放課後の保健室でKissして?

むらさきおいも

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最終話 卒業

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あれから1週間が経ち、卒業式当日。

みんなが思い出に浸り涙している中、俺は他人事のようにただただ式が終わるのをぼぅっと眺めていた。

式が終わり、あちらこちらで写真撮影が行われる中、一人あの場所に戻りいるはずのない人を想いながらいつもの扉を開ける。

お腹が痛くて初めてここに来てから、ほぼ毎日通い続けたこの部屋で、俺は一人想い出に浸っていた。

あの日、ここで見た加野っちの涙…

優しい顔で俺を突き放すように言い放った言葉で、もう二度と会えないんだと確信した。

あの後、隼人に相田先生から聞いたっていう加野っちの過去の話をチラッと聞かされたが、到底納得できる訳もなく、加野っちの苦しみを理解することは難しくて、殆ど覚えちゃいない。

だから、もしかしたら卒業した俺を迎えに来てくれるんじゃないかって…

どっかでそう思って少し期待してたんだ。

だけど結局、加野っちは来なかった。
俺は完全に捨てられたんだ。

恨みこそないけれど俺じゃダメだったんだって事は確かで、その受け入れ難い現実は俺を苦しめてる。

だから俺は、あいつの事を嫌いになろうと思ったんだ。

さんざん俺を弄んで、自分の都合で俺を捨てた奴…

俺はあいつが嫌いなんだ。

そう思いながらも、込み上げてくる感情に苛立ちさえ覚える。

それでもやっぱりあいつがいつもいたデスクに触れれば、思い出すのはあいつの優しい笑顔…

はぁ…と大きく溜息をつき窓の外の景色を眺めていると、ガラガラと保健室の扉が開く音に俺は思わず振り返った。


「将吾…?やっぱりここにいた」

「…っ!隼人…」

「アイツは来ないよ」

「わかってる…」

「そんなにアイツが好き?」

「は?あんなやつ好きじゃねぇし…っ」


優しくて、カッコよくて、ずるくて弱くて俺が大好きだったあいつの事なんか大っ嫌いだ。

そう、大っ嫌いなんだ!


「俺、アイツにお前の事頼まれたんだ」

「何それ…余計なお世話なんだけど…」

「ふはっ、だよな…」


屈託のない笑顔で笑ういつもと変わらない隼人に、俺の気持ちも少しだけ癒される。

退院してきて間もない隼人の体はもうすっかり元通りだが、俺はあの時の事故の事を思い出すと隼人に対する申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

ただ、本当に無事で良かった。
隼人までいなくなってたら、俺…


「俺ね、お前との事最初にアイツに相談した時思ったんだ…こいつには敵わない、本気で将吾事好きなんだなって…」

「は?そんな奴が俺の事置いていくかよ…っ」

「アイツなりの愛情だったんだろ?」

「そんなの全然嬉しくねぇよ」

「だよな…けど今なら何となくわかるよ。俺じゃ将吾を幸せに出来ないってさ。俺も思ったんだ…だからアイツもアイツなりに将吾の事想って…」

「なんだよそれ…それこそ余計なお世話だよ!お前らで勝手に俺の幸せの価値決めつけんな」

「…っ、ごめん…」


幸せってなんだよ…
俺はあいつと一緒にいれるだけで、それだけで良かったのに。

いなくなっちまったら意味ねぇじゃん。
隼人までそんなこと言うのかよ…

加野っちのことを忘れられないのに、それでもそばに居てくれる隼人の事は好きだ…

けど結局、みんな俺の事を置いてどっかに行ってしまうんだ。

パパもママも…加野っちも…
隼人だってきっと…

俺の事を本当に必要としてくれる人なんて…
いない―――


「そろそろ行こ?」

「…うん」


この先俺は一人で生きていく力をつけなきゃいけないって、本気でそう思った。

誰にも頼らないで。
誰も好きになんかならないで。

この保健室とも、子供じみた自分とももうお別れだな…

隼人が先に出て行くと、俺は少し想い出の余韻に浸りながらこの場所を後にした。


「じゃあな…」


今までの俺…
そして、大好きな先生…

また、いつかどこかで会えたなら―――
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