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陽介の片想い
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ポカポカと暖かい日差しが降り注ぐ放課後。
5時間目をすっぽかした将吾が、やっと目を覚ました。
「んぅ…はぁ~…よく寝た」
「ほんとよく寝るな…」
「だって眠いんだもん」
目を擦りながら寝ぼけ眼で実に可愛い…
そんなほわほわの将吾は、見てるだけで癒されるんだけど、最近は本当に見てるだけで、俺に甘えてくることが少なくなってしまった。
そんな将吾は今日もごねること無く、ベットから出てきて帰り支度を始める。
「あれ?もう帰るの?」
「うん…帰る」
「へぇ…」
呆気ないその答えに、急に寂しさを感じて少しだけいじわるしてやろうと、たまにはこっちから煽ってみることにした。
「おねだりは?しないの?」
「…っ、しない…///」
「あれ?もしかして隼人と上手くいってんの?」
「っ、るせぇなっ!いちいち聞くなよっ///」
「相談に乗ってやったんだから教えてよぉ」
「やだっ////」
顔を真っ赤にして照れてるって事は、そういう事なのか…
なんやかんや、きっとあれから隼人とは仲直りしたんだろう。
どうなったのかは頑なに教えてはくれないけど、問題が大きくならなかったなら一安心でほっと胸をなでおろす。
だけどその問題とは別に、俺の心情は複雑だ。
上履きの踵を踏んずけて、サンダルみたいにペタペタと擦りながら保健室を出る将吾を見送ると、俺を求めてくんなくなったのが少し残念で落ち込む…
生徒に個人的な感情は禁物!
分かってはいるんだけどね…
なんて感傷に浸っていると、すぐ入れ違いでちょっと不貞腐れ気味の長身の男の子が、お菓子を持ったまま入るのを躊躇してるのが目に入る。
「おぅ…入れよ」
「…また将吾?」
「またって?今日は寝てただけだぞ?」
「今日はって、何だよ…」
「んもぉ…いいじゃん別にぃ」
余計に不貞腐れて視線を逸らす彼は、将吾と同じ3年でバスケ部の陽介。
陽介も俺がここに来たばっかりの頃からの常連で、どうやら俺の事がお気に入りらしい…
「良くないんだけど…先生さ、俺の事どう思ってんの?」
「前にも言ったろ?可愛い生徒だよ…それ以上でも以下でもねぇよ」
「将吾は違うくせに…」
ぼそっと呟かれた言葉にちょっとビックリして、思わず口元に運んだコーヒーを吹き出しそうになる。
「ぶっ...えっ?」
「とぼけんなよ…」
「やっ…みんな平等だぞ?」
「ムカつく…」
「んで?今日のご用事は?」
「お菓子食べに来ただけだもん…」
「そお?じゃあコーヒーでも飲む??」
「うん…ミルク入りね」
俺は言われた通りミルク入りのコーヒーを持ってきて椅子に座り、陽介はデスクにお菓子広げ丸椅子に座り、嬉しそうに口に頬張った。
2年の時、陽介は俺より小さくて可愛かったのに、3年になってから急に背が伸びていつの間にか抜かされておっきくなっちゃって、お菓子を食べる姿も何だか似合わなくなってきた…
だけど食べてる時に漏れ出てしまう笑みは、やっぱりまだ子供っぽくて可愛い。
「なぁ、これうんまい♡」
「どれどれ、あーん…んっ!うまいっ!」
「だろ??」
満足気に目じりを下げて、ニコニコ笑う陽介の口元に付いたチョコレートを指で拭いぺろりと舐めると、その俺の手を掴み指を引き抜いて、自分の口元に持っていきぺろりと舐め返される。
「おい…そういうのやめろよ」
「なんで?そっちが先にやったんじゃん…」
「誰か入ってきたらどうすんの?」
「じゃあ鍵閉めてくる…」
「お菓子食べに来ただけじゃなかったのかよ…」
「やっぱ先生も食べる…」
陽介はすくっと立ち上がり、廊下に出ると外出中の看板を立てかけ鍵を閉めて戻ってきた。
5時間目をすっぽかした将吾が、やっと目を覚ました。
「んぅ…はぁ~…よく寝た」
「ほんとよく寝るな…」
「だって眠いんだもん」
目を擦りながら寝ぼけ眼で実に可愛い…
そんなほわほわの将吾は、見てるだけで癒されるんだけど、最近は本当に見てるだけで、俺に甘えてくることが少なくなってしまった。
そんな将吾は今日もごねること無く、ベットから出てきて帰り支度を始める。
「あれ?もう帰るの?」
「うん…帰る」
「へぇ…」
呆気ないその答えに、急に寂しさを感じて少しだけいじわるしてやろうと、たまにはこっちから煽ってみることにした。
「おねだりは?しないの?」
「…っ、しない…///」
「あれ?もしかして隼人と上手くいってんの?」
「っ、るせぇなっ!いちいち聞くなよっ///」
「相談に乗ってやったんだから教えてよぉ」
「やだっ////」
顔を真っ赤にして照れてるって事は、そういう事なのか…
なんやかんや、きっとあれから隼人とは仲直りしたんだろう。
どうなったのかは頑なに教えてはくれないけど、問題が大きくならなかったなら一安心でほっと胸をなでおろす。
だけどその問題とは別に、俺の心情は複雑だ。
上履きの踵を踏んずけて、サンダルみたいにペタペタと擦りながら保健室を出る将吾を見送ると、俺を求めてくんなくなったのが少し残念で落ち込む…
生徒に個人的な感情は禁物!
分かってはいるんだけどね…
なんて感傷に浸っていると、すぐ入れ違いでちょっと不貞腐れ気味の長身の男の子が、お菓子を持ったまま入るのを躊躇してるのが目に入る。
「おぅ…入れよ」
「…また将吾?」
「またって?今日は寝てただけだぞ?」
「今日はって、何だよ…」
「んもぉ…いいじゃん別にぃ」
余計に不貞腐れて視線を逸らす彼は、将吾と同じ3年でバスケ部の陽介。
陽介も俺がここに来たばっかりの頃からの常連で、どうやら俺の事がお気に入りらしい…
「良くないんだけど…先生さ、俺の事どう思ってんの?」
「前にも言ったろ?可愛い生徒だよ…それ以上でも以下でもねぇよ」
「将吾は違うくせに…」
ぼそっと呟かれた言葉にちょっとビックリして、思わず口元に運んだコーヒーを吹き出しそうになる。
「ぶっ...えっ?」
「とぼけんなよ…」
「やっ…みんな平等だぞ?」
「ムカつく…」
「んで?今日のご用事は?」
「お菓子食べに来ただけだもん…」
「そお?じゃあコーヒーでも飲む??」
「うん…ミルク入りね」
俺は言われた通りミルク入りのコーヒーを持ってきて椅子に座り、陽介はデスクにお菓子広げ丸椅子に座り、嬉しそうに口に頬張った。
2年の時、陽介は俺より小さくて可愛かったのに、3年になってから急に背が伸びていつの間にか抜かされておっきくなっちゃって、お菓子を食べる姿も何だか似合わなくなってきた…
だけど食べてる時に漏れ出てしまう笑みは、やっぱりまだ子供っぽくて可愛い。
「なぁ、これうんまい♡」
「どれどれ、あーん…んっ!うまいっ!」
「だろ??」
満足気に目じりを下げて、ニコニコ笑う陽介の口元に付いたチョコレートを指で拭いぺろりと舐めると、その俺の手を掴み指を引き抜いて、自分の口元に持っていきぺろりと舐め返される。
「おい…そういうのやめろよ」
「なんで?そっちが先にやったんじゃん…」
「誰か入ってきたらどうすんの?」
「じゃあ鍵閉めてくる…」
「お菓子食べに来ただけじゃなかったのかよ…」
「やっぱ先生も食べる…」
陽介はすくっと立ち上がり、廊下に出ると外出中の看板を立てかけ鍵を閉めて戻ってきた。
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