ……」
「……聞いちゃダメにゃ、クー」
「……そうだね、ルルー」
「……にゃあ」

 クーとルルーの生温~い眼差しに気付き、マナは少し顔を赤らめるが。

「マナは何を遣っていても可愛いですね」

 サーシュの、やっぱりどうしてもKYな発言に青ざめ、クーとルルーの正面に座り込み、その小さな手を握った。

「ごめん。クーとルルーだけが頼りだよ」
「……うん。僕も何となくそう思った」
「ごめんにゃ、マナ……」
「え? 僕は!?」
「「「ドリーは対象外っ!」」にゃっ!」
「私は?」
「「「規格外っ!」」にゃっ!」

 速攻で否定されるドリーとサーシュだが。

「何となく、精霊王様よりはマシな気がするから、僕、対象外でもイイや」
「……」

 ドリーが妙に笑顔でイイと言えば、マナ、クー、ルルーが苦笑しながらも反論せず。

「と、取り敢えず、旅に出る準備しようか……」
「え? 何か準備する必要ある?」
「マナは、魔法で何でも出せるから必要ないにゃ」
「あ……そう言えばそうだった」

 話を逸らそうと呟いたマナの言葉にクーとルルーが首を傾げる。
 言われてマナも気が付いた。そうだ。この世界での生活って、全て自分の魔法で何とかしているんだった。元の世界の常識にとらわれて忘れていた。
 手ぶらでも何ら問題なし。マナは精霊達を見回す。

「皆は準備しなくて大丈夫?」
「僕は、この身一つあれば大丈夫!」

 クーがえへんと胸を張り。

「あ、僕は自分が司る樹の一部……葉っぱくらいは持って来なきゃ。同族に力分けたり、協力したり出来ないや」

 言うが早いか、ドリーが森へと飛んで戻り。

「寝床が欲しいにゃ」

 ルルーは呟き、マナの影の中にスッと消え。

「この世界自体が私の司っているモノな感じなので、何も問題ありません」

 サーシュがニコニコとマナを見。

「えーと……アルとイクスは直ぐに旅立てるの?」

 マナの問いに、口を挟む事も出来ず立ち尽くしていた人間二人がハッと気付き、慌てて寝泊まりしていたキャンプ地を片付け。

「準備、出来ました」

 二頭の馬を引き、マナの前に立つ。
 そのタイミングで都合よくドリーも戻ってきたので。

「じゃあ、行きますか!」

 箒片手にマナが宣言した。
 目指すは、アルフレッドとイクシオンの国ダジゲート。
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