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15話 失踪
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俺が無理やり葵を抱いたあの日から数日後…
葵は俺の前から姿を消した。
戻らなくなってから一週間ほどが経っていたが、葵の足取りは未だに掴めなかった。
大樹に聞いてバイト先にも行ってはみたものの、やはり数日前から無断で休んでるらしく、こんな事は初めてだからと店長さんも心配していた。
俺が手離したくない一心で無理やり抱いた事で、余計に葵を傷つけてしまったのか…
もしくは、もうこんな訳の分からない症状を抱える俺に嫌気がさしたのか…
どちらにしても俺は嫌われちゃったんだ…と思い、ため息をついて一行も進まないまっさらなパソコン画面を閉じて項垂れた。
シーンと静まり返ったリビングを見渡せば二人で過ごしてきた日々が蘇る…
決して長い時間ではなかったけど、俺には特別な時間だったんだなぁと、改めて葵の存在の大きさにに気付かされる。
「どこ行っちゃったんだよ…葵…」
静まり返った部屋に、自分の声だけが響きまたため息をつく。
すると突然携帯が震えだし、画面を確認すれば大樹からの着信。
どうせ原稿の催促だろうと仕方なく重い体を起こし、渋々電話に出た。
「あー大樹…?まだなんも…」
(はぁっ、わかったんよ!居場所っ!)
「あ?居場所…?」
(葵くんのやっ!)
「えっ!?葵!?」
(おん、せやけど…)
「どこっ!?どこにいたんだよっ」
(いやっ、それが…)
大樹が濁した言葉を遮るように食い気味に言葉を被せれば、実に歯切れの悪い返事が返ってきて急に不安に襲われる…
「んだよ…」
(ショック受けんどいてな…)
「どういう事だよ…おい…まさか…!?」
(あ、いや、ちゃうねん…!場所がな…)
「場所…?」
(おん…歓楽街やねん)
「歓楽街…?別にそれがなんだよ…」
確かカフェのバイトもそこら辺じゃなかったか?
かけ持ちするなら近場でもおかしくないだろ…
大樹は少し間を置いてボソッと呟くように答えた。
(…風俗)
「ふぅ…ってその…」
(おん、男が体売るやつや…)
あぁ…そうか…
ショックと言うより合点がいった。
何より即金を稼ぐには手っ取り早いし、夕方バイトが終わった後遅くなるのも、初めてじゃないであろうあの感覚も全てはこのせいか…
一人納得している間、無言の俺に大樹から心配そうに声をかけられると、はっとして我に返る。
(紫雨さん?大丈夫?)
「あ…うん、平気。色々納得いったわ…そんで
大樹は?今どこにいんの?」
(おん、その店の前や)
「マジかっ!あ…いや、けどまず葵の気持ちが知りたい…もう嫌われちゃったんなら諦めた方がいいんだろうけど…」
(それはないと思うで?責任感じてんとちゃう?)
「うん…」
(あ、あとな?借金の事なんやけど…)
「なんか分かったの?」
(おん、昔…友達との間に色々あったのが発端らしい…)
「友達…?」
(おん…詳しいことは分からんのやけど…)
それから大樹に詳しい話を聞き、借金の事はもしかしたらどうにかなるかもしれないと、知り合いの弁護士に相談することにした。
(とりあえず、俺しばらくここにおるから… またなんか動きあったら連絡するわ)
「おぅ…何か悪いな…」
(ええて、あっ…!葵くん出てきたっ!ほなまた連絡するわ!)
「えっ、あ…おぅ…頼むわ!」
電話が切れた途端力が抜け、はぁーっと深いため息をついてベットに沈んだ…
友達との間に…ねぇ…
そういやあいつから友達の話なんて聞いたことねぇな。
俺はあいつの友達にさえ、なれてなかったのかなぁ?
葵…俺じゃダメか?
葵は俺の前から姿を消した。
戻らなくなってから一週間ほどが経っていたが、葵の足取りは未だに掴めなかった。
大樹に聞いてバイト先にも行ってはみたものの、やはり数日前から無断で休んでるらしく、こんな事は初めてだからと店長さんも心配していた。
俺が手離したくない一心で無理やり抱いた事で、余計に葵を傷つけてしまったのか…
もしくは、もうこんな訳の分からない症状を抱える俺に嫌気がさしたのか…
どちらにしても俺は嫌われちゃったんだ…と思い、ため息をついて一行も進まないまっさらなパソコン画面を閉じて項垂れた。
シーンと静まり返ったリビングを見渡せば二人で過ごしてきた日々が蘇る…
決して長い時間ではなかったけど、俺には特別な時間だったんだなぁと、改めて葵の存在の大きさにに気付かされる。
「どこ行っちゃったんだよ…葵…」
静まり返った部屋に、自分の声だけが響きまたため息をつく。
すると突然携帯が震えだし、画面を確認すれば大樹からの着信。
どうせ原稿の催促だろうと仕方なく重い体を起こし、渋々電話に出た。
「あー大樹…?まだなんも…」
(はぁっ、わかったんよ!居場所っ!)
「あ?居場所…?」
(葵くんのやっ!)
「えっ!?葵!?」
(おん、せやけど…)
「どこっ!?どこにいたんだよっ」
(いやっ、それが…)
大樹が濁した言葉を遮るように食い気味に言葉を被せれば、実に歯切れの悪い返事が返ってきて急に不安に襲われる…
「んだよ…」
(ショック受けんどいてな…)
「どういう事だよ…おい…まさか…!?」
(あ、いや、ちゃうねん…!場所がな…)
「場所…?」
(おん…歓楽街やねん)
「歓楽街…?別にそれがなんだよ…」
確かカフェのバイトもそこら辺じゃなかったか?
かけ持ちするなら近場でもおかしくないだろ…
大樹は少し間を置いてボソッと呟くように答えた。
(…風俗)
「ふぅ…ってその…」
(おん、男が体売るやつや…)
あぁ…そうか…
ショックと言うより合点がいった。
何より即金を稼ぐには手っ取り早いし、夕方バイトが終わった後遅くなるのも、初めてじゃないであろうあの感覚も全てはこのせいか…
一人納得している間、無言の俺に大樹から心配そうに声をかけられると、はっとして我に返る。
(紫雨さん?大丈夫?)
「あ…うん、平気。色々納得いったわ…そんで
大樹は?今どこにいんの?」
(おん、その店の前や)
「マジかっ!あ…いや、けどまず葵の気持ちが知りたい…もう嫌われちゃったんなら諦めた方がいいんだろうけど…」
(それはないと思うで?責任感じてんとちゃう?)
「うん…」
(あ、あとな?借金の事なんやけど…)
「なんか分かったの?」
(おん、昔…友達との間に色々あったのが発端らしい…)
「友達…?」
(おん…詳しいことは分からんのやけど…)
それから大樹に詳しい話を聞き、借金の事はもしかしたらどうにかなるかもしれないと、知り合いの弁護士に相談することにした。
(とりあえず、俺しばらくここにおるから… またなんか動きあったら連絡するわ)
「おぅ…何か悪いな…」
(ええて、あっ…!葵くん出てきたっ!ほなまた連絡するわ!)
「えっ、あ…おぅ…頼むわ!」
電話が切れた途端力が抜け、はぁーっと深いため息をついてベットに沈んだ…
友達との間に…ねぇ…
そういやあいつから友達の話なんて聞いたことねぇな。
俺はあいつの友達にさえ、なれてなかったのかなぁ?
葵…俺じゃダメか?
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