放課後の保健室でKissして?

むらさきおいも

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雨上がりの憂鬱

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やっと夏休みも終わり、まだ夏の暑さが残る放課後。

さっきまでの天気が嘘のように外が暗くなり始め、大粒の雨がバタバタと降り始めた。

帰る生徒たちのカラフルな傘がパッと開いていくのを眺めながら、何となく散らかった机の上を片付けて、シャツのボタンを一つ外しコーヒーを入れ始めた。

今日は早めに帰るか…と、ほっと一息ついた頃、保健室の扉が開いた。


「加野っち…」

「うわっ、なんだよその格好!ビッチョビチョじゃんっ!」

「帰ろうと思ったら急に降ってきたから…」

「傘持ってなかったの?」

「うん…置き傘取りに戻ったら俺のなかった」

「ありゃ…持ってかれたな…」


頭の上からズボンの先までズブ濡れの将吾を、保健室にあった大きめのタオルで拭いてやると、冷房のかかった室内が寒かったのか、少し震えて小さくくしゃみをした。


「あぁ、そのままだと風邪引くから、全部脱げ」

「え…全部…?」

「だって全部濡れてんだろ?」

「加野っち...」

「なんだよ…別に何もしねぇよ。変態を見るような目で見るな…」


冷房を弱めて素っ裸の将吾を新しいタオルで包み、濡れた服をハンガーにかけていると次第に空が明るくなってきた。


「通り雨だなこりゃ…外に干しとけばその内乾くだろ」

「ベット入っていい?」

「あぁ、そうだな。服乾くまで寝てろ」

「うん」


ぺたぺたとベットまで歩き、カーテンを開けベットに潜り込む将吾を見届け、コーヒーを一口飲みながら、ふぅ…と息を吐き、先に帰りの支度をしておこうと、今日一日の締めの仕事をし始める。

どれくらい時間が経っただろうか…
まだまだ明るい外に目を向ければ、もうすっかり夏の日差しが戻り暑くて部屋の冷房の温度を下げた。

ふと将吾が気になって覗いてみれば、暑かったのか布団を剥いでおしり丸出しのまますやすや眠っていた。


「ふっ…目に毒なんですけどぉ…」


ボソッと呟きながら布団をかけ直してやり、髪を撫でながらほんのり赤いほっぺにキスをすると、モゴモゴと口を動かしながら少しずつ目を開けた。


「んぅ…加野っち…?」

「わりぃ…起こしちゃったか…」

「いま…なんじぃ?」

「ん?4時半くらい?」

「…服…乾いたかな?」

「まぁまぁ乾いたんじゃね?もう帰る?」

「ん…もうちょいいる」

「そ?じゃあ俺、残りの仕事終わらせてくるわ」


残りの仕事なんて大した物は無いのだけれど、このまま傍にいたらよからぬ事を考えそうで、布団をかけ直し将吾の元を離れた。


「待って…」

「ん?」

「仕事…すぐ終わる?」

「あぁ、うん…別に対した仕事じゃねぇし…どうした?」

「ううん…別に…」


素直じゃない将吾は、布団から目だけ出して俺をじーっと見つめ、俺から何か言うのを待ってる。

それを分かってて俺からは決して何も言わないのは、焦らせば焦らすほどに可愛い将吾が見れるから…


「あそ?じゃあ戻っていい?」

「…っ」


目を細めて不貞腐れながら睨んでくるなんてもう限界か?
あまり焦らすと今度はへそ曲げて怒っちゃうから、そろそろ助け舟を出してやるか。


「素直じゃねぇな…」

「わかってんなら聞くなよ…」

「言って欲しい時もあんのぉ」

「…来てよ」

「どこに?」

「…っ、こっちにっ」

「いいよ…で?何して欲しいの?」


ベットに座りスベスベの頬に触れながら、将吾からの言葉を待つ…

結局はよからぬ事を制御出来ない俺は、本当に先生失格だよな。


「…ちゅうして」

「ちゅうだけでいいの?」


目をうるませながら小さく首を横に振り、布団を掴んでいた両手を俺にのばし抱きついてくるから、もういよいよニヤケが止まらない。


「抱きしめて…」


耳元で絞り出すようにそう呟かれれば、答えないわけにはいかない。

待ってましたとばかりに、俺は将吾を布団ごとギューッと抱きしめた。


「よく出来ました…」
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